今、目の前の女性…アリア女王と言ったか…は、地球から見てこの世界が異世界にあたる、と言った。なるほど、それなら恒星観測システムがアンノウンを示したのも理解できる。小西は、当初の予定通りの事を伝える事にした。
「実は、我々は我々が持つシステムにより、ここが地球とは別の空間であることは認識していました。…まさか、異世界だとは思いもよりませんでしたが。ですので、もとより地球へ帰ることは予定しておりませんでした。我々があなた方と接触した理由…それは、あなた方の世界を救う為です。」
そこまで言うと、女性の両横にいた男性が身を乗り出して、捲し立てた。
「この世界を救う、だと?今この世界がどうなっているのか貴様らは理解しているのか!」
「あのような強大な敵に対して対抗できる手段があるとでも言うのか!」
急に激昂した2人の男に女王は、
「あなた達、落ち着きなさい。…それでそこの。救うとはどういうことなの?」
と言ってきた。
「はい…ですがどういうことかを説明する前にお二方の質問にお答えしましょう。まず、この世界がどうなっているのか分かっているのか、についてですが、我々は先日偵察機を飛ばし、未知の艦艇や戦闘機があなた方の国の国民に攻撃を加えているところを目撃しました。そして、あなた方の防衛兵器が艦艇や戦闘機に対して有効打とならないことも。そして、強大な敵に対抗できる手段についてですが…あります。」
そこまで言うと、その2人は眉間に皺を寄せ、腕組みをして小西たち使者の話を聞き始めた。ここが正念場だ、そう思いつつ言葉を続ける。
「我々の艦『宇宙駆逐艦しまなみ』は先日、本艦に向かってきた艦艇を一隻、撃沈しました。その艦艇はあなた方に攻撃を加えていた艦と同じ種類でした。」
そこまで言うと、3人とも驚いた顔をして小西たちの方を見つめていた。さぁ、どうなる…そう思っていたところ、応接間の扉が勢いよく開いて、こう言った。
「報告!敵の接近を確認しました!」
そう兵士が言ったのを確認して、小西は3人に提案した。
「…どうでしょう…奴らの始末を我々に任せてもらえないでしょうか。」
そういうと、我々から見て右側の男が
「よかろう。君たちの実力を見せてみたまえ。よろしいですか、陛下。」
と言い、女性も
「ええ、構わないわ。私も、貴方達の実力を把握しておきたいし。」
と言い、了承が降りたので、小西は勢いよく椅子から立ち上がり、石原に
「手筈通りだ。俺は今から母艦に戻って指揮を執る。お前は女王陛下に付き従い、戦闘を観察できる場所で戦況の解説をして差し上げろ。」
と命じた。石原は敬礼して
「承知いたしました。ご武運を。」
と言ってきたので、
「応!任せろ!」
と言って部屋を飛び出した。小西は兵士に連れられて歩いた記憶を頼りに廊下を疾走し、エンジンを吹かした状態で待機していた内火艇に飛び乗った。そして勢いよく内火艇のレバーを押し倒しすと、内火艇は慣性で艦首がやや上を向きながら発進した。内火艇は波を切り裂いて猛進し、「しまなみ』の内火艇格納庫に滑り込んだ。そして、CICに駆け込むやいなや
「機関最大出力!敵艦隊迎撃に移る!砲雷撃戦用意!」
と指示を飛ばした。すると、いつでも準備できてましたと言わんばかりに、
「機関出力最大を確認!『しまなみ』発進!」
「主砲、VLS及び魚雷発射管全て準備完了!いつでもどうぞ!」
と桐原と杉内が返事した。用意周到だ。さすがだな。そう思いつつ、指示を続ける。
「上昇角34°、敵艦隊へ進路を取れ!第一戦速!」
「ヨーソロー!上昇角34°、第一戦速!敵艦隊へ進路を取ります!」
艦がかなりの急角度で黒く重苦しい曇空に向けて上昇を始める。小西はそれに耐えながら、電探士に詳細を尋ねる。
「電探士!敵艦隊艦種識別!」
「駆逐艦7、巡洋艦1!」
「敵艦隊との位置は?」
「本艦正面47000!本艦主砲の有効射程圏内です!」
それを聞いた瞬間、雲を切り裂いて進んでくる敵艦隊が見えた。それを見て小西は攻撃準備に移ることを決めた。
「よし、桐原!取舵15°!杉内!主砲全砲門敵艦隊へ指向!撃ち方用意!」
「ヨーソロー、取舵15°!」
「了!主砲1番、2番、3番、それぞれターゲット01、02、03、04へ照準合わせ!」
