「みんな集まってくれてありがとう」
今日は側近達を集めて難民問題の計画を話す。
「非番の人もごめんね。ここにいる側近達だけでこの計画は実施しようと思ってるんだ」
「皆、この資料を一読しろ」
ドーンは計画書とまでもいかないが、一枚の紙を配る。
「では、説明します。難民問題はみなさん知ってますね? 今まで着手して来なかったんだけど、本来は第七の仕事なのでやろうと思います。で、西門にいる難民達はドーンと他数名で、早速東門まで移動させました」
「おう、団長。西門から追い出しただけで問題解決にはなってないだろう?」
リックマイヤーが紙をひらひらさせて呆れている。
「まだ続きがあるの、最後まで聞いて。質問はその後ね。それで、難民達に自活出来るように手助けをしようと思います。現在『難民対策予算』と言うモノがあったのですが、前団長等が予算を使ってしまったので、ほとんど残っていません。その残ったお金も難民達の治療でポーションを買ったのでありません。そこで、私達で出来る事で難民達を救済します」
一息置いて、続けて話す。
「まず、コリーナ、薬草の知識を難民達へ教えて欲しいの。森の入り口周辺、安全な場所で採取出来る薬草を中心にね。
アレク、クルス、トリスは護身術と言うか、基礎の剣術または体術を教えて下さい。子供と女性が中心だからその辺も考えてね。
テッセンは一日一回でいいから空いている時間に差し入れを作って下さい。料理が得意と言ってたよね? 食堂には話を通してあるので、スープとパンをお願いします。
最後、リックマイヤー、あなたは騎士達から古着を回収して下さい。それと、門番の甲冑や十手などを磨く仕事を割り振って下さい。足が弱い人や身体に欠損がある人が居るのよ。あとは、コリーナの手伝いで難民達が採取した薬草などをギルドへ売りに行って下さい。ここまでで質問は?」
「はい」
コリーナが手を挙げる。
「どうぞ」
「薬草の知識ってどうやって教えればいいですか? 難民ですよね? 字が読めない人がほとんどだと思うんですが?」
「それは工夫して。本物の薬草を実際見せるとか、特徴を絵に描くとか」
『絵かぁ…』と、コリーナはぶつぶつ考え出した。
「はい」
私はうんと頷いてトリスの話を聞く。
「団長ちゃん、女子供を鍛えたってどうしようもなくない?」
「それは違うわ。最低限の自衛方法を教えて欲しいの。これからは自分達で森へ行くの。安全な場所と言っても魔獣が全く居ないとも考えにくいし。それに、今後を考えるとナイフの使い方だけでも覚えるといいと思うの。あなた達は、普段の仕事が別にあるから、空いている時間でいいわ」
「おう」
「リックマイヤー、どうぞ」
「それじゃぁ、俺達もその仕事を時間外でやるのか?」
「いえ、リックマイヤーとコリーナは見張りも兼ねてもらうから。お金を稼ぎ出した時、難民同士でいざこざが起きないように。午後の時間をそれに割いて欲しいの」
「あと一ついいか?」
「ええ」
「騎士から古着? 難民達に分け与えるのか? 貧乏騎士や平民は着古すから集めてもボロボロだぞ? それに俺はギルドと交渉役と武器の磨く指導かぁ。それだけじゃ時間が余るんじゃないか?」
「そっか… 逆に数は少ないけどちょっと余裕のある家、上位騎士とかなら古着はあるんじゃない? 変に集める範囲を絞ると問題が出てくるから、食堂に貼り紙をしておいて。ただ単に『古着探してます』とか。それで集まらなければまた話し合いましょう。お願いね。あとは、リックマイヤーとコリーナには、難民達へ王都のルールや魔獣ギルドの事とか教えてあげて。外国人だから何も知らないと思うし。危ない場所とかおいしいお店とか、色々よ」
「で? その後は? いつまでも面倒は見れないだろ?」
「そうよ。難民達には自分で稼いでもらいます。まず通行料一万K、王都へ入った後魔獣ギルドへの登録料三千K、当分の生活費二万K、合計三万三千K。当面の生活費は本人の意思も考慮するわ。採取が得意ですぐに生活出来るのなら減らしてもいいし。でも、素泊まりの宿屋が一泊二千K必要なの。その辺りも計算しないと。残念ながら、歳を取りすぎて身寄りのない者や自活が難しい者は教会へ入れます。それは交渉中です」
クルスは納得出来ないようで詰め寄ってくる。
「本当にそこまで必要か?」
「必要よ。王都に入っても自活出来なきゃ浮浪者になってしまう。スラムに人が増えてしまってはこの問題解決にはならない。じゃぁ、一時的に教会へ入れる? それもダメよ。私も初めて知ったんだけど、教会の孤児院は十歳以上は入信料を取るそうなの。元から居る子供も十歳を過ぎると追い出されるそうだし」
