「なんだあれ……? なぁサクラ、キング・オー・ランタンの頭をくりぬいた中に色が違う部分があるだろ、あれ見えるか?」
年とともに視力がやや低下し始めた俺の目では、闇夜の中で激しく戦う様子を細部まではとても確認できないので、代わりにサクラに見てもらう。
「えっと、どれどれ……? あ、ほんとだ。うーんと、あれはジャック・オー・ランタンかな? 色違いの赤っぽい色をしたジャック・オー・ランタンが中に1匹いるみたい」
「ジャック・オー・ランタンが中にいるのか?」
「うん、間違いないし!」
「合体した他のジャック・オー・ランタンは形を残してないのに、あの1体だけ元の個体の形を残してる……?」
しかも色が違うときた。
その瞬間、俺の脳裏にピキーンと直感が走った。
「あいつがキング・オー・ランタンの大元だ! あいつがコアになって、知性を持たない他のジャック・オー・ランタンたちをいいように操ってるんだ。だからあいつを倒せばキング・オー・ランタンを倒せるはずだ――!」
「ふんふん、あいつが黒幕ってわけね! あれ、でもでもさっきアイセルさんに真っ二つにされた時に一緒にやられなかったのかな?」
「避けたんだろうな。自分さえ無事ならいくらでも他のジャック・オー・ランタンを呼んで回復できるから、逃げ足だけは相当速いのかもしれない」
「じゃあ不意打ちで一発で仕留めたいところだね」
「ってなわけでサクラ、お前の