「ラモン団長! それより十手がもうすぐ出来るそうですね? 隊員達で試すんですよね? 見学しても?」
感極まっているスバルさんは両手を離してくれない。
「ははは、まず手を離しましょうか? ね?」
グッと力を入れて無理やり自分の手を引っこ抜く。
「あぁ、これは失礼。年頃のお嬢さんにあるまじき行為でした」
スバルさんはスッと離してくれたが、目の色が違う。今までと全く違う。ちょっと怖いよぉ。
「まぁ、いいですけど。お時間大丈夫ですか? お忙しいでしょう?」
「そこは大丈夫と言ったではありませんか」
「いや~、まぁ~、そうですけど…」
別にいいけど、今のスバルさんはちょっと苦手だな。私を見る目が変わってるし。
「必ず連絡下さいね!」
面倒臭いな。ドーンをチラ見するがやっぱり助けてくれなさそう。
「いえ、もう日取りは決まっていますので。五日後の午前中です。今回手伝ってくれる騎士達が空いているのがその日なので」
「そうですか。了解しました。場所は第七の演習場でしょうか?」
「はい」
「いや~、今回はとても有意義な時間を過ごさせて頂きました。ラモン団長ありがとうございます。それで、一つ質問なんですがよろしいでしょうか?」
ん? 改まって何だろう?
「何でしょう? 答えられる範囲でよければ」
スバルさんは居住まいを正して真剣な顔で私を見る。
「第七に経理関係に強い騎士はいますか? 確か、全員と面接をしたんですよね?」
「経理ですか… う~ん。書類関係が得意な人は皆無ですね。本が好きな女性騎士は居ましたが、どちらかと言うと薬草関係の知識がある感じでしたし」
「そうですか! わかりました」
「え? それがどうかしましたか?」
「いえいえ。側近はどの団も人材不足ですね! はははは」
「あぁ、はい」
ん? 何だろう? 何か引っかかるな。
「では、私はこれで。ドーン殿、お茶ご馳走様でした」
「いえ、お手伝い感謝しますぞ、スバル殿」
二人は熱い握手を交わして、スバルさんは上機嫌で去って行った。
「何だったんだろう? 最後の質問…」
「さぁ? まぁ、予定より早く給与の算定が終わって良かったですね」
「そうね… あとはバイト問題よね」
「ばいと?」
「あっ… 副職よ」
「はぁ? 副職ですか?」
ドーンはお茶を入れ直してくれて、私の向かいに座り直した。
「今回の算定でお給料が少なくなる人が三分の一程いるよね? その人達に休日を使っての副職を斡旋しようかと思って」
ドーンはうんうんと頷いて先を勧めてくれる。
「少なくなったお給料全部とは言えないけど、少しは足しになるかなぁって。色々考えてみたんだ。食堂の料理人補助や今まで個人で行っていた武器のメンテナンスとか、騎士以外の仕事をしてもらうの。もちろん賃金は払うし」
「いいアイデアですが… 貴族は敬遠しそうですな」
「敬遠かぁ、まぁ、それはそれでいいんじゃない? 給料をもっと欲しい人がすればいいんだし。第七にとっても雑務が減っていいわ。別途雇うとお金がかさむじゃない? 上手く回せばいいのよ」
「なるほど。自分達で補うんですね。だから少しの賃金で人材も確保出来ると。財源はどうします?」
「そこよね~。今回、見直した予算で浮いたお金と、私も副職をしようかと思って」
「団長自らですか?」
「ええ。私のアレよ!」
「アレ? … まさか!」
ふふふ~ん。そのまさかです。洗浄魔法です。
「しかし… どうやって?」
「それはね、寮の部屋よ! 独身寮の部屋って多分だけど汚いと思うのよ。男性が多いし、基本掃除は自分達でするじゃない? 建物も古いから諦めてる人って多いと思うのよね。だから、あの洗浄魔法で一部屋一回につき三千Kとかお金を取るの。払えない額じゃ無いでしょう?」
「お金を取って掃除ですか… バレませんか?」
「それはバレないようにするわ。掃除するタイミングはその部屋の主が出勤日で確実に部屋に居ない日を狙えばいいのよ。それに、勤務時間は八時間あるのよ? 普通に掃除するにしても十分な時間だわ。私がするとは言わなければいいんだし。特別に掃除する人を雇うよって言えばいいじゃない?」
「なるほど、そのお金を副職代に回すと?」
「えぇ、一見自分のお金が回っているように見えるけど、部屋はキレイになるし、働いた分だけお金は増えるし、食堂も補助員が増えれば楽だろうし、みんなが得すると思うの」
って、私は普通にキレイにしたいだけなんだけどね。共用部分は私がこっそりやればいいんだけど、寮の部屋はねぇ。個人的な空間だしね。
「わかりました。しかし、この副職の件はもう少し後にしましょう。新しい給与や勤務体制が浸透してからの方がいいでしょう」
「そう? では、タイミングはドーンに任せるわ」
私はいつでもいいよ。むしろ早くやりたいよ!