「しかし、団長よ~それこそスラム対策と孤児院担当の第二に押し付ければいいんじゃないか? 入った後は関係ないだろ?」
「そう言う事じゃ無いのよ。団は違ってもこの問題は繋がってるの。国が各騎士団に割り振っているだけで、国政としては根本は同じなのよ。スラムが膨れ上がるのは治安にも良くないわ。あなた達が思ってるように、王都内入れば管轄外よ。でも、スラムもこれ以上増えない様にする必要があると私は思うわ」
「わかった」
やっとみんなが了承してくれたので話を終える。
「当初は一ヶ月もあれば十分だと思っていたのだけど、年末までの二ヶ月間を期間と定めます。それで自活出来ない様なら諦めましょう。生きる意思のない者に時間を割いても無駄だから。真面目に取り組めば、難民達も今の現状を打破出来るはず。あなた達も手を抜かずにお願いね」
ドーンは早速リックマイヤーに話を通している。ご意見番に色々がんばってもらえれば、計画もスムーズに進むだろうしね。
さぁ、東門へみんなで移動するか。
「団長ちゃん、団長ちゃんは何するの?」
「私?」
「おい、今までもこれからも団長は尽力されている。その言種はなんだ?」
ドーンがトリスを嗜めた。最近、トリスに対してドーンは厳しいな。まぁ、色々やらかしてるから自業自得なんだけどね。でもこれはちょっとまずい空気だな。
「いや… えっと」
トリスもご機嫌斜めなドーンに引いてしまっている。
「トリス、私が指示だけ出して何もしてなさそうに見える? 影で色々やってるのよ。真の実力者は表で自慢しない! かっこいいでしょ? 影の支配者~団長ラモ~ン! なんてね、ははは」
「そ、そりゃそうだよなぁ。俺も悪かった、軽口叩いて」
「分かればよろしい」
コントのような寒いやり取りをしてやり過ごす。ドーンは? どう? 収まった?
「トリス、これからは改めろ。団長は気さくな感じだが上官なんだ。団長の温情の上に胡坐をかくな」
ドーンは静かなトーンでトドメを刺す。ご機嫌斜めだね~。あはは、楽しく行こうよ。
「申し訳ございませんでした~!」
鬼の形相で睨まれたトリス。敬礼しながら腹の底から出した声が第七に木霊した。
今日は側近達を集めて難民問題の計画を話す。
「非番の人もごめんね。ここにいる側近達だけでこの計画は実施しようと思ってるんだ」
「皆、この資料を一読しろ」
ドーンは計画書とまでもいかないが、一枚の紙を配る。
「では、説明します。難民問題はみなさん知ってますね? 今まで着手して来なかったんだけど、本来は第七の仕事なのでやろうと思います。で、西門にいる難民達はドーンと他数名で、早速東門まで移動させました」
「おう、団長。西門から追い出しただけで問題解決にはなってないだろう?」
リックマイヤーが紙をひらひらさせて呆れている。
「まだ続きがあるの、最後まで聞いて。質問はその後ね。それで、難民達に自活出来るように手助けをしようと思います。現在『難民対策予算』と言うモノがあったのですが、前団長等が予算を使ってしまったので、ほとんど残っていません。その残ったお金も難民達の治療でポーションを買ったのでありません。そこで、私達で出来る事で難民達を救済します」
一息置いて、続けて話す。
「まず、コリーナ、薬草の知識を難民達へ教えて欲しいの。森の入り口周辺、安全な場所で採取出来る薬草を中心にね。
アレク、クルス、トリスは護身術と言うか、基礎の剣術または体術を教えて下さい。子供と女性が中心だからその辺も考えてね。
テッセンは一日一回でいいから空いている時間に差し入れを作って下さい。料理が得意と言ってたよね? 食堂には話を通してあるので、スープとパンをお願いします。
最後、リックマイヤー、あなたは騎士達から古着を回収して下さい。それと、門番の甲冑や十手などを磨く仕事を割り振って下さい。足が弱い人や身体に欠損がある人が居るのよ。あとは、コリーナの手伝いで難民達が採取した薬草などをギルドへ売りに行って下さい。ここまでで質問は?」
「はい」
コリーナが手を挙げる。
「どうぞ」
「薬草の知識ってどうやって教えればいいですか? 難民ですよね? 字が読めない人がほとんどだと思うんですが?」
「それは工夫して。本物の薬草を実際見せるとか、特徴を絵に描くとか」
『絵かぁ…』と、コリーナはぶつぶつ考え出した。
「はい」
私はうんと頷いてトリスの話を聞く。
