私、葛原紬は、どこかいじりやすいのか昔から良くも悪くもいじられる傾向にある。
最初の頃は、皆の輪の中にいられるならそれもありだと思っていたけど、だんだんそれも苦しくなってきていた。
(いじられるのと、いじめられるって思うのって紙一重な気がする……)
そう思うようになってからというもの、私は、なんのために学校に来ているのか、なんのために生きているのかさえ……よく分からなくなっていた。
* * *
いじるのもエスカレートすれば、いじめに発展することだってあるのを、私は以前に一緒にいた友達を見ていて知っている。
その子は、耐えられずに転校していったのだ。
私はその当時、友達の味方をしていたけれど、そのいじめの矛先が私に向き始めると、友達はそれまで以上に病んでしまった。
「紬にこれ以上、迷惑かけられない」
「私は迷惑だなんて思ってないよ。いじめるアイツらが悪いんだから」
「そうは言っても、実際、紬もいじめられかけてるでしょ。私はそれが嫌なの」
ふたりで話せるときに、色々話したけれど、友達は転校するという選択肢を選んだ。
友達がそれで少しでも気持ちが楽になるなら、私はそれでもいいと思っていた。
転校先で元気に過ごしてるならそれで……。
その後、案の定……私がいじめのターゲットになってしまった。
おもちゃがなくなれば、次のおもちゃを探すというのは、いじめでよくあること。
いじめをしていた人たちにとっては、きっと……おもちゃさえあれば、どんなおもちゃだろうと関係ないのだろう。
(あの頃からだっけ……私がいなくならないから、未だにいじめが続いてる)
今は高2の1月。何気に大事な時期だ。
友達が転校していったのは、確か2年になって数ヶ月してからだった。
私にとっては、唯一の大事な友達で親友と呼べる存在だったけど、転校していってからは、連絡を取る回数も減ってしまった。それぞれの生活があるから仕方ないけれど。
今は学校で、私には友達と呼べる人なんてひとりもいない。
友達を作っても、その子に迷惑かけちゃうことを分かってるから、作らないようにしてきたのだ。
いじめられるのを我慢してると思われてるのは知ってる。
早くいなくなればいいのにって思われてるのも知ってる。
私がいなくなったら、また次のおもちゃを見つけるだけだっていうのも知ってる。
いじめなんて、おもちゃが変わるだけで、同じような事が続いていくから。
もしかしたら、次の人はもっとエスカレートするかもしれない。
だから周りはきっと、私がいなくなったら次は自分の番かもしれないってドキドキしてる人もいると思う。
色々考えてると、何もかもどうでもよくなってきて、学校にいると自然と足が屋上へと向かうことが多い。
最近の私のお気に入りの場所だ。
今日も昼休みに、その屋上へとやって来た。
思いっきり両手を空へと伸ばして、背伸びをする。
「んー、気持ちいい……」
ここに来ていつも思うこと。それは……。
――ここから飛び降りたら、私をいじめてくる奴らに仕返しできるかな……。
こんな長い期間いじめられても、何も行動を起こさない私を見て、「強い人」だと思われてるかもしれないけど、私だって人並みに傷ついてる。我慢してるだけ。
転校していった友達と同じように、学校を去ることだってできるけど、それではまた同じおもちゃを作ってしまうだけで、根本的な解決にはならない。
でも、ここで大きな問題でも起こせばそれなりに、先生たちも動いてくれるだろう。
……と、私は信じたい。
そんな風に思っていると、今日は……無意識のうちに柵に近づいて、身を乗り出していた。
(今ならいけるかも……いっそのこと、このまま……)
そして、もう少し前に身を乗り出そうとした瞬間――。
「ちょっとさー、やめてくんない?」
(えっ!?)
あるひとりの男子生徒に声をかけられた。
最初の頃は、皆の輪の中にいられるならそれもありだと思っていたけど、だんだんそれも苦しくなってきていた。
(いじられるのと、いじめられるって思うのって紙一重な気がする……)
そう思うようになってからというもの、私は、なんのために学校に来ているのか、なんのために生きているのかさえ……よく分からなくなっていた。
* * *
いじるのもエスカレートすれば、いじめに発展することだってあるのを、私は以前に一緒にいた友達を見ていて知っている。
その子は、耐えられずに転校していったのだ。
私はその当時、友達の味方をしていたけれど、そのいじめの矛先が私に向き始めると、友達はそれまで以上に病んでしまった。
「紬にこれ以上、迷惑かけられない」
「私は迷惑だなんて思ってないよ。いじめるアイツらが悪いんだから」
「そうは言っても、実際、紬もいじめられかけてるでしょ。私はそれが嫌なの」
ふたりで話せるときに、色々話したけれど、友達は転校するという選択肢を選んだ。
友達がそれで少しでも気持ちが楽になるなら、私はそれでもいいと思っていた。
転校先で元気に過ごしてるならそれで……。
その後、案の定……私がいじめのターゲットになってしまった。
おもちゃがなくなれば、次のおもちゃを探すというのは、いじめでよくあること。
いじめをしていた人たちにとっては、きっと……おもちゃさえあれば、どんなおもちゃだろうと関係ないのだろう。
(あの頃からだっけ……私がいなくならないから、未だにいじめが続いてる)
今は高2の1月。何気に大事な時期だ。
友達が転校していったのは、確か2年になって数ヶ月してからだった。
私にとっては、唯一の大事な友達で親友と呼べる存在だったけど、転校していってからは、連絡を取る回数も減ってしまった。それぞれの生活があるから仕方ないけれど。
今は学校で、私には友達と呼べる人なんてひとりもいない。
友達を作っても、その子に迷惑かけちゃうことを分かってるから、作らないようにしてきたのだ。
いじめられるのを我慢してると思われてるのは知ってる。
早くいなくなればいいのにって思われてるのも知ってる。
私がいなくなったら、また次のおもちゃを見つけるだけだっていうのも知ってる。
いじめなんて、おもちゃが変わるだけで、同じような事が続いていくから。
もしかしたら、次の人はもっとエスカレートするかもしれない。
だから周りはきっと、私がいなくなったら次は自分の番かもしれないってドキドキしてる人もいると思う。
色々考えてると、何もかもどうでもよくなってきて、学校にいると自然と足が屋上へと向かうことが多い。
最近の私のお気に入りの場所だ。
今日も昼休みに、その屋上へとやって来た。
思いっきり両手を空へと伸ばして、背伸びをする。
「んー、気持ちいい……」
ここに来ていつも思うこと。それは……。
――ここから飛び降りたら、私をいじめてくる奴らに仕返しできるかな……。
こんな長い期間いじめられても、何も行動を起こさない私を見て、「強い人」だと思われてるかもしれないけど、私だって人並みに傷ついてる。我慢してるだけ。
転校していった友達と同じように、学校を去ることだってできるけど、それではまた同じおもちゃを作ってしまうだけで、根本的な解決にはならない。
でも、ここで大きな問題でも起こせばそれなりに、先生たちも動いてくれるだろう。
……と、私は信じたい。
そんな風に思っていると、今日は……無意識のうちに柵に近づいて、身を乗り出していた。
(今ならいけるかも……いっそのこと、このまま……)
そして、もう少し前に身を乗り出そうとした瞬間――。
「ちょっとさー、やめてくんない?」
(えっ!?)
あるひとりの男子生徒に声をかけられた。