私はもうずっと、黒板消し君の隣の席だ。

別に私は物に君付けして呼ぶ趣味はないしちゃんと隣の席にいるのは人間だ。
ただ、彼は毎日毎日黒板を消す。
だから黒板を消す栗花落(つゆり)という意味で「黒板消しの栗花落」という異名がつき、とうとう省略されて黒板消しになってしまった。


今日も彼は、黒板を消す。
朝登校してきたら消す。
授業が終わったら消す。
いつも私たちのクラスは黒板がピカピカだ。


クラス替えしてからずっと隣の席ではあるけれど、私はあんまり彼と仲良くない。
と言うかそもそも彼は基本友達がいないように見える。
本人は一匹狼の風貌を出してるし、周りも彼を珍獣扱いしている。


最初は黒板を毎日消してくれる彼のボランティア精神に感嘆の声が上がっていたものの…。
その声にも全く反応せず淡々と黒板を消す栗花落君に皆首を傾げだ。
そしてそのうちボランティアというか趣味なのではないかということで認知されるようになり、変人扱いされた。
あと多分意外と影響してるのは名字も珍しいということだと思う。


別に名字が珍しい人は変人だというつもりはないけれど、そういう人はなんとなく独特な雰囲気がある。
田中とか佐藤とかよりよっぽど異色を放っていると勝手に思っている。
あくまで私の持論なので一般的にどうかは置いといて、少なくとも栗花落君はそういった雰囲気を持っていた。
だから彼はクラスの中では随分特別な感じの位置にいた。


クラスのみんなは彼から一歩引いていて、あんまり関わらないようにしてる感じがするけれど、私は割と彼に興味があった。
なんで黒板をそんなに消すんだろう、という疑問はあると言えばあるけど、なんかそんなに気にしてない。
黒板を綺麗にしてたいんだろうな〜としか思わない。

そして一言余計なことを言うならば、
……授業中に盗み見る彼の横顔は結構綺麗で、イケメンだ。