「団長ちゃん、女子供を鍛えたってどうしようもなくない?」
「それは違うわ。最低限の自衛方法を教えて欲しいの。これからは自分達で森へ行くの。安全な場所と言っても魔獣が全く居ないとも考えにくいし。それに、今後を考えるとナイフの使い方だけでも覚えるといいと思うの。あなた達は、普段の仕事が別にあるから、空いている時間でいいわ」
「おう」
「リックマイヤー、どうぞ」
「それじゃぁ、俺達もその仕事を時間外でやるのか?」
「いえ、リックマイヤーとコリーナは見張りも兼ねてもらうから。お金を稼ぎ出した時、難民同士でいざこざが起きないように。午後の時間をそれに割いて欲しいの」
「あと一ついいか?」
「ええ」
「騎士から古着? 難民達に分け与えるのか? 貧乏騎士や平民は着古すから集めてもボロボロだぞ? それに俺はギルドと交渉役と武器の磨く指導かぁ。それだけじゃ時間が余るんじゃないか?」
「そっか… 逆に数は少ないけどちょっと余裕のある家、上位騎士とかなら古着はあるんじゃない? 変に集める範囲を絞ると問題が出てくるから、食堂に貼り紙をしておいて。ただ単に『古着探してます』とか。それで集まらなければまた話し合いましょう。お願いね。あとは、リックマイヤーとコリーナには、難民達へ王都のルールや魔獣ギルドの事とか教えてあげて。外国人だから何も知らないと思うし。危ない場所とかおいしいお店とか、色々よ」
「で? その後は? いつまでも面倒は見れないだろ?」
「そうよ。難民達には自分で稼いでもらいます。まず通行料一万K、王都へ入った後魔獣ギルドへの登録料三千K、当分の生活費二万K、合計三万三千K。当面の生活費は本人の意思も考慮するわ。採取が得意ですぐに生活出来るのなら減らしてもいいし。でも、素泊まりの宿屋が一泊二千K必要なの。その辺りも計算しないと。残念ながら、歳を取りすぎて身寄りのない者や自活が難しい者は教会へ入れます。それは交渉中です」
クルスは納得出来ないようで詰め寄ってくる。
「本当にそこまで必要か?」
「必要よ。王都に入っても自活出来なきゃ浮浪者になってしまう。スラムに人が増えてしまってはこの問題解決にはならない。じゃぁ、一時的に教会へ入れる? それもダメよ。私も初めて知ったんだけど、教会の孤児院は十歳以上は入信料を取るそうなの。元から居る子供も十歳を過ぎると追い出されるそうだし」
「しかし、団長よ~それこそスラム対策と孤児院担当の第二に押し付ければいいんじゃないか? 入った後は関係ないだろ?」
「そう言う事じゃ無いのよ。団は違ってもこの問題は繋がってるの。国が各騎士団に割り振っているだけで、国政としては根本は同じなのよ。スラムが膨れ上がるのは治安にも良くないわ。あなた達が思ってるように、王都内入れば管轄外よ。でも、スラムもこれ以上増えない様にする必要があると私は思うわ」
「わかった」
やっとみんなが了承してくれたので話を終える。
「当初は一ヶ月もあれば十分だと思っていたのだけど、年末までの二ヶ月間を期間と定めます。それで自活出来ない様なら諦めましょう。生きる意思のない者に時間を割いても無駄だから。真面目に取り組めば、難民達も今の現状を打破出来るはず。あなた達も手を抜かずにお願いね」
ドーンは早速リックマイヤーに話を通している。ご意見番に色々がんばってもらえれば、計画もスムーズに進むだろうしね。
さぁ、東門へみんなで移動するか。
「団長ちゃん、団長ちゃんは何するの?」
「私?」
「おい、今までもこれからも団長は尽力されている。その言種はなんだ?」
ドーンがトリスを嗜めた。最近、トリスに対してドーンは厳しいな。まぁ、色々やらかしてるから自業自得なんだけどね。でもこれはちょっとまずい空気だな。
「いや… えっと」
トリスもご機嫌斜めなドーンに引いてしまっている。
「トリス、私が指示だけ出して何もしてなさそうに見える? 影で色々やってるのよ。真の実力者は表で自慢しない! かっこいいでしょ? 影の支配者~団長ラモ~ン! なんてね、ははは」
「そ、そりゃそうだよなぁ。俺も悪かった、軽口叩いて」
「分かればよろしい」
コントのような寒いやり取りをしてやり過ごす。ドーンは? どう? 収まった?
「トリス、これからは改めろ。団長は気さくな感じだが上官なんだ。団長の温情の上に胡坐をかくな」
ドーンは静かなトーンでトドメを刺す。ご機嫌斜めだね~。あはは、楽しく行こうよ。
「申し訳ございませんでした~!」
鬼の形相で睨まれたトリス。敬礼しながら腹の底から出した声が第七に木霊した。