「そこ、間違ってますよ」
と、団長室で計算をしている私にちょいちょい指導が入る。
「すみません」
「あぁ、ここもです」
あ”~! ごめんなさい。計算苦手です。
約束通りスバルさんがお手伝いに来てくれて、スパパパパッと最速で計算がされる。
紙をめくるスピードと計算する手、どんだけだよ!
まぁ、おかげ様で今日で給与の算定が終わりそうだけど。
「ご苦労様です。以上ですね」
「ふ~。あぁぁぁぁ」
私はガッチガチの肩をポキポキ鳴らす。やっと、終わった。うれしさのあまり、万歳だよ!
「スバル殿、こちらで休憩して下さい」
まだ、側近がいないので代わりにドーンがお茶を用意してくれた。
「ありがとうございます。ドーン殿の入れてくれたお茶を飲む機会が来るとは、不思議なものです」
「そんな、大した事ではないですよ」
そうなの? まぁ、そうか。元第一の参謀だもんね。入れる事はまぁ無いか。
「ドーンにはお世話になります」
「ははは、団長。これは部下の仕事ですからお気になさらず、ね?」
「そうですか…?」
うっ。イケオジの笑顔。最近、ドーンの笑顔がやたらキュンキュンくるんだよね。
目の保養と言うより、心臓が痛い。
「その様子ですとドーン殿は第七がお気に召した様ですね。第一に居た時と雰囲気が全く違います」
「そうですかな? 第七と言うよりは団長の下が楽しいんですよ」
ちょっと、地味にハードル上げないで。あんまりヨイショしないでよ。
「しょ、精進します」
私は恥ずかしすぎて真っ赤な顔で俯いてしまう。
「これはこれは。ラモン団長、あの『稲妻ブレーン』を手懐けるとは、末恐ろしいですね。何か秘訣でもあるんでしょうか?」
「いや、手懐けるなんて… 誤解です。私は何もしていませんよ。ドーンからも何か言って!」
「ははは、団長。ご自身をご理解下さい。十分魅力的です」
おいおい、追い討ちしてどうするんだよ! 止めて!
「ドーン! いい加減にして。からかって… 面白がってるんですよ、スバルさんも変な事言わないで下さい」
「し、失礼しました。ふふふ。この反応は… かわいらしくて。ドーン殿も大変ですね、この第七だと若い騎士が多いですし、団長は騎士には珍しく純真そうですし」
「そこは問題ありません。一匹の小蝿も近づけさせません」
「ほぉ、それはそれは」
ニコニコ笑顔のオヤジ達。優雅にお茶を飲んでいる。
私はと言うと… もう居場所が… マジで顔が熱い。
「それより、この給与算定法、いいですね」
「そうでしょう。貴族の方々は少し給与が下がるかもしれませんが、説明すれば分かってくれるかと思います」
「階級別の基本給+役職手当+皆勤手当。まずこの基本がいいですね。他の手当も面白い」
そう、そこね!
