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「おはよう夏紀!」
「お、おはよう花…。」
「もーだから毎日毎日どうしたのったら。そんなコソコソしながら教室入るなんて。なんかしたの?」
「い、いやぁ…。」

風邪で休んでるというのはタチが悪い。
いつ来るのか分からないから毎日警戒しなければならない。

今日もまだ、来てない。よし。
いや、別に気にしてるとかじゃないんだよ?でもさほら、ちょっとさ。話振られたりすると困るじゃん?ね?

ガラッ

「はーい朝学活始めるぞ〜。」

担任の先生が入ってくる。
それと同時になぜか後ろのドアが開いた。

「っ、すいません遅れました。」

…っ!?え、つ、栗花落君…!!?

「あ〜連絡もらってるから大丈夫だぞ〜。座って座って。」
「はい。」

やばいやばい来る来る来る。
なんてったって隣の席だ。しかしここは平常心。お得意のポーカーフェイス(?)とはなんか違う気がするけどそーゆーことだ!

そして栗花落君が椅子に座るタイミングで、
私は必殺、営業スマイルを繰り出す。

「おはよう栗花落君!」

にっこり。怖いかもしれないなーとは思うけどまあそこはしょうがない。

「…あ、お、おはよ。」

ちょっと面食らった顔をしつつも挨拶を返してくれた。なんというか、先手必勝に近いものがある。いつも通りにしちゃえば向こうはいつも通りにせざるを得ないと言うか。これぞ駆け引き。



…と、思っていたものの。
やっぱりそうは行かなかった。

「宮澤。ちょっといい?」

やり返しなのかなんなのか、帰り学活が終わった瞬間満面の笑みを浮かべて栗花落君が私に言った。オーマイガーである。

「あーごめんちょっと今日花と遊びに行こうと思ってて〜…」
「え、私今日部活なんだけど。」

おっと花さん!そこは話合わせてくださいよっ!

「だってよ宮澤。な。」
「………。」
「あーもう照れちゃってんだよ夏紀。連れてっていいからいいから。」
「はい!?花!?」

まさかの裏切りに花の方を思いっきり振り向く。
すると小声で耳打ちされた。

「ごめんごめん今まで察し悪くて。黒板消してたのも毎朝登校する時にそわそわしてたのも栗花落君のこと好きだったからなのね。協力してあげるから!」

いやちがーう!!なんでそうなった!!
違う違う!そんなこと、な、い…。
よ…?ぇ〜…。多分そんなことないはずなんだけど…。普通に気になってるだけと言うか人として…。

「だからそれ好きなんだってば。いいから行ってこーい!」
「わっ!!」

思い切り花に後ろから突き飛ばされた。もーマジやめてよ…。

「さて、親友さんから許可も出たし、行こっか。」
「……はぁ。」

もうここまで来たらいっそ仏頂面で行ったほうがマシなんじゃないかと思う。
私は大人しく栗花落君について行った。