「実はね、今アタシお見合いさせられそうになってるのよ」
「お見合い? シャーリーがか?」
「お父さんがそろそろ孫の顔を見たいって、顔合わせるたびに言ってきてうるさいのよね。それでお見合いを断る口実として、ケースケを彼氏としてお父さんに紹介したいのよ」
「なんだそういうことかよ。なら先にそう言ってくれよな、紛らわしいぞ。ビックリするだろ」
これはいわゆるニセ彼氏ってやつだな。
女性向けの演劇なんかで、最近そういう恋愛ものが流行ってるとかなんとか聞いたことがあった。
パーティの円滑な運営のために、様々な情報を日々細やかに拾い上げている俺である。
ってなわけでネタ晴らしを聞いた俺は心底ホッとしていた。
アイセルも露骨にホッとしていた。
やれやれまったく人騒がせなやつだなシャーリーは。
でも意図が分かって一安心――、
「でもアタシがケースケのことを好きなのは本当よ?」
――しかけたところで、シャーリーの口からはさらにとんでもない発言が飛び出した。
「えっ!?」
「えっ、て」
「いやだって、いきなりシャーリーに好きとか言われても俺も反応に困るっていうか。それに冗談はよしてくれって言っただろ?」
俺は苦笑しながらさらっと流そうとしたんだけど――、
「急にって……もしかしてケースケって、アタシの好意に今までまったく気付いてなかったの?」
シャーリーってば真顔でそんなことを言ってくるんだよ。
「シャーリーの好意? 俺に対して? えっと、そんなのあったっけか? 特に記憶にないんだけど……」
俺は一緒に勇者パーティをやってた頃のことをあれこれ思い出してみたんだけど、あいにくとそんな記憶はゼロだった。
というか俺ってアンジュ以外の女の子にはまったく興味なかったから、気付く気付かない以前の問題だったというか。
「はぁ……本当に気付いてなかったのね。でもそうよね、ケースケはそういうやつだったもんね。あーあ、あんなに好き好きアピールしてたのに全く伝わってなかっただなんて」
「なぁシャーリー。一応確認なんだけどさ」
「なにかしら?」
「さっきからシャーリーの話を聞いてるとさ、まるで昔のシャーリーが俺のことを好きだったみたいに聞こえるんだけど」
「違うわよ」
「だよな! 悪い、俺の勘違いだったみたいだ。今の痛すぎる発言は忘れてくれ」
まったく俺ってやつは何をアホなこと言ってんだ――、
「そう言う意味じゃないわよ。好き『だった』って過去形じゃなくて、今も変わらずケースケのことが好きってこと」
「……はい? え? ええっ、今も俺のことが好き? シャーリーが!? マジで!?」
「なんでそんなに驚くのよ……ま、当時のケースケはアタシを異性としてなんて全然見てなかったもんね、それも仕方ないか」
「えーと……これってマジでマジな話なのか?」
「本当に本当の話ね」
「シャーリーみたいな超絶美人に好きって言われた俺の反応を見て、からかって楽しもうとしてたりとか?」
「あら、ケースケに超絶美人だと思われてたなんて嬉しいわ、ありがとう。でも残念ながらアタシは、そんな程度の低いイタズラをして喜んだりはしないわよ」
「だ、だよな。シャーリーは人を馬鹿にして笑うようなタイプじゃないもんな。でもそうか、そうだったのか……その、色々分かってなかったみたいでごめん。正直、今初めてそれを知ったんだ」
「そうみたいね。やれやれだわ」
シャーリーが脱力するように言うと、何ともいえない気まずい沈黙が場を支配した。
これ以上なく俺のせいである。
そんな、どうにも口を開きにくい空気を打ち破ってくれたのはやはり、空気を読まないことに定評のあるサクラだった。
「お見合い? シャーリーがか?」
「お父さんがそろそろ孫の顔を見たいって、顔合わせるたびに言ってきてうるさいのよね。それでお見合いを断る口実として、ケースケを彼氏としてお父さんに紹介したいのよ」
「なんだそういうことかよ。なら先にそう言ってくれよな、紛らわしいぞ。ビックリするだろ」
これはいわゆるニセ彼氏ってやつだな。
女性向けの演劇なんかで、最近そういう恋愛ものが流行ってるとかなんとか聞いたことがあった。
パーティの円滑な運営のために、様々な情報を日々細やかに拾い上げている俺である。
ってなわけでネタ晴らしを聞いた俺は心底ホッとしていた。
アイセルも露骨にホッとしていた。
やれやれまったく人騒がせなやつだなシャーリーは。
でも意図が分かって一安心――、
「でもアタシがケースケのことを好きなのは本当よ?」
――しかけたところで、シャーリーの口からはさらにとんでもない発言が飛び出した。
「えっ!?」
「えっ、て」
「いやだって、いきなりシャーリーに好きとか言われても俺も反応に困るっていうか。それに冗談はよしてくれって言っただろ?」
俺は苦笑しながらさらっと流そうとしたんだけど――、
「急にって……もしかしてケースケって、アタシの好意に今までまったく気付いてなかったの?」
シャーリーってば真顔でそんなことを言ってくるんだよ。
「シャーリーの好意? 俺に対して? えっと、そんなのあったっけか? 特に記憶にないんだけど……」
俺は一緒に勇者パーティをやってた頃のことをあれこれ思い出してみたんだけど、あいにくとそんな記憶はゼロだった。
というか俺ってアンジュ以外の女の子にはまったく興味なかったから、気付く気付かない以前の問題だったというか。
「はぁ……本当に気付いてなかったのね。でもそうよね、ケースケはそういうやつだったもんね。あーあ、あんなに好き好きアピールしてたのに全く伝わってなかっただなんて」
「なぁシャーリー。一応確認なんだけどさ」
「なにかしら?」
「さっきからシャーリーの話を聞いてるとさ、まるで昔のシャーリーが俺のことを好きだったみたいに聞こえるんだけど」
「違うわよ」
「だよな! 悪い、俺の勘違いだったみたいだ。今の痛すぎる発言は忘れてくれ」
まったく俺ってやつは何をアホなこと言ってんだ――、
「そう言う意味じゃないわよ。好き『だった』って過去形じゃなくて、今も変わらずケースケのことが好きってこと」
「……はい? え? ええっ、今も俺のことが好き? シャーリーが!? マジで!?」
「なんでそんなに驚くのよ……ま、当時のケースケはアタシを異性としてなんて全然見てなかったもんね、それも仕方ないか」
「えーと……これってマジでマジな話なのか?」
「本当に本当の話ね」
「シャーリーみたいな超絶美人に好きって言われた俺の反応を見て、からかって楽しもうとしてたりとか?」
「あら、ケースケに超絶美人だと思われてたなんて嬉しいわ、ありがとう。でも残念ながらアタシは、そんな程度の低いイタズラをして喜んだりはしないわよ」
「だ、だよな。シャーリーは人を馬鹿にして笑うようなタイプじゃないもんな。でもそうか、そうだったのか……その、色々分かってなかったみたいでごめん。正直、今初めてそれを知ったんだ」
「そうみたいね。やれやれだわ」
シャーリーが脱力するように言うと、何ともいえない気まずい沈黙が場を支配した。
これ以上なく俺のせいである。
そんな、どうにも口を開きにくい空気を打ち破ってくれたのはやはり、空気を読まないことに定評のあるサクラだった。