「まぁ、先日の食堂がキレイになった日から、隊員達もうれしそうでしたから。同じ掃除夫であると言えば依頼は来るでしょうね」
「でしょ? 掃除って一回きりじゃないしね。部屋っていつの間にか汚れてしまうし」
そうそう、なぜか溜まっていくゴミ達。ホコリ達。不思議なんだよね。って、言っとくけど、私の部屋は汚部屋じゃないよ! 私には洗浄魔法があるんだから。
「他に副職のアイデアがないか私の方でも考えてみます」
お~! ドーンが乗り気になってくれた。うれしいな。
「ありがとう。いつも突拍子もない事を受け入れてくれて」
「いえ。団長が考える事は団の為になっていますので問題ありません。団長こそ、ご自身の事を優先に考えてもいいんですよ?」
「ん? そうかな? 結構、自分本位な気がするけどね」
キレイにしたり、キレイにしたり… あとは美味しいご飯にありつきたいとか。原動力はそこなんだけどな。
「そうですよ。もっと団長らしくふんぞり返ってもいいんですよ?」
「ぷぷっ。ふんぞり返るって。そんな自分が想像出来ない、あはは」
「そこが団長の素晴らしい所ですね」
ドーンは満足げに私を見て、いつもの様にうんうんと頷く。
感極まっているスバルさんは両手を離してくれない。
「ははは、まず手を離しましょうか? ね?」
グッと力を入れて無理やり自分の手を引っこ抜く。
「あぁ、これは失礼。年頃のお嬢さんにあるまじき行為でした」
スバルさんはスッと離してくれたが、目の色が違う。今までと全く違う。ちょっと怖いよぉ。
「まぁ、いいですけど。お時間大丈夫ですか? お忙しいでしょう?」
「そこは大丈夫と言ったではありませんか」
「いや~、まぁ~、そうですけど…」
別にいいけど、今のスバルさんはちょっと苦手だな。私を見る目が変わってるし。
「必ず連絡下さいね!」
面倒臭いな。ドーンをチラ見するがやっぱり助けてくれなさそう。
「いえ、もう日取りは決まっていますので。五日後の午前中です。今回手伝ってくれる騎士達が空いているのがその日なので」
「そうですか。了解しました。場所は第七の演習場でしょうか?」
「はい」
「いや~、今回はとても有意義な時間を過ごさせて頂きました。ラモン団長ありがとうございます。それで、一つ質問なんですがよろしいでしょうか?」
ん? 改まって何だろう?
