翌朝、食堂でいつもの様にボ~ッと食事をしていると、グレコ率いる何人かの隊員達が私の目の前に立ち塞がった。
「団長さんよ~。異動だって?」
「ん~? 耳が早いね~」
どかっと座ったグレコがちょっとお怒りモードだ。
「耳が早いね~じゃねぇ! おい、起きろ! ここまでしといて第七を見捨てるのかよ!」
「そんなつもりはない」
「じゃぁ、どう言う了見だ!」
ふ~。しょうがないじゃん、上の意向は私にはどうする事も出来ない。
「私は命じられた通りにするだけだよ。それに今度の団長はいい人だし、安心していいよ」
「けっ、そんなの信じられるか! また元に戻ったらどうするんだ!」
「それはない。今度の団長は、私が前いた第二の元副団長でね、仕事がめっちゃ出来る人だから。何なら、団長の代わりに事務処理や団を回してたのはあの人だし。仕事も部下に対しても公平な方だよ? ちょっとだけ細かいけど」
「… 本当か?」
「うん。大丈夫だって。今の体制も継続してくれると思うし。ちゃんとみんなの事は頼んであげるから」
「まぁ、それなら… 団長はいいのか? 第七の事。結構好きだろう?」
「それね… 本当は異動はしたくないけど。しょうがないじゃん。騎士団に属した以上… ね?」
「だ、団長~!」
「俺も一緒に行きてぇ」
「寂しくなるなぁ」
「そうか。いつまで居るんだ?」
「今月半ばかな。二月に着任だけど引き継ぎとかあるから。は~、最後にみんなと飲みたいね~」
「おっ! いいなそれ! 俺が段取りしてやる!」
「あはは、大袈裟にしないでよ。でも、頼んじゃおうかな」
「よし、任せとけ」
隊員達は晴れやかな顔でやいやい言いながら向こうへ行く。私達の会話を聞いていた隊員達も顔を見合わせて、何か言っている。
この分だと、当分色々文句言われるんだろうな。ふ~。
「おはよう」
と、団長室に入ると側近全員が揃っていた。ドーンが集めたのかな?
「みなさんお揃いで… 異動の事かな?」
ドーンを見ると頷いている。
「では、もう耳にしている人も居るかと思いますが、私とドーンは二月より第三へ異動になりました。アレク、クルス、トリスは第四へ行きます。一気に上層部が変わりますが、次に来る団長は優秀な方で人格も良い方です。心配しないで下さい」
「ほい、団長」
「はい、リックマイヤーさん」
「って事なら、俺もいいか?」
「ん?」
「退団するよ」
!!!
「は? 辞めちゃうの? 何で?」
「そろそろ潮時だ。俺の最後の団長はあんたにしたいんだ」
「リックマイヤーさん… そんなに私の事好きなの?」
「ばか。ま~それなりだ」
リックマイヤーさん。いいお爺ちゃん! 泣ける!
「ドーン、この件受理されそう?」
「隊員の進退は団長が決めますので… 団長次第です」
「そう… わかったわ。残念ね… 気が変わったらいつでも言ってね。後二週間はこっちに居るし」
「へーへー」
「あ、あのぅ。団長」
「コリーナ、どうしたの?」
「私は平隊員に戻るのでしょうか?」
「それはないと思うけど… 次の団長にはみんなの事は据え置いてもらうように言うつもりだし。心配しないで大丈夫よ」
「はい。ありがとうございます。それと団長、寂しくなります」
「ありがとう、コリーナ」
「私も。寂しいです。後数日ですがリクエストのデザートをたくさん作りますので、何でも仰って下さい!」
「やったね。ありがとうテッセン」
それから二週間は掃除したり、夜は誰かと毎日飲んでいた。
常に飲み会に出席する隊員達とは本当に仲が良くなった。特にグレコとか、体術大好きの新人くん、苦労騎士のカイト、お爺ちゃん先生達、厨房のゴリさんやロザーナさん、汚部屋の女性騎士、小柄なヨハンナとミッチェル。そう、この二人やっぱり付き合ってるんだって。いいな~。
名残惜しい。こんな直近で、急接近した隊員達が愛おしい。
「ドーン、こんなに胸が苦しくなるなんて… 第七に来てよかったね」
「そうですな。でも、これは団長だからですよ?」
「うれしい事言ってくれるわね~。ドーンもほら、飲んで」
今日は最終日だ。明日は第七の引き継ぎをして、その夜には第三へ向かう。
「みんな~大好きだよ~! たまには息抜きに帰ってくるから! 行ってくるね~!」
「おう!」
「行ってらっしゃ~い」
「第三の女性騎士紹介して下さいね」
「がんばれよ!」
グレコがそっと横に座る。
「団長さんよ。これ、みんなから」
グレコは小さな宝石がついた組紐を渡して来た。
黄色の丸い宝石に黒とシルバーの組紐。先っちょにはシルバーで出来た城門のオーナメント。
「みんなで出し合って買ったんだ。団長って、十手の先に飾りを着けてるだろ? それだ」
「み、みんな」
じ~んと来る。涙が出るよね。私は泣き笑いながら早速飾りを付け替えた。
「キレイ。すごくうれしい。ありがとうみんな! 後生大事にするわ!」
「おう。俺達第七の事忘れないでくれよ。ちゃ~んと、城門を付けといたからな。ははは」
「やだ~! グレコのくせに! 泣いてんじゃないわよ! わ~ん」
「おい、言うなよ。団長もだろ!」
「だって~。わ~」
その後は、何度も何度も乾杯をして、泣いて笑ってみんなで思いっきり騒いだ。
次の日、コリーナが隊員達の間を行ったり来たりして、二日酔いの薬を配って回った。