そうして、艦が少し曲がり、全ての砲門が敵艦をそれぞれ照準に収めた。
「全砲塔、測距照準よろし!」
そう杉内から報告が上がると、小西は人殺しになる覚悟を決めて、言った。
「主砲全砲門開け!撃て!」
そう言うと杉内が射撃管制のトリガーを引いた。刹那、艦に装備された4門の砲身から眩い螺旋状の束が敵艦に向けて猛進していった。そして、それらは敵艦の艦首を抉り、それぞれ4隻が爆沈した。
「敵艦4隻、撃沈を確認!」
そう電探士が言った。敵艦隊は急な攻撃に対処できなかったのか、敵艦隊の隊列が乱れた。その瞬間を小西は見逃さなかった。
「各砲塔、続いて05、06、07、08へ照準合わせ!照準合い、次第各砲塔順次射撃!撃ち方始め!」
と言った。すぐにコンマ数秒ほど間隔をつけてそれぞれの砲身から再びビームが飛び出し、敵艦を貫通し、撃沈した。
「敵艦4隻、全て撃沈。周囲に艦影認められず。」
再び電探士が着弾報告をする。そして、周囲にもう艦艇がいない事を告げた。それを聞いて
「敵艦隊、撃滅完了。対艦戦闘用具納め。」
と言い、小西は腕を組んで目を閉じた。…俺の指示で再びどれだけの人間が死んだのだろうか…そう思いながら。
再び東物見塔に行き、戦闘の様子を見ていたアリア達は驚愕していた。「しまなみ」とやらが水面から離れて、敵を全て破壊するまでの戦闘時間は僅か3分も満たなかった。恐ろしい程に強大な武力を持った「しまなみ」。…コイツさえあれば、私たちはこの戦いに勝利できるかもしれない…その思いでアリアの心は奮い立った。
「グスタフ、モンナグ。これは…」
そう言いながら2人を見ると、2人とも驚いて口をあんぐりと開けていた。
「こ…こんな事が…」
しばらくしてそう口を開いたのはグスタフであった。長らく戦場に立ってきたからこそ、これほど早く決着がついている事に驚いているのだ。そうこうして私たちが呆然としていると、「しまなみ」が再び着水し、内火艇が再び向かってくるのが見えた。それに気づいたもう1人の男…石原と言ったか、が
「艦長がお帰りになられるようです。一度応接間に戻られたらいかがでしょうか。」
と提案してきたので、それにアリアたちは無言で頷いて応接間へ歩を進めた。…あれほどのことが…そう驚きながら。
応接間に戻ると、まだ小西とやらはまだついていなかった。私は石原を先に座らせ、モンナグと共に小西を探しに行く事にした。王宮内をうろつきながら小西を探していると、中庭の噴水の前で屈み込んでいる小西を見つけた。何をしているのだろう。そう思いながら近づいていくと、彼は噴水に屈み込んでいた。それを見たモンナグが
「おい、貴様。女王陛下を待たせて何をしている。」
と問い詰める。すると彼は
「す、すいません。今すぐに行きます…」
と言い、よろめきながら立ち上がった。彼の表情は先ほどとは考えられないほど酷い顔をしていた。
「ちょ、ちょっと貴方!一体どうしたと言うの…?」
と心配して声をかけると、彼は
「いえ…本当に大丈夫ですから…」
と言い、私達と一緒に応接間へ向かった。応接間に戻り、彼が席につくと彼はその酷い顔をできるだけ私達に見せつけないようにしながら、再び提案をしてきた。
「…見て頂いた通り、本艦の武力があればこの土地を防衛する手助けになるでしょう。どうでしょう、我々にもこの国の防衛を手助けさせてもらえないでしょうか。」
それを聞いてグスタフは
「貴方がたの持つ能力は素晴らしい…某としては是非ともお願いしたいところではありますが、一つ、聞きたいことがあります。よろしいですかな?」
と目の前の2人に投げかけた。小西は
「ええ、構いません。どうされましたか。」
と返した。それを確認して、グスタフは
「なぜ、そこまでして我々に救いの手を差し伸べてくださるのですか?普通なら誰もそのようなことはしません。それは誰しも自分の命が惜しいからです。なぜ貴方がたは貴方がた自身の命を危険に晒して我々を助けようとしてくれるのですか?」
と質問した。それを聞いた小西は一呼吸おいて、答えた。
「それは我々が『人間としての至上命題』を大事にするからです。人の命が残虐な方法で消えていっている現状、我々はそのような事をさせない為に立ち上がる必要があると、考えました…。ですから、こうしてこの国を防衛する一翼を担わせてほしい…ということなんです。」
