「… 何から突っ込んでいいか分からないわ」
ユーグさんは頭を抱えてしまった。クリスタルさんもうつむいて苦笑いである。
「ラモン様、隠し武器? のお話は後程する事にして、まずはこの中から一つお選び下さいね?」
「は、はい。何かすみません」
少し恥ずかしくなった私は、三枚のデザイン画に食い付く。もうねぇ、それぐらいしか出来ないんだよ、誤魔化すには。
しばらくデザイン画とにらめっこしていると、男性がお茶の替えとお菓子を持って来た。
「あぁ。ユーグナー様、お菓子をご用意しましたの。それで、少しよろしいでしょうか? 紹介したい者がおります」
「ん? いいわよ」
ユーグさんは、デザイン画と葛藤している私を見ながら一息ついていた。
「この度、見習いを卒業して私の下に着く事になりました甥のトレバーです」
「へぇ、甥ねぇ。そう言えば後継者が居ないと嘆いていたわねぇ」
「えぇえぇ。お恥ずかしいですわ。ようやっと形になりまして… まだまだヒヨっ子には変わりはないのですが、そろそろ本格的に仕事を教えようかと思いまして。こうしてお得意様に紹介して回っておりますの。トレバー、挨拶を」
「お時間頂きありがとうございます。トレバーです。まだまだ未熟者ですがよろしくお願いしま…」
私は何か聞き覚えのある声だな~っと、何気なく顔を上げたタイミング、最後の『す』でトレバーと目が合った。
「あっ! あなた!」
私は驚きのあまりガバッと立ち上がってしまった。
「え?」
二人で見つめ合ってポッカ~ンだ。固まった二人は次の声が出ない。
「あら? お、お知り合いなのかしら?」
クリスタルさんは手に頬を当てて首を傾げる。ユーグさんもハテナになっている。
まずい、何か喋んないと…
「知り合いではございません。ただの知人の知人です」
「何その変な感じの繋がり… 正直に言いなさい」
「いや~。正直と言う程のモノでもないと言うか…」
私が言葉を濁していると、トレバーが先に言い訳を始める。しまった。
「叔母上。この方は知人の紹介で先日お茶をしまして… その、ご縁がなかったと言う事で私がお断りをしたんです。と言いますか、君はどうしてここに居るんだい? あぁ、そうか、ユーグナー様の護衛か? 確か騎士と言っていたな。こんな所まで僕を追って来るとは… 仕事をダシに使ってはいけないよ。本当に困った方だ」
「はぁぁぁぁぁぁ?」
『ふっ』とキザに微笑みながら首を横にフリフリするトレバー。こいつドツキたい! マジでドツキたい!
「え? トレバー、お客様の前よ? そんな言い方…」
「何々? どう言う事なのぉ?」
ユーグさんは半笑いだ。めっちゃ面白がっている。
てか、トレバー。いいよ~、そんな態度で丸めこようとするんだ。しかもそのシナリオ、ヤバいんだけど。護衛じゃないんだよ、私は。だからここでの発言権は自由なんだよ! よしよし、本当の事を言ってやろうじゃない!
「ははは。ユーグさん、私の思い違いでした。この方は、ほら、ユーグさん所のミゲル先輩のお友達で、確かにお茶はしましたが… 私には『トーイ』と名乗っていました。そしてこうも言っていましたね、『クリス商会の息子』だと。だから違う人ではないですか?」
「ふ~ん」
と、ユーグさんは思わぬ名前とあべこべな内容に、冷たい視線でトレバーを見た。
「で? もちろん続きがあるのよねぇ?」
「えぇ。私が『クリス商会』を知らないと言ったら田舎者だと揶揄されまして。おまけに女性騎士だと伝えたら、腰掛けだの男漁りだの、最後にはバカだから騎士になったんだろう? と言われてですね~」
チラッと、トレバーを見ると下を向き握り拳をプルプルしている。
「~あまりの言い草に私、キレてしまいまして、へへ。帰ろうとしたらさらに小突かれてしまって。流石にムカついたので頭から水をかけてやりました。その場に同席していた女友達も両肩を抑えられたので、投げ飛ばしていましたが。ふふ。しかし、それは『クリス商会のご子息のトーイ』と名乗る男性でしたよ?」
ふん。どうだい! なんか言い訳あるか?