皆勤手当はサボり防止。平民が多いからきっと抑止力になると思ったんだ。
あとは、通勤組の婚姻手当。結婚してる人はほぼ通勤してるから、この手当があると今後結婚したい人達を後押しするはず。子供手当に危険手当もね。
「この天引き? ですか? 独身の寮暮らしから文句は出ませんか?」
「あぁ、出るかもですね。今までタダだった寮の家賃とご飯代を寮費として毎月一万五千K天引きしますから。それに通勤組からもちょっと文句が出るかもですけど」
「と言うと?」
「はい、今後、食堂では食費をもらおうかと思いまして」
「飯代ですか?」
「はい。通勤組は一食三百Kです。少額ですが徴収する事によって、月換算すると結構な額になります。食堂の運営に回そうかと思いまして」
「運営? 確か今はどの団でも退役者が働いていますよね?」
「ええ。料理って一見楽な様で、結構な重労働ですから。退役したお爺ちゃん達には別の仕事の方がいいんじゃないかと。ですので別途専門の料理人を雇いたいんです。それに雇うからには今まで以上の美味しい料理を提供する予定です」
「別の仕事とは?」
「新人の育成と平民騎士への教育です」
「ほぉ。例えば?」
スバルさんは興味津々だ。ちょっと乗り出し気味に話を聞いている。
「まず新人に仕事のノウハウを教える仕事ですね。あとは自身の経験の伝授です。現役の先輩騎士の時間を割いてまで新人教育にかける時間が勿体無くて。今は人員不足ですから。次に平民騎士への教育は、読み書きと計算です。読めても書けない人が多いみたいで。計算も苦手な人が多いですね。門番の事務仕事の効率を考えれば、ここは足並みを揃えたい部分です」
「それこそその仕事は金を産みませんよ?」
「ですが、知識は隊員達のレベルを上げます。どこの団に行っても通用するでしょうし、逆に平民だからと蔑まれる事がなくなるんじゃ無いでしょうか?」
「そこまで… 未来の騎士団への投資になるのか」
投資って。そんな大層なものじゃ無いけどさぁ。
平民騎士が第七に多い理由は多分ここだ。教育が施されれば、仕事の内容的に第二や第三へ異動出来ない訳じゃ無いと思う。
「今は他の団へ異動は難しいでしょうが、平民でもがんばれば出世できると示したいんです。騎士が平民の憧れの職業になればいいなぁ~なんて」
そう! キツイ、安い、ダサいを何としても払拭するぞ! これは第一段階だ!
「あなたは第七に飛ばされたと言うのに、文句も言わずこんなにも騎士の事を… 私は感動致しました!」
「いえ、飛ばされたとは、さすがに思ってませんよ。え?」
ん? あれ? 変なスイッチ押しちゃった?
あれ? あれ?
私は心配になってドーンを見る。スバルさんの様子が、ちょいおかしくない?
ドーンはニコニコするだけで何も言わない。
「ラモン団長! あなたは女神か!」
感極まったスバルさんが両手をガシッと握ってくる。
「はい?」
ちょっと、圧が! 助けて! ドーン!
「スバル殿もようやく理解されましたな」
うんうんと満足気に頷くドーン。
「はぁ? ちょっ、ドーン? 何とかしてよぉ~」
と、団長室で計算をしている私にちょいちょい指導が入る。
「すみません」
「あぁ、ここもです」
あ”~! ごめんなさい。計算苦手です。
約束通りスバルさんがお手伝いに来てくれて、スパパパパッと最速で計算がされる。
紙をめくるスピードと計算する手、どんだけだよ!
まぁ、おかげ様で今日で給与の算定が終わりそうだけど。
「ご苦労様です。以上ですね」
「ふ~。あぁぁぁぁ」
私はガッチガチの肩をポキポキ鳴らす。やっと、終わった。うれしさのあまり、万歳だよ!
「スバル殿、こちらで休憩して下さい」
まだ、側近がいないので代わりにドーンがお茶を用意してくれた。
「ありがとうございます。ドーン殿の入れてくれたお茶を飲む機会が来るとは、不思議なものです」
「そんな、大した事ではないですよ」
そうなの? まぁ、そうか。元第一の参謀だもんね。入れる事はまぁ無いか。
「ドーンにはお世話になります」
「ははは、団長。これは部下の仕事ですからお気になさらず、ね?」
「そうですか…?」
うっ。イケオジの笑顔。最近、ドーンの笑顔がやたらキュンキュンくるんだよね。
目の保養と言うより、心臓が痛い。
「その様子ですとドーン殿は第七がお気に召した様ですね。第一に居た時と雰囲気が全く違います」
「そうですかな? 第七と言うよりは団長の下が楽しいんですよ」
ちょっと、地味にハードル上げないで。あんまりヨイショしないでよ。
「しょ、精進します」
私は恥ずかしすぎて真っ赤な顔で俯いてしまう。
「これはこれは。ラモン団長、あの『稲妻ブレーン』を手懐けるとは、末恐ろしいですね。何か秘訣でもあるんでしょうか?」
「いや、手懐けるなんて… 誤解です。私は何もしていませんよ。ドーンからも何か言って!」
「ははは、団長。ご自身をご理解下さい。十分魅力的です」
おいおい、追い討ちしてどうするんだよ! 止めて!