それを聞いたグスタフはさらに質問を続けた。
「しかし、防衛することでも敵方の命を奪っている事になりますが。」
自分でも整理がついていないところを突かれたであろう小西は
「それは…」
と言って黙ってしまった。それを見かねた私は
「グスタフ!そこまで問い詰める事はないでしょう…?」
と一旦この場を収めようとした。それを察したのか、
「これは女王陛下、失礼を致しました。」
と言い、口を閉じた。しばらく応接間に静寂な気まずい空気が流れた。やがて、私はその静寂を打ち破るように言った。
「兎にも角にも、貴方がたが私たちの味方をしてくれると言ってくれて本当に助かったわ。どうかしら、来週あたりに正式に私たちと防衛同盟を結んでくれないかしら。」
というと、小西は
「わかりました。」
と返した。
「それでは同盟の締結は…」
と確認してくる。それに対して少し考えた後
「そうね、明日の昼13時でどうかしら。」
と提案する。すると、小西は
「明日時刻1300、了解しました。参加者は我々2人とあとどのくらいの人を予定しておられますか?」
と訊ねる。それに
「そうね、貴方がたは何人くらいの人がいるの?」
と質問で返した。すると
「それについては船務長である私が。『しまなみ』乗組員はここにいる2人を含めて乗員合計270名です。」
と石原が返した。それに私たちは驚きを隠せなかった。
「270人…流石にその人数は謁見の間には入りきらないわね…」
そう言い、少し考えて言った。
「3分の1である90人で…どうかしら。90人なら謁見の間に入ると思うし、弱腰になっている大臣達に良いインパクトになると思うわ。グスタフ、モンナグ、これでどうかしら。」
と両名に確認を求める。
「そうですね…某は賛成でございます。」
とグスタフ。モンナグもそれに頷きながら
「私も賛成です。」
と言った。それを確認すると
「では決まりね。明日の午後13時、よろしく頼むわよ。」
と言った。それに対して小西は姿勢を正し、
「承知致しました。」
と返してきた。…私たちに強力な仲間が増えた…そう思い私は少し安堵の気持ちがあった。
「実は、我々は我々が持つシステムにより、ここが地球とは別の空間であることは認識していました。…まさか、異世界だとは思いもよりませんでしたが。ですので、もとより地球へ帰ることは予定しておりませんでした。我々があなた方と接触した理由…それは、あなた方の世界を救う為です。」
そこまで言うと、女性の両横にいた男性が身を乗り出して、捲し立てた。
「この世界を救う、だと?今この世界がどうなっているのか貴様らは理解しているのか!」
「あのような強大な敵に対して対抗できる手段があるとでも言うのか!」
急に激昂した2人の男に女王は、
「あなた達、落ち着きなさい。…それでそこの。救うとはどういうことなの?」
と言ってきた。
「はい…ですがどういうことかを説明する前にお二方の質問にお答えしましょう。まず、この世界がどうなっているのか分かっているのか、についてですが、我々は先日偵察機を飛ばし、未知の艦艇や戦闘機があなた方の国の国民に攻撃を加えているところを目撃しました。そして、あなた方の防衛兵器が艦艇や戦闘機に対して有効打とならないことも。そして、強大な敵に対抗できる手段についてですが…あります。」
そこまで言うと、その2人は眉間に皺を寄せ、腕組みをして小西たち使者の話を聞き始めた。ここが正念場だ、そう思いつつ言葉を続ける。
「我々の艦『宇宙駆逐艦しまなみ』は先日、本艦に向かってきた艦艇を一隻、撃沈しました。その艦艇はあなた方に攻撃を加えていた艦と同じ種類でした。」
そこまで言うと、3人とも驚いた顔をして小西たちの方を見つめていた。さぁ、どうなる…そう思っていたところ、応接間の扉が勢いよく開いて、こう言った。
「報告!敵の接近を確認しました!」
そう兵士が言ったのを確認して、小西は3人に提案した。
「…どうでしょう…奴らの始末を我々に任せてもらえないでしょうか。」
そういうと、我々から見て右側の男が
「よかろう。君たちの実力を見せてみたまえ。よろしいですか、陛下。」