最初、クリスタルさんは信じられないと言う風な顔で聞いていたが、今は般若が隠れた引き攣り笑顔になっている。
「へぇ~。クリスタル、あなたって息子が居たのね?」
「いえ。私には息子は断じて居りません」
「い、いえ。叔母上! 嘘です! 私が投げ飛ばされるなど… この女の言う事を信じるのですか?」
え? そこ?
「グッ… トレバー、いえトーイ。口を閉じなさい。命令よ」
グッと拳を握って歯を食いしばりながら私を睨むトレバー。
「クリスタル? 何か弁明は?」
ユーグさんは柔らかい雰囲気だったのが一転、冷たい殺気を薄~く静かにクリスタルとトレバーに送っている。ドーンとまた違った殺気だ。怖い。
「はい。弁明の余地はございません。ラモン様にはご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」
と、クリスタルは頭が床につきそうなくらいの礼をする。
「ユーグさん、私からいいですか?」
「いいわよ。でもわかっているわね? 騎士がバカにされたんだから」
「はい。クリスタルさん、顔を上げて下さい」
そう言っても、クリスタルさんは顔を上げない。
「トレバーと私の出来事は私達の問題です。しかも私もやり返してますしね。あの日の出来事はもう決着がついてます。私がムカついたのは平気で嘘を吐いたからです。しかも、この場で。ですので私も意地になってしまって… それに、クリスタルさんには今日偶然、ユーグさんの紹介で会ったんですし、この件もやはりトレバーの問題です」
「ちょっと、ラモン。おとがめ無しはダメよ」
ユーグさんはまだ怒っている。ユーグさんに睨まれたトレバーは下を向いている。
「それはそうです。てか、ユーグさんもすみません、私のせいで変な恥をかかせてしまって」
私はユーグさんに立ち上がって礼をする。
「いいわ… それで? 落とし所は?」
「まずはトレバー、謝って」
「な、なぜ私が…」
まだトレバーは納得がいかないのか、空気が読めないのか…
「はぁ、あなたプライドだけは高そうだもんね。嘘まで吐いて… めっちゃ態度デカかったし… そう言う事なら命令するわ」
トレバーは『はぁ?』と言う顔でやっとこっちを見た。
「私、王都第七騎士団団長ラモンが命ずる、トレバー、我々騎士を侮辱した事、更に話を偽証した事を今ここで謝罪しなさい」
「だ、団長!!!」
トレバーは、あまりの衝撃に、心臓が飛び出てしまったのかその場で気を失った。
「あっ、あれ? 嘘! ユーグさん、ど、どうしましょう?」
「いいわ。放って置きなさい。クリスタル、二度とソレの顔は見たくないわ」
「もちろんです、申し訳ございません。ラモン様、本当に重ねて申し訳ございませんでした。アレが居る以上、ご不快でしょうから、他のお店を紹介させて頂きます。もちろんそのお店でのドレスはプレゼントさせて下さい。お好きなモノを、せめてものお詫びでございます」
「いえいえいえ、そんな。せっかくユーグさんが考えてくれたドレスなんです。私はこのドレスを着たいですよ。もう気にしていませんので。トレバーさんには別途謝罪に来るように言付けて下さい。それで結構です」
「そんな… それでは私共の面目次第もございません」
パンパンとユーグさんが柏手を打つ。
「はいはい、このままじゃ平行線だわ。私が話を着けましょう。クリスタル、あなたは顧客の為に次代をあの甥にしない事、無料でラモンのドレスこの三点を全部作る事。私にもタキシードを一着作るように。それで手打ちよ。言っても、これはあなたの甥とラモンの問題だしね、これで十分でしょ」
「まぁ! ユーグナー様、寛大な沙汰にお礼申し上げます。ラモン様もありがとうございます」
クリスタルさんはようやく顔を上げ、この案で同意してくた。よかった。
てか、ドレス、しかも高級ドレスゲット~!