すまん。コリーナ。最後の最後で大仕事をさせてしまった。
「団長さんよ~。異動だって?」
「ん~? 耳が早いね~」
どかっと座ったグレコがちょっとお怒りモードだ。
「耳が早いね~じゃねぇ! おい、起きろ! ここまでしといて第七を見捨てるのかよ!」
「そんなつもりはない」
「じゃぁ、どう言う了見だ!」
ふ~。しょうがないじゃん、上の意向は私にはどうする事も出来ない。
「私は命じられた通りにするだけだよ。それに今度の団長はいい人だし、安心していいよ」
「けっ、そんなの信じられるか! また元に戻ったらどうするんだ!」
「それはない。今度の団長は、私が前いた第二の元副団長でね、仕事がめっちゃ出来る人だから。何なら、団長の代わりに事務処理や団を回してたのはあの人だし。仕事も部下に対しても公平な方だよ? ちょっとだけ細かいけど」
「… 本当か?」
「うん。大丈夫だって。今の体制も継続してくれると思うし。ちゃんとみんなの事は頼んであげるから」
「まぁ、それなら… 団長はいいのか? 第七の事。結構好きだろう?」
「それね… 本当は異動はしたくないけど。しょうがないじゃん。騎士団に属した以上… ね?」
「だ、団長~!」
「俺も一緒に行きてぇ」
「寂しくなるなぁ」
「そうか。いつまで居るんだ?」
「今月半ばかな。二月に着任だけど引き継ぎとかあるから。は~、最後にみんなと飲みたいね~」
「おっ! いいなそれ! 俺が段取りしてやる!」
「あはは、大袈裟にしないでよ。でも、頼んじゃおうかな」
「よし、任せとけ」
隊員達は晴れやかな顔でやいやい言いながら向こうへ行く。私達の会話を聞いていた隊員達も顔を見合わせて、何か言っている。
この分だと、当分色々文句言われるんだろうな。ふ~。
「おはよう」
と、団長室に入ると側近全員が揃っていた。ドーンが集めたのかな?
「みなさんお揃いで… 異動の事かな?」
ドーンを見ると頷いている。
「では、もう耳にしている人も居るかと思いますが、私とドーンは二月より第三へ異動になりました。アレク、クルス、トリスは第四へ行きます。一気に上層部が変わりますが、次に来る団長は優秀な方で人格も良い方です。心配しないで下さい」
「ほい、団長」
「はい、リックマイヤーさん」
「って事なら、俺もいいか?」
「ん?」
「退団するよ」
!!!
「は? 辞めちゃうの? 何で?」
「そろそろ潮時だ。俺の最後の団長はあんたにしたいんだ」
「リックマイヤーさん… そんなに私の事好きなの?」
「ばか。ま~それなりだ」
リックマイヤーさん。いいお爺ちゃん! 泣ける!
「ドーン、この件受理されそう?」
「隊員の進退は団長が決めますので… 団長次第です」
「そう… わかったわ。残念ね… 気が変わったらいつでも言ってね。後二週間はこっちに居るし」
「へーへー」
「あ、あのぅ。団長」
「コリーナ、どうしたの?」
「私は平隊員に戻るのでしょうか?」
「それはないと思うけど… 次の団長にはみんなの事は据え置いてもらうように言うつもりだし。心配しないで大丈夫よ」
「はい。ありがとうございます。それと団長、寂しくなります」
「ありがとう、コリーナ」
「私も。寂しいです。後数日ですがリクエストのデザートをたくさん作りますので、何でも仰って下さい!」
「やったね。ありがとうテッセン」
それから二週間は掃除したり、夜は誰かと毎日飲んでいた。
常に飲み会に出席する隊員達とは本当に仲が良くなった。特にグレコとか、体術大好きの新人くん、苦労騎士のカイト、お爺ちゃん先生達、厨房のゴリさんやロザーナさん、汚部屋の女性騎士、小柄なヨハンナとミッチェル。そう、この二人やっぱり付き合ってるんだって。いいな~。
名残惜しい。こんな直近で、急接近した隊員達が愛おしい。
「ドーン、こんなに胸が苦しくなるなんて… 第七に来てよかったね」
「そうですな。でも、これは団長だからですよ?」
「うれしい事言ってくれるわね~。ドーンもほら、飲んで」
今日は最終日だ。明日は第七の引き継ぎをして、その夜には第三へ向かう。
「みんな~大好きだよ~! たまには息抜きに帰ってくるから! 行ってくるね~!」
「おう!」
「行ってらっしゃ~い」
「第三の女性騎士紹介して下さいね」
「がんばれよ!」
グレコがそっと横に座る。
「団長さんよ。これ、みんなから」
グレコは小さな宝石がついた組紐を渡して来た。
黄色の丸い宝石に黒とシルバーの組紐。先っちょにはシルバーで出来た城門のオーナメント。
「みんなで出し合って買ったんだ。団長って、十手の先に飾りを着けてるだろ? それだ」
「み、みんな」
じ~んと来る。涙が出るよね。私は泣き笑いながら早速飾りを付け替えた。
「キレイ。すごくうれしい。ありがとうみんな! 後生大事にするわ!」
「おう。俺達第七の事忘れないでくれよ。ちゃ~んと、城門を付けといたからな。ははは」
「やだ~! グレコのくせに! 泣いてんじゃないわよ! わ~ん」
「おい、言うなよ。団長もだろ!」
「だって~。わ~」
その後は、何度も何度も乾杯をして、泣いて笑ってみんなで思いっきり騒いだ。
次の日、コリーナが隊員達の間を行ったり来たりして、二日酔いの薬を配って回った。
すまん。コリーナ。最後の最後で大仕事をさせてしまった。