朝から食堂でチラチラとなぜか視線を感じる。
いつも気さくな感じの隊員達が、コソコソ話をしては遠巻きに私を見ている。
ん?
バっと、身なりを素早く見直すが特に汚れている訳でもない。何だろう?
「おはよ~。団長さん、昨日は残念だったね~」
新しい料理人の一人のロザーナさんがサンドイッチを渡しながら慰めて? くれた。
「え? 何の事?」
「まぁ、まぁ、若い内は色々な経験をすればいいよ。はい、次の人~」
はぁぁぁ??? ますます分からん。
ハテナな感じで食堂の席に座る。マジで何の事?
「よぉ! 団長、頭に一発食らわせたんだって?」
爪楊枝を噛みながら第三部隊長のグレコが前にドカっと座った。
「誰が何だって?」
寝起きの頭が一気に冴える。
「え? 違うのか? 昨日、元彼の頭をかち割ったって聞いたぞ?」
「はぁぁぁぁぁぁ? 何それ! 誰が言ったの?」
「えっ、えぇ? 俺は夜勤明けのケンから。ケンはカークからって。ん? その様子じゃ違うのか?」
「違~う! 全然違う!」
トーリースーめ!!!
チッ、あの時口止めするの忘れてたよ。やられた。
「団長、俺は痴漢を投げ飛ばしたって聞いたぞ?」
「俺は逆ナンしてたって」
う”ー!!!!!
「全然違うから。全部、全く、一ミリも合ってないから。昨日はケリーっていう同僚と飲んだだけだから!」
「それじゃぁ、何で男との話になってんだ?」
トリスだよ。トリス。全部あいつが悪い。絶対そうだ。
「その話の大元ってトリスじゃない?」
「どうだろう? 俺はケンからだし… 大丈夫か? 顔怖ぇぞ?」
「ん? あ? それよりその噂違うって言って回ってよ! よろしく」
「んぁ? おう?」
超特急でトリスを探す。北門の城内、演習場、廊下…
どこ? どこに居る?
「あ~! 居たぁ~!」
私はさらにスピードを上げトリスへ向かって走り出す。顔を見た途端さらにムカムカしてきた。っと、今ちょうど助走がついてるし飛び蹴りをかましてやろう。
『ザッ』とジャンプ。もうちょっとで足がトリスの背中に届くって所で振り返って避けた。
「ん? あ、あっぶね~。団長ちゃん?」
「避けんな! トリス!」
「え~!???」
トリスは顔が引き攣ってはいるが口が笑っている。何の事かわかってる顔じゃん。確認犯だな。決定、こいつは許さん。
私が片膝をついて次の攻撃に入ろうかと力んだ瞬間、さっと無音でトリスの背後を取ったのはドーンだった。
「ドーン! ナイス! いいわ、そのまま息の根を止めちゃって!」
「おいおい! 勘弁してくれ~」
ドーンの目は笑っていない。短剣がトリスの喉元を抑え、トリスは完全に両手を挙げて降参ポーズでビビっている。
「団長、朝早くから鬼ごっこですか? こやつ、どうかしましたか?」
「え~っとね… トリスが有る事無い事、団中に触れ回って。私が元彼の頭かち割ったとか、逆ナンしたとか… とにかく懲らしめないと気が済まない!」
ドーンは一息置いて、再度背後からトリスを睨む。
「何となくわかりました。ではこのまま首を落としましょうか? もうこれ以上話せないように。なぁ? こんな口は要らないよな? 団長を害なすモノなんて、なぁトリス?」
ドーンのダダ漏れた殺気が私にまで流れてくる。さ、寒い。てか怖い。ちびりそう。
トリスも顔が真っ青だ。挙げている両手が少しだけ震えていた。
「え? 本気? ごめん、ドーン。離してやって… トドメは私がしたい! うんそうよ、だからトリスを離して」
「…そうですか? 残念です」
ふっと、私に顔を向けたドーンはいつものニコニコに戻っていた。はぁ、ビビった。
しっかり、短剣をしまう振りして剣先でトリスの頬を切っていたけど。