ユーグさんは頭を抱えてしまった。クリスタルさんもうつむいて苦笑いである。
「ラモン様、隠し武器? のお話は後程する事にして、まずはこの中から一つお選び下さいね?」
「は、はい。何かすみません」
少し恥ずかしくなった私は、三枚のデザイン画に食い付く。もうねぇ、それぐらいしか出来ないんだよ、誤魔化すには。
しばらくデザイン画とにらめっこしていると、男性がお茶の替えとお菓子を持って来た。
「あぁ。ユーグナー様、お菓子をご用意しましたの。それで、少しよろしいでしょうか? 紹介したい者がおります」
「ん? いいわよ」
ユーグさんは、デザイン画と葛藤している私を見ながら一息ついていた。
「この度、見習いを卒業して私の下に着く事になりました甥のトレバーです」
「へぇ、甥ねぇ。そう言えば後継者が居ないと嘆いていたわねぇ」
「えぇえぇ。お恥ずかしいですわ。ようやっと形になりまして… まだまだヒヨっ子には変わりはないのですが、そろそろ本格的に仕事を教えようかと思いまして。こうしてお得意様に紹介して回っておりますの。トレバー、挨拶を」
「お時間頂きありがとうございます。トレバーです。まだまだ未熟者ですがよろしくお願いしま…」
私は何か聞き覚えのある声だな~っと、何気なく顔を上げたタイミング、最後の『す』でトレバーと目が合った。
「あっ! あなた!」
私は驚きのあまりガバッと立ち上がってしまった。
「え?」
二人で見つめ合ってポッカ~ンだ。固まった二人は次の声が出ない。
「あら? お、お知り合いなのかしら?」
クリスタルさんは手に頬を当てて首を傾げる。ユーグさんもハテナになっている。
まずい、何か喋んないと…
「知り合いではございません。ただの知人の知人です」
「何その変な感じの繋がり… 正直に言いなさい」
「いや~。正直と言う程のモノでもないと言うか…」
私が言葉を濁していると、トレバーが先に言い訳を始める。しまった。
「叔母上。この方は知人の紹介で先日お茶をしまして… その、ご縁がなかったと言う事で私がお断りをしたんです。と言いますか、君はどうしてここに居るんだい? あぁ、そうか、ユーグナー様の護衛か? 確か騎士と言っていたな。こんな所まで僕を追って来るとは… 仕事をダシに使ってはいけないよ。本当に困った方だ」
「はぁぁぁぁぁぁ?」
『ふっ』とキザに微笑みながら首を横にフリフリするトレバー。こいつドツキたい! マジでドツキたい!
「え? トレバー、お客様の前よ? そんな言い方…」
「何々? どう言う事なのぉ?」
ユーグさんは半笑いだ。めっちゃ面白がっている。
てか、トレバー。いいよ~、そんな態度で丸めこようとするんだ。しかもそのシナリオ、ヤバいんだけど。護衛じゃないんだよ、私は。だからここでの発言権は自由なんだよ! よしよし、本当の事を言ってやろうじゃない!
「ははは。ユーグさん、私の思い違いでした。この方は、ほら、ユーグさん所のミゲル先輩のお友達で、確かにお茶はしましたが… 私には『トーイ』と名乗っていました。そしてこうも言っていましたね、『クリス商会の息子』だと。だから違う人ではないですか?」
「ふ~ん」
と、ユーグさんは思わぬ名前とあべこべな内容に、冷たい視線でトレバーを見た。
「で? もちろん続きがあるのよねぇ?」
「えぇ。私が『クリス商会』を知らないと言ったら田舎者だと揶揄されまして。おまけに女性騎士だと伝えたら、腰掛けだの男漁りだの、最後にはバカだから騎士になったんだろう? と言われてですね~」
チラッと、トレバーを見ると下を向き握り拳をプルプルしている。
「~あまりの言い草に私、キレてしまいまして、へへ。帰ろうとしたらさらに小突かれてしまって。流石にムカついたので頭から水をかけてやりました。その場に同席していた女友達も両肩を抑えられたので、投げ飛ばしていましたが。ふふ。しかし、それは『クリス商会のご子息のトーイ』と名乗る男性でしたよ?」
ふん。どうだい! なんか言い訳あるか?
