CICの内部は艦橋とは違い、大型のディスプレイが正面と左右に合わせて3つついていた。暗いCIC内部ではディスプレイの灯りが煌々と輝いていた。ディスプレイに表示されているものを一つ一つ流し見ていると、通信が入る。
「全艦に達する。こちらα部隊旗艦『ひゅうが』だ。これより演習を開始する。全艦戦闘計画に基づき行動を開始せよ。各員の奮励努力に期待する。以上」
この通信によって、演習の火蓋が切られた。小西は、戦闘計画に基づき号令をかける。
「進路008、第一戦速!」
「進路008、第一戦速ヨーソロー」
桐原が復唱すると、杉内と桐原はともにアイコンタクトをとり、杉内が砲雷科乗組員に号令をかける。
「総員、第一種戦闘配備につけ!砲雷撃戦用意!」
けたたましいサイレンが艦内に鳴り響き、艦内では乗組員がせわしなく走り回る。
「第一砲塔、準備よろし」
「第二砲塔、準備よろし」
「第三砲塔、準備よろし」
「艦首魚雷発射管、準備よろし」
「艦尾魚雷発射管、準備よろし」
「左舷魚雷発射管、準備よろし」
「右舷魚雷発射管、準備よろし」
「全対空砲塔、準備よろし」
杉内に、それぞれの部署から配置完了の報告が届く。全ての戦闘配置が終了したことを確認すると、
「総員、戦闘配備完了。」
と戦闘配置完了を報告した。…不安要素はないわけではないが、この艦ならいける。そう信じ、CIC内の正面の大型ディスプレイ群を睨みつけた。
しばらくすると、桐原から報告が入る。
「正面にアステロイド群多数!」
その報告を受け、戦闘計画を思い返しながら慎重に指示を飛ばす。
「アステロイド群に突入する。強速、赤5」
「強速赤5ヨーソロー」
桐原が復唱し、艦の速度が落ちる。しばらくすると、戦隊が停戦し始めた。
「レーダー、先行する『ゆきかぜ』の停船を確認しました!」
電探士から報告が上がると、間髪を入れず
「機関停止。前部スラスター最大出力。現宙域にて待機せよ。」
「機関停止!」
「前部スラスター最大出力!」
指示を受けて西村機関長と桐原が同時に復唱する。しばらくして、艦はその場で停止した。眼下では、我々の先遣隊と敵の本隊が交戦を開始した。…幸いにも、敵艦隊は輪形陣を組み、我々の先遣隊と砲火を交えていた。やがて、我々の本隊が鶴翼陣をしいて前進し、作戦通り包囲するために両翼の艦隊がさらに前進を始めると、輪形陣のそれぞれ左側と右側の艦隊がそれを押し留めようと本隊から離れた。
「『あまつかぜ』より発光信号!全艦小ワープ敢行。健闘を祈る」
通信士が「あまつかぜ」からの発光信号を読み取る。いよいよ俺たちの出番だ。小西は腹に力を入れて、声を高らに告げた。
「総員、ワープ準備!」
その刹那、艦内に再び警報が鳴り響き、桐原が指示を出し、阿部がそれに応える。つい先程までは艦橋内でも少しギクシャクした雰囲気が流れていたが、今は少しその雰囲気は和らいでいた。
「ワープ座標確認」
と桐原が支持すると、
「ワープ明け座標冥王星沖4800キロの空間点!座標軸固定する!」
と阿部が報告し、着実に準備を進める。
「クォークボイラー出力47%から83%まで上げ!」
「クォークボイラー出力83%!エンジン内圧上昇中!」
今度は桐原が西村機関長へ指示を出し、機関長は復唱しながら着実にこなしていく。エンジンの出力が上がるにつれ、やはり艦内にエンジンの心地よい振動が響く。そんな艦橋内を横目に見ながら、
「杉内!ワープアウト後は実体弾及び宇宙魚雷、VLSにて攻撃を行う。主砲に実体弾を装填しておけ!」
と指示を飛ばす。
「了解!全砲塔、実体弾装填!」
小西の指示を受け、それぞれの砲塔に指示を伝達する杉内。今の所は計画通りに進んでいる。何も問題はない。
「ワープ1分前!正面にワームホールを確認!」
桐原が報告する。目の前には禍々しいワームホールが大きな口を開けて我々が飛び込んでくるのを今か今かと待っていた。
「ワープ40秒前!メインエンジン出力最大!」
「メインエンジン出力最大!」
桐原が機関長にそう指示し、機関長がエンジンの出力を上げると、身体にかなりのGがかかっているのがわかった。押しつぶされまいと腹に力を入れた。
「ワープ20秒前!各自ベルト着用!」
艦内放送でそう呼びかけ、小西も艦長席のベルトをしっかりと締めた。
「カウントダウンに入ります。」
桐原が大声で報告し、すぐにカウントダウンが始まった。
「10、9、8、7、6、5、…!」
あと5秒でカウントダウンが終わり、ワープしようかと言う瞬間、阿部が悲鳴のように叫びながら報告を上げた。
「わ、ワームホールに異常な次元振動波を確認!今ワープしては…」
阿部からのその報告を全て聞き終わる前に、異常事態だということはすぐにわかった。いや、頭で理解する前に身体がすぐに反応していたのかもしれない。
「まずい!ワープ中…」