と言い、女性も
「ええ、構わないわ。私も、貴方達の実力を把握しておきたいし。」
と言い、了承が降りたので、小西は勢いよく椅子から立ち上がり、石原に
「手筈通りだ。俺は今から母艦に戻って指揮を執る。お前は女王陛下に付き従い、戦闘を観察できる場所で戦況の解説をして差し上げろ。」
と命じた。石原は敬礼して
「承知いたしました。ご武運を。」
と言ってきたので、
「応!任せろ!」
と言って部屋を飛び出した。小西は兵士に連れられて歩いた記憶を頼りに廊下を疾走し、エンジンを吹かした状態で待機していた内火艇に飛び乗った。そして勢いよく内火艇のレバーを押し倒しすと、内火艇は慣性で艦首がやや上を向きながら発進した。内火艇は波を切り裂いて猛進し、「しまなみ』の内火艇格納庫に滑り込んだ。そして、CICに駆け込むやいなや
「機関最大出力!敵艦隊迎撃に移る!砲雷撃戦用意!」
と指示を飛ばした。すると、いつでも準備できてましたと言わんばかりに、
「機関出力最大を確認!『しまなみ』発進!」
「主砲、VLS及び魚雷発射管全て準備完了!いつでもどうぞ!」
と桐原と杉内が返事した。用意周到だ。さすがだな。そう思いつつ、指示を続ける。
「上昇角34°、敵艦隊へ進路を取れ!第一戦速!」
「ヨーソロー!上昇角34°、第一戦速!敵艦隊へ進路を取ります!」
艦がかなりの急角度で黒く重苦しい曇空に向けて上昇を始める。小西はそれに耐えながら、電探士に詳細を尋ねる。
「電探士!敵艦隊艦種識別!」
「駆逐艦7、巡洋艦1!」
「敵艦隊との位置は?」
「本艦正面47000!本艦主砲の有効射程圏内です!」
それを聞いた瞬間、雲を切り裂いて進んでくる敵艦隊が見えた。それを見て小西は攻撃準備に移ることを決めた。
「よし、桐原!取舵15°!杉内!主砲全砲門敵艦隊へ指向!撃ち方用意!」
「ヨーソロー、取舵15°!」
「了!主砲1番、2番、3番、それぞれターゲット01、02、03、04へ照準合わせ!」
そうして、艦が少し曲がり、全ての砲門が敵艦をそれぞれ照準に収めた。
「全砲塔、測距照準よろし!」
そう杉内から報告が上がると、小西は人殺しになる覚悟を決めて、言った。
「主砲全砲門開け!撃て!」
そう言うと杉内が射撃管制のトリガーを引いた。刹那、艦に装備された4門の砲身から眩い螺旋状の束が敵艦に向けて猛進していった。そして、それらは敵艦の艦首を抉り、それぞれ4隻が爆沈した。
「敵艦4隻、撃沈を確認!」
そう電探士が言った。敵艦隊は急な攻撃に対処できなかったのか、敵艦隊の隊列が乱れた。その瞬間を小西は見逃さなかった。
「各砲塔、続いて05、06、07、08へ照準合わせ!照準合い、次第各砲塔順次射撃!撃ち方始め!」
と言った。すぐにコンマ数秒ほど間隔をつけてそれぞれの砲身から再びビームが飛び出し、敵艦を貫通し、撃沈した。
「敵艦4隻、全て撃沈。周囲に艦影認められず。」
再び電探士が着弾報告をする。そして、周囲にもう艦艇がいない事を告げた。それを聞いて
「敵艦隊、撃滅完了。対艦戦闘用具納め。」
と言い、小西は腕を組んで目を閉じた。…俺の指示で再びどれだけの人間が死んだのだろうか…そう思いながら。
再び東物見塔に行き、戦闘の様子を見ていたアリア達は驚愕していた。「しまなみ」とやらが水面から離れて、敵を全て破壊するまでの戦闘時間は僅か3分も満たなかった。恐ろしい程に強大な武力を持った「しまなみ」。…コイツさえあれば、私たちはこの戦いに勝利できるかもしれない…その思いでアリアの心は奮い立った。
「グスタフ、モンナグ。これは…」
そう言いながら2人を見ると、2人とも驚いて口をあんぐりと開けていた。
「こ…こんな事が…」
しばらくしてそう口を開いたのはグスタフであった。長らく戦場に立ってきたからこそ、これほど早く決着がついている事に驚いているのだ。そうこうして私たちが呆然としていると、「しまなみ」が再び着水し、内火艇が再び向かってくるのが見えた。それに気づいたもう1人の男…石原と言ったか、が
「艦長がお帰りになられるようです。一度応接間に戻られたらいかがでしょうか。」
と提案してきたので、それにアリアたちは無言で頷いて応接間へ歩を進めた。…あれほどのことが…そう驚きながら。