最初、クリスタルさんは信じられないと言う風な顔で聞いていたが、今は般若が隠れた引き攣り笑顔になっている。
「へぇ~。クリスタル、あなたって息子が居たのね?」
「いえ。私には息子は断じて居りません」
「い、いえ。叔母上! 嘘です! 私が投げ飛ばされるなど… この女の言う事を信じるのですか?」
え? そこ?
「グッ… トレバー、いえトーイ。口を閉じなさい。命令よ」
グッと拳を握って歯を食いしばりながら私を睨むトレバー。
「クリスタル? 何か弁明は?」
ユーグさんは柔らかい雰囲気だったのが一転、冷たい殺気を薄~く静かにクリスタルとトレバーに送っている。ドーンとまた違った殺気だ。怖い。
「はい。弁明の余地はございません。ラモン様にはご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」
と、クリスタルは頭が床につきそうなくらいの礼をする。
「ユーグさん、私からいいですか?」
「いいわよ。でもわかっているわね? 騎士がバカにされたんだから」
「はい。クリスタルさん、顔を上げて下さい」
そう言っても、クリスタルさんは顔を上げない。
「トレバーと私の出来事は私達の問題です。しかも私もやり返してますしね。あの日の出来事はもう決着がついてます。私がムカついたのは平気で嘘を吐いたからです。しかも、この場で。ですので私も意地になってしまって… それに、クリスタルさんには今日偶然、ユーグさんの紹介で会ったんですし、この件もやはりトレバーの問題です」
「ちょっと、ラモン。おとがめ無しはダメよ」
ユーグさんはまだ怒っている。ユーグさんに睨まれたトレバーは下を向いている。
「それはそうです。てか、ユーグさんもすみません、私のせいで変な恥をかかせてしまって」
私はユーグさんに立ち上がって礼をする。
「いいわ… それで? 落とし所は?」
「まずはトレバー、謝って」
「な、なぜ私が…」
まだトレバーは納得がいかないのか、空気が読めないのか…
「はぁ、あなたプライドだけは高そうだもんね。嘘まで吐いて… めっちゃ態度デカかったし… そう言う事なら命令するわ」
トレバーは『はぁ?』と言う顔でやっとこっちを見た。
「私、王都第七騎士団団長ラモンが命ずる、トレバー、我々騎士を侮辱した事、更に話を偽証した事を今ここで謝罪しなさい」
「だ、団長!!!」
トレバーは、あまりの衝撃に、心臓が飛び出てしまったのかその場で気を失った。
「あっ、あれ? 嘘! ユーグさん、ど、どうしましょう?」
「いいわ。放って置きなさい。クリスタル、二度とソレの顔は見たくないわ」
「もちろんです、申し訳ございません。ラモン様、本当に重ねて申し訳ございませんでした。アレが居る以上、ご不快でしょうから、他のお店を紹介させて頂きます。もちろんそのお店でのドレスはプレゼントさせて下さい。お好きなモノを、せめてものお詫びでございます」
「いえいえいえ、そんな。せっかくユーグさんが考えてくれたドレスなんです。私はこのドレスを着たいですよ。もう気にしていませんので。トレバーさんには別途謝罪に来るように言付けて下さい。それで結構です」
「そんな… それでは私共の面目次第もございません」
パンパンとユーグさんが柏手を打つ。
「はいはい、このままじゃ平行線だわ。私が話を着けましょう。クリスタル、あなたは顧客の為に次代をあの甥にしない事、無料でラモンのドレスこの三点を全部作る事。私にもタキシードを一着作るように。それで手打ちよ。言っても、これはあなたの甥とラモンの問題だしね、これで十分でしょ」
「まぁ! ユーグナー様、寛大な沙汰にお礼申し上げます。ラモン様もありがとうございます」
クリスタルさんはようやく顔を上げ、この案で同意してくた。よかった。
てか、ドレス、しかも高級ドレスゲット~!