だが、5秒前の報告で簡単にワープが停止できるわけもなかった。艦は、異常な次元振動を発する漆黒のワームホールの中に突入していった。
「全艦に達する。こちらα部隊旗艦『ひゅうが』だ。これより演習を開始する。全艦戦闘計画に基づき行動を開始せよ。各員の奮励努力に期待する。以上」
この通信によって、演習の火蓋が切られた。小西は、戦闘計画に基づき号令をかける。
「進路008、第一戦速!」
「進路008、第一戦速ヨーソロー」
桐原が復唱すると、杉内と桐原はともにアイコンタクトをとり、杉内が砲雷科乗組員に号令をかける。
「総員、第一種戦闘配備につけ!砲雷撃戦用意!」
けたたましいサイレンが艦内に鳴り響き、艦内では乗組員がせわしなく走り回る。
「第一砲塔、準備よろし」
「第二砲塔、準備よろし」
「第三砲塔、準備よろし」
「艦首魚雷発射管、準備よろし」
「艦尾魚雷発射管、準備よろし」
「左舷魚雷発射管、準備よろし」
「右舷魚雷発射管、準備よろし」
「全対空砲塔、準備よろし」
杉内に、それぞれの部署から配置完了の報告が届く。全ての戦闘配置が終了したことを確認すると、
「総員、戦闘配備完了。」
と戦闘配置完了を報告した。…不安要素はないわけではないが、この艦ならいける。そう信じ、CIC内の正面の大型ディスプレイ群を睨みつけた。
しばらくすると、桐原から報告が入る。
「正面にアステロイド群多数!」
その報告を受け、戦闘計画を思い返しながら慎重に指示を飛ばす。
「アステロイド群に突入する。強速、赤5」
「強速赤5ヨーソロー」
桐原が復唱し、艦の速度が落ちる。しばらくすると、戦隊が停戦し始めた。
「レーダー、先行する『ゆきかぜ』の停船を確認しました!」
電探士から報告が上がると、間髪を入れず
「機関停止。前部スラスター最大出力。現宙域にて待機せよ。」
「機関停止!」
「前部スラスター最大出力!」
指示を受けて西村機関長と桐原が同時に復唱する。しばらくして、艦はその場で停止した。眼下では、我々の先遣隊と敵の本隊が交戦を開始した。…幸いにも、敵艦隊は輪形陣を組み、我々の先遣隊と砲火を交えていた。やがて、我々の本隊が鶴翼陣をしいて前進し、作戦通り包囲するために両翼の艦隊がさらに前進を始めると、輪形陣のそれぞれ左側と右側の艦隊がそれを押し留めようと本隊から離れた。
「『あまつかぜ』より発光信号!全艦小ワープ敢行。健闘を祈る」
通信士が「あまつかぜ」からの発光信号を読み取る。いよいよ俺たちの出番だ。小西は腹に力を入れて、声を高らに告げた。
「総員、ワープ準備!」
その刹那、艦内に再び警報が鳴り響き、桐原が指示を出し、阿部がそれに応える。つい先程までは艦橋内でも少しギクシャクした雰囲気が流れていたが、今は少しその雰囲気は和らいでいた。
「ワープ座標確認」
と桐原が支持すると、
「ワープ明け座標冥王星沖4800キロの空間点!座標軸固定する!」
と阿部が報告し、着実に準備を進める。
「クォークボイラー出力47%から83%まで上げ!」
「クォークボイラー出力83%!エンジン内圧上昇中!」
今度は桐原が西村機関長へ指示を出し、機関長は復唱しながら着実にこなしていく。エンジンの出力が上がるにつれ、やはり艦内にエンジンの心地よい振動が響く。そんな艦橋内を横目に見ながら、
「杉内!ワープアウト後は実体弾及び宇宙魚雷、VLSにて攻撃を行う。主砲に実体弾を装填しておけ!」
と指示を飛ばす。
「了解!全砲塔、実体弾装填!」
小西の指示を受け、それぞれの砲塔に指示を伝達する杉内。今の所は計画通りに進んでいる。何も問題はない。
「ワープ1分前!正面にワームホールを確認!」
桐原が報告する。目の前には禍々しいワームホールが大きな口を開けて我々が飛び込んでくるのを今か今かと待っていた。
「ワープ40秒前!メインエンジン出力最大!」
「メインエンジン出力最大!」
桐原が機関長にそう指示し、機関長がエンジンの出力を上げると、身体にかなりのGがかかっているのがわかった。押しつぶされまいと腹に力を入れた。
「ワープ20秒前!各自ベルト着用!」
艦内放送でそう呼びかけ、小西も艦長席のベルトをしっかりと締めた。
「カウントダウンに入ります。」
桐原が大声で報告し、すぐにカウントダウンが始まった。
「10、9、8、7、6、5、…!」
あと5秒でカウントダウンが終わり、ワープしようかと言う瞬間、阿部が悲鳴のように叫びながら報告を上げた。
「わ、ワームホールに異常な次元振動波を確認!今ワープしては…」
阿部からのその報告を全て聞き終わる前に、異常事態だということはすぐにわかった。いや、頭で理解する前に身体がすぐに反応していたのかもしれない。
「まずい!ワープ中…」
だが、5秒前の報告で簡単にワープが停止できるわけもなかった。艦は、異常な次元振動を発する漆黒のワームホールの中に突入していった。