「っつ。痛ぁ」
「で? トリス。あんたはわかってるわね? 懲罰を与えます」
「え? だってプライベートの事じゃん。仕事中の事じゃないでしょ? 懲罰ってやり過ぎじゃ無い? 半分は真実なんだしぃ」
「はぁ? どこが事実だよ! てか開き直る気? 私の、上官の信用を蔑めたのよ! しかも嘘で! 懲罰だけで済むんだからむしろラッキーと思いなさい!」
「え~」
ブーブーとトリスはまだ文句を言っている。
「おい、何か不満か?」
「い、いえ。トンデモアリマセン」
ドーンがトリスを黙らせてくれた。さすがドーン。
「あっ!!! そうだ! いい事思いついた!」
そのままドーンがトリスを団長室まで連行してくれる。私は今はスキップ状態だ。楽しいなぁ~。
団長室へ行くと、既に出勤していたコリーナに板とヒモを用意してもらう。
「団長、こんなモノどうするんですか?」
「ん? コリーナありがとう。これはね、こうしてね、こうするのよ」
完成したモノをトリスの身体に掛ける。
「これで今日は終業まで居る事。勝手に取ってはダメよ? 訓練で着替えたりしても、ちゃんと掛け直してね」
「… 本当にごめんって。もうしないから… 許してぇ! あっリック爺さん、助けてくれ~」
リックマイヤーは哀れなトリスをチラッと見ただけで『自業自得』と呟いて相手にしない。
「バカね~、誰もこれを見たら助けてくれないわ。これに懲りてもう他人の噂話なんて、しかも嘘を流さない事ね。はい、では、今日も始めましょうか?」
トリス以外は業務に取り掛かる。コリーナが少しだけ同情していたが、時間と共に素通りされていた。
トリスに出した懲罰の内容とは?
『私は嘘つきです。団長の名誉を傷つけたアホです。殴って下さい』
と、書かれた板を前と後ろ、二枚書いて肩から吊り下げさせた。
その日の終業時間近く、トリスは大分くたびれていた。ははは、結構殴られたかな?
ざまぁ。
いつも気さくな感じの隊員達が、コソコソ話をしては遠巻きに私を見ている。
ん?
バっと、身なりを素早く見直すが特に汚れている訳でもない。何だろう?
「おはよ~。団長さん、昨日は残念だったね~」
新しい料理人の一人のロザーナさんがサンドイッチを渡しながら慰めて? くれた。
「え? 何の事?」
「まぁ、まぁ、若い内は色々な経験をすればいいよ。はい、次の人~」
はぁぁぁ??? ますます分からん。
ハテナな感じで食堂の席に座る。マジで何の事?
「よぉ! 団長、頭に一発食らわせたんだって?」
爪楊枝を噛みながら第三部隊長のグレコが前にドカっと座った。
「誰が何だって?」
寝起きの頭が一気に冴える。
「え? 違うのか? 昨日、元彼の頭をかち割ったって聞いたぞ?」
「はぁぁぁぁぁぁ? 何それ! 誰が言ったの?」
「えっ、えぇ? 俺は夜勤明けのケンから。ケンはカークからって。ん? その様子じゃ違うのか?」
「違~う! 全然違う!」
トーリースーめ!!!
チッ、あの時口止めするの忘れてたよ。やられた。
「団長、俺は痴漢を投げ飛ばしたって聞いたぞ?」
「俺は逆ナンしてたって」
う”ー!!!!!
「全然違うから。全部、全く、一ミリも合ってないから。昨日はケリーっていう同僚と飲んだだけだから!」
「それじゃぁ、何で男との話になってんだ?」
トリスだよ。トリス。全部あいつが悪い。絶対そうだ。
「その話の大元ってトリスじゃない?」
「どうだろう? 俺はケンからだし… 大丈夫か? 顔怖ぇぞ?」
「ん? あ? それよりその噂違うって言って回ってよ! よろしく」
「んぁ? おう?」
超特急でトリスを探す。北門の城内、演習場、廊下…
どこ? どこに居る?