「ドーン! いい加減にして。からかって… 面白がってるんですよ、スバルさんも変な事言わないで下さい」
「し、失礼しました。ふふふ。この反応は… かわいらしくて。ドーン殿も大変ですね、この第七だと若い騎士が多いですし、団長は騎士には珍しく純真そうですし」
「そこは問題ありません。一匹の小蝿も近づけさせません」
「ほぉ、それはそれは」
ニコニコ笑顔のオヤジ達。優雅にお茶を飲んでいる。
私はと言うと… もう居場所が… マジで顔が熱い。
「それより、この給与算定法、いいですね」
「そうでしょう。貴族の方々は少し給与が下がるかもしれませんが、説明すれば分かってくれるかと思います」
「階級別の基本給+役職手当+皆勤手当。まずこの基本がいいですね。他の手当も面白い」
そう、そこね!
皆勤手当はサボり防止。平民が多いからきっと抑止力になると思ったんだ。
あとは、通勤組の婚姻手当。結婚してる人はほぼ通勤してるから、この手当があると今後結婚したい人達を後押しするはず。子供手当に危険手当もね。
「この天引き? ですか? 独身の寮暮らしから文句は出ませんか?」
「あぁ、出るかもですね。今までタダだった寮の家賃とご飯代を寮費として毎月一万五千K天引きしますから。それに通勤組からもちょっと文句が出るかもですけど」
「と言うと?」
「はい、今後、食堂では食費をもらおうかと思いまして」
「飯代ですか?」
「はい。通勤組は一食三百Kです。少額ですが徴収する事によって、月換算すると結構な額になります。食堂の運営に回そうかと思いまして」
「運営? 確か今はどの団でも退役者が働いていますよね?」
「ええ。料理って一見楽な様で、結構な重労働ですから。退役したお爺ちゃん達には別の仕事の方がいいんじゃないかと。ですので別途専門の料理人を雇いたいんです。それに雇うからには今まで以上の美味しい料理を提供する予定です」
「別の仕事とは?」
「新人の育成と平民騎士への教育です」
「ほぉ。例えば?」
スバルさんは興味津々だ。ちょっと乗り出し気味に話を聞いている。
「まず新人に仕事のノウハウを教える仕事ですね。あとは自身の経験の伝授です。現役の先輩騎士の時間を割いてまで新人教育にかける時間が勿体無くて。今は人員不足ですから。次に平民騎士への教育は、読み書きと計算です。読めても書けない人が多いみたいで。計算も苦手な人が多いですね。門番の事務仕事の効率を考えれば、ここは足並みを揃えたい部分です」
「それこそその仕事は金を産みませんよ?」
「ですが、知識は隊員達のレベルを上げます。どこの団に行っても通用するでしょうし、逆に平民だからと蔑まれる事がなくなるんじゃ無いでしょうか?」
「そこまで… 未来の騎士団への投資になるのか」
投資って。そんな大層なものじゃ無いけどさぁ。
平民騎士が第七に多い理由は多分ここだ。教育が施されれば、仕事の内容的に第二や第三へ異動出来ない訳じゃ無いと思う。
「今は他の団へ異動は難しいでしょうが、平民でもがんばれば出世できると示したいんです。騎士が平民の憧れの職業になればいいなぁ~なんて」
そう! キツイ、安い、ダサいを何としても払拭するぞ! これは第一段階だ!
「あなたは第七に飛ばされたと言うのに、文句も言わずこんなにも騎士の事を… 私は感動致しました!」
「いえ、飛ばされたとは、さすがに思ってませんよ。え?」
ん? あれ? 変なスイッチ押しちゃった?
あれ? あれ?
私は心配になってドーンを見る。スバルさんの様子が、ちょいおかしくない?
ドーンはニコニコするだけで何も言わない。
「ラモン団長! あなたは女神か!」
感極まったスバルさんが両手をガシッと握ってくる。
「はい?」
ちょっと、圧が! 助けて! ドーン!
「スバル殿もようやく理解されましたな」
うんうんと満足気に頷くドーン。
「はぁ? ちょっ、ドーン? 何とかしてよぉ~」