「何でしょう? 答えられる範囲でよければ」
スバルさんは居住まいを正して真剣な顔で私を見る。
「第七に経理関係に強い騎士はいますか? 確か、全員と面接をしたんですよね?」
「経理ですか… う~ん。書類関係が得意な人は皆無ですね。本が好きな女性騎士は居ましたが、どちらかと言うと薬草関係の知識がある感じでしたし」
「そうですか! わかりました」
「え? それがどうかしましたか?」
「いえいえ。側近はどの団も人材不足ですね! はははは」
「あぁ、はい」
ん? 何だろう? 何か引っかかるな。
「では、私はこれで。ドーン殿、お茶ご馳走様でした」
「いえ、お手伝い感謝しますぞ、スバル殿」
二人は熱い握手を交わして、スバルさんは上機嫌で去って行った。
「何だったんだろう? 最後の質問…」
「さぁ? まぁ、予定より早く給与の算定が終わって良かったですね」
「そうね… あとはバイト問題よね」
「ばいと?」
「あっ… 副職よ」
「はぁ? 副職ですか?」
ドーンはお茶を入れ直してくれて、私の向かいに座り直した。
「今回の算定でお給料が少なくなる人が三分の一程いるよね? その人達に休日を使っての副職を斡旋しようかと思って」
ドーンはうんうんと頷いて先を勧めてくれる。
「少なくなったお給料全部とは言えないけど、少しは足しになるかなぁって。色々考えてみたんだ。食堂の料理人補助や今まで個人で行っていた武器のメンテナンスとか、騎士以外の仕事をしてもらうの。もちろん賃金は払うし」
「いいアイデアですが… 貴族は敬遠しそうですな」
「敬遠かぁ、まぁ、それはそれでいいんじゃない? 給料をもっと欲しい人がすればいいんだし。第七にとっても雑務が減っていいわ。別途雇うとお金がかさむじゃない? 上手く回せばいいのよ」
「なるほど。自分達で補うんですね。だから少しの賃金で人材も確保出来ると。財源はどうします?」
「そこよね~。今回、見直した予算で浮いたお金と、私も副職をしようかと思って」
「団長自らですか?」
「ええ。私のアレよ!」
「アレ? … まさか!」
ふふふ~ん。そのまさかです。洗浄魔法です。
「しかし… どうやって?」
「それはね、寮の部屋よ! 独身寮の部屋って多分だけど汚いと思うのよ。男性が多いし、基本掃除は自分達でするじゃない? 建物も古いから諦めてる人って多いと思うのよね。だから、あの洗浄魔法で一部屋一回につき三千Kとかお金を取るの。払えない額じゃ無いでしょう?」
「お金を取って掃除ですか… バレませんか?」
「それはバレないようにするわ。掃除するタイミングはその部屋の主が出勤日で確実に部屋に居ない日を狙えばいいのよ。それに、勤務時間は八時間あるのよ? 普通に掃除するにしても十分な時間だわ。私がするとは言わなければいいんだし。特別に掃除する人を雇うよって言えばいいじゃない?」
「なるほど、そのお金を副職代に回すと?」
「えぇ、一見自分のお金が回っているように見えるけど、部屋はキレイになるし、働いた分だけお金は増えるし、食堂も補助員が増えれば楽だろうし、みんなが得すると思うの」
って、私は普通にキレイにしたいだけなんだけどね。共用部分は私がこっそりやればいいんだけど、寮の部屋はねぇ。個人的な空間だしね。
「わかりました。しかし、この副職の件はもう少し後にしましょう。新しい給与や勤務体制が浸透してからの方がいいでしょう」
「そう? では、タイミングはドーンに任せるわ」
私はいつでもいいよ。むしろ早くやりたいよ!
「まぁ、先日の食堂がキレイになった日から、隊員達もうれしそうでしたから。同じ掃除夫であると言えば依頼は来るでしょうね」
「でしょ? 掃除って一回きりじゃないしね。部屋っていつの間にか汚れてしまうし」
そうそう、なぜか溜まっていくゴミ達。ホコリ達。不思議なんだよね。って、言っとくけど、私の部屋は汚部屋じゃないよ! 私には洗浄魔法があるんだから。
「他に副職のアイデアがないか私の方でも考えてみます」
お~! ドーンが乗り気になってくれた。うれしいな。
「ありがとう。いつも突拍子もない事を受け入れてくれて」
「いえ。団長が考える事は団の為になっていますので問題ありません。団長こそ、ご自身の事を優先に考えてもいいんですよ?」
「ん? そうかな? 結構、自分本位な気がするけどね」
キレイにしたり、キレイにしたり… あとは美味しいご飯にありつきたいとか。原動力はそこなんだけどな。
「そうですよ。もっと団長らしくふんぞり返ってもいいんですよ?」
「ぷぷっ。ふんぞり返るって。そんな自分が想像出来ない、あはは」
「そこが団長の素晴らしい所ですね」
ドーンは満足げに私を見て、いつもの様にうんうんと頷く。