応接間に戻ると、まだ小西とやらはまだついていなかった。私は石原を先に座らせ、モンナグと共に小西を探しに行く事にした。王宮内をうろつきながら小西を探していると、中庭の噴水の前で屈み込んでいる小西を見つけた。何をしているのだろう。そう思いながら近づいていくと、彼は噴水に屈み込んでいた。それを見たモンナグが
「おい、貴様。女王陛下を待たせて何をしている。」
と問い詰める。すると彼は
「す、すいません。今すぐに行きます…」
と言い、よろめきながら立ち上がった。彼の表情は先ほどとは考えられないほど酷い顔をしていた。
「ちょ、ちょっと貴方!一体どうしたと言うの…?」
と心配して声をかけると、彼は
「いえ…本当に大丈夫ですから…」
と言い、私達と一緒に応接間へ向かった。応接間に戻り、彼が席につくと彼はその酷い顔をできるだけ私達に見せつけないようにしながら、再び提案をしてきた。
「…見て頂いた通り、本艦の武力があればこの土地を防衛する手助けになるでしょう。どうでしょう、我々にもこの国の防衛を手助けさせてもらえないでしょうか。」
それを聞いてグスタフは
「貴方がたの持つ能力は素晴らしい…某としては是非ともお願いしたいところではありますが、一つ、聞きたいことがあります。よろしいですかな?」
と目の前の2人に投げかけた。小西は
「ええ、構いません。どうされましたか。」
と返した。それを確認して、グスタフは
「なぜ、そこまでして我々に救いの手を差し伸べてくださるのですか?普通なら誰もそのようなことはしません。それは誰しも自分の命が惜しいからです。なぜ貴方がたは貴方がた自身の命を危険に晒して我々を助けようとしてくれるのですか?」
と質問した。それを聞いた小西は一呼吸おいて、答えた。
「それは我々が『人間としての至上命題』を大事にするからです。人の命が残虐な方法で消えていっている現状、我々はそのような事をさせない為に立ち上がる必要があると、考えました…。ですから、こうしてこの国を防衛する一翼を担わせてほしい…ということなんです。」
それを聞いたグスタフはさらに質問を続けた。
「しかし、防衛することでも敵方の命を奪っている事になりますが。」
自分でも整理がついていないところを突かれたであろう小西は
「それは…」
と言って黙ってしまった。それを見かねた私は
「グスタフ!そこまで問い詰める事はないでしょう…?」
と一旦この場を収めようとした。それを察したのか、
「これは女王陛下、失礼を致しました。」
と言い、口を閉じた。しばらく応接間に静寂な気まずい空気が流れた。やがて、私はその静寂を打ち破るように言った。
「兎にも角にも、貴方がたが私たちの味方をしてくれると言ってくれて本当に助かったわ。どうかしら、来週あたりに正式に私たちと防衛同盟を結んでくれないかしら。」
というと、小西は
「わかりました。」
と返した。
「それでは同盟の締結は…」
と確認してくる。それに対して少し考えた後
「そうね、明日の昼13時でどうかしら。」
と提案する。すると、小西は
「明日時刻1300、了解しました。参加者は我々2人とあとどのくらいの人を予定しておられますか?」
と訊ねる。それに
「そうね、貴方がたは何人くらいの人がいるの?」
と質問で返した。すると
「それについては船務長である私が。『しまなみ』乗組員はここにいる2人を含めて乗員合計270名です。」
と石原が返した。それに私たちは驚きを隠せなかった。
「270人…流石にその人数は謁見の間には入りきらないわね…」
そう言い、少し考えて言った。
「3分の1である90人で…どうかしら。90人なら謁見の間に入ると思うし、弱腰になっている大臣達に良いインパクトになると思うわ。グスタフ、モンナグ、これでどうかしら。」
と両名に確認を求める。
「そうですね…某は賛成でございます。」
とグスタフ。モンナグもそれに頷きながら
「私も賛成です。」
と言った。それを確認すると
「では決まりね。明日の午後13時、よろしく頼むわよ。」
と言った。それに対して小西は姿勢を正し、
「承知致しました。」
と返してきた。…私たちに強力な仲間が増えた…そう思い私は少し安堵の気持ちがあった。