「そうそう聞いたわよケースケ、毎日アイセルと仲良く一緒に寝てるんですって?」

「あ、こらアイセル、しゃべったのか」

「実はその、ここに来る寸前でシャーリーさんと鉢合わせてしまいまして、それで……」

「根掘り葉掘り問いただされたんだな……」

「すみません。しかもちょっとだけしゃべり過ぎちゃったと言いますか……」

 つまり俺が性的興奮を極めて感じにくい状態にあることまで、ガッツリしゃべらされたってわけか。
 でもまぁ、一緒に寝てるのに「何もない」理由は当然問いただされるわな。
 仕方ないと言えば仕方ない。

「まぁそれはいいよ。シャーリーは相手の本音を引き出すのが上手いしな」

 駆け引きとか会話の持って行き方が実に巧みなんだよな。
 話の方向性を常にコントロールしてるっていうか。

「あらケースケ。別にやましいことはしてないんでしょう?」

「もちろんなにもしてないよ。というかできないと言った方が正しいけど」

「じゃ、問題ないわよね。そういうわけで今日からはアタシもケースケと一緒に寝るからよろしくね」

「いやいやよろしくないから、全然ちっともよろしくないから」

「どうしてよ?」

「どうしてってお前、いい年した男女が一緒に寝るとか普通はしないだろ」

「いい年したアイセルとは一緒に寝てるじゃない」

「アイセルとは……まぁ色々あったからいいんだよ」

「じゃあアタシともいいわよね、元勇者パーティでいろいろあったんだし」

「『いろいろ』の方向性がちょい違うというか……」

「どう違うのかしら?」

「いろいろは……いろいろだよ」

「ふぅん」

 アイセルのことだから、俺が強引に押し倒されてしまったという俺の名誉に直結するようなことは、最後まで口を割らなかったに違いない。

 そのはずだ。
 そうと信じたい……信じていいよね?

「それに一緒に寝るって言ってもほんとふしだらな目的ではなくて、アイセルには身体というより心を癒してもらってる的な……」

 俺がなんと説得したらよいものかと頭を巡らせていると、

「シャーリーさんと3人で寝るのはダメでしょうか?」

 一番反対しそうなはずのアイセルまでそう言ってくるんだよ。

 っていうかなんでこの2人は、今日会ったばかりなのにこんなに仲がいいのかな?
 なんとなく、2対1で包囲されてるような気がしなくもないというか。
 なんとなくだけど。

「でも3人で一緒に寝るってのは外聞も悪いだろ?」

「宿に泊まってるならいざ知らず、個人の屋敷の中で何をしても外には漏れないわよ」

「それにケースケ様の心の病を治すには、シャーリーさんの協力もあった方がいいと思うんです」

「まぁ、それはそうかもだけど」

 絶世の美女でスタイル抜群のシャーリー。
 美人で可愛く懐いてくれているアイセル。

 1人よりも2人のほうが、俺の性的不能が改善されやすいであろうことは想像に難くない。

「ケースケ様、御決断を」

「ケースケ、アタシそろそろ眠いのよね。夜更かしはお肌に悪いんだから」

 2人がかりで説得された俺は、

「そこまで言うならまぁ……」

 ついには提案を受け入れてしまったのだった。

 本来一番怒りそうなはずのアイセルがいいって言うんだから、いいよね?

「じゃあ決まりね、幸いベッドが大きいから3人で寝ても狭くはなさそうだし。夜も遅いしさっさと寝ましょうか」

 というわけで。
 俺はなし崩し的にアイセル&シャーリーと一緒に寝ることになってしまったのだった。

 …………
 ……

「シャーリー、ちょっとくっつきすぎじゃないか?」

「そう? アイセルと同じくらいだと思うけど?」

「いやその、シャーリーは身体つきもいいし、ほとんど裸だから同じくらいの距離でも密着度合が半端ないというか……」

「どうせならちょっと触ってみる?」

「さすがにそれは……」

「け、ケースケ様! それでしたらわたしのもどうぞです! 準備は万端ですので!」

「どうぞじゃないからな? 少し冷静になろうな?」

「じゃあ両方触ればいいんじゃない?」

「それはいいかもですね! ナイスアイデアです!」

「ああもうはい! 今日はもう遅いしさっさと寝よう! おやすみ!」

 俺は強引に話を打ち切ると、ぎゅっと目をつぶったのだった。

 とりあえず寝てしまおう。
 話はそれからだ!