「あ~! 居たぁ~!」
私はさらにスピードを上げトリスへ向かって走り出す。顔を見た途端さらにムカムカしてきた。っと、今ちょうど助走がついてるし飛び蹴りをかましてやろう。
『ザッ』とジャンプ。もうちょっとで足がトリスの背中に届くって所で振り返って避けた。
「ん? あ、あっぶね~。団長ちゃん?」
「避けんな! トリス!」
「え~!???」
トリスは顔が引き攣ってはいるが口が笑っている。何の事かわかってる顔じゃん。確認犯だな。決定、こいつは許さん。
私が片膝をついて次の攻撃に入ろうかと力んだ瞬間、さっと無音でトリスの背後を取ったのはドーンだった。
「ドーン! ナイス! いいわ、そのまま息の根を止めちゃって!」
「おいおい! 勘弁してくれ~」
ドーンの目は笑っていない。短剣がトリスの喉元を抑え、トリスは完全に両手を挙げて降参ポーズでビビっている。
「団長、朝早くから鬼ごっこですか? こやつ、どうかしましたか?」
「え~っとね… トリスが有る事無い事、団中に触れ回って。私が元彼の頭かち割ったとか、逆ナンしたとか… とにかく懲らしめないと気が済まない!」
ドーンは一息置いて、再度背後からトリスを睨む。
「何となくわかりました。ではこのまま首を落としましょうか? もうこれ以上話せないように。なぁ? こんな口は要らないよな? 団長を害なすモノなんて、なぁトリス?」
ドーンのダダ漏れた殺気が私にまで流れてくる。さ、寒い。てか怖い。ちびりそう。
トリスも顔が真っ青だ。挙げている両手が少しだけ震えていた。
「え? 本気? ごめん、ドーン。離してやって… トドメは私がしたい! うんそうよ、だからトリスを離して」
「…そうですか? 残念です」
ふっと、私に顔を向けたドーンはいつものニコニコに戻っていた。はぁ、ビビった。
しっかり、短剣をしまう振りして剣先でトリスの頬を切っていたけど。
「っつ。痛ぁ」
「で? トリス。あんたはわかってるわね? 懲罰を与えます」
「え? だってプライベートの事じゃん。仕事中の事じゃないでしょ? 懲罰ってやり過ぎじゃ無い? 半分は真実なんだしぃ」
「はぁ? どこが事実だよ! てか開き直る気? 私の、上官の信用を蔑めたのよ! しかも嘘で! 懲罰だけで済むんだからむしろラッキーと思いなさい!」
「え~」
ブーブーとトリスはまだ文句を言っている。
「おい、何か不満か?」
「い、いえ。トンデモアリマセン」
ドーンがトリスを黙らせてくれた。さすがドーン。
「あっ!!! そうだ! いい事思いついた!」
そのままドーンがトリスを団長室まで連行してくれる。私は今はスキップ状態だ。楽しいなぁ~。
団長室へ行くと、既に出勤していたコリーナに板とヒモを用意してもらう。
「団長、こんなモノどうするんですか?」
「ん? コリーナありがとう。これはね、こうしてね、こうするのよ」
完成したモノをトリスの身体に掛ける。
「これで今日は終業まで居る事。勝手に取ってはダメよ? 訓練で着替えたりしても、ちゃんと掛け直してね」
「… 本当にごめんって。もうしないから… 許してぇ! あっリック爺さん、助けてくれ~」
リックマイヤーは哀れなトリスをチラッと見ただけで『自業自得』と呟いて相手にしない。
「バカね~、誰もこれを見たら助けてくれないわ。これに懲りてもう他人の噂話なんて、しかも嘘を流さない事ね。はい、では、今日も始めましょうか?」
トリス以外は業務に取り掛かる。コリーナが少しだけ同情していたが、時間と共に素通りされていた。
トリスに出した懲罰の内容とは?
『私は嘘つきです。団長の名誉を傷つけたアホです。殴って下さい』
と、書かれた板を前と後ろ、二枚書いて肩から吊り下げさせた。
その日の終業時間近く、トリスは大分くたびれていた。ははは、結構殴られたかな?
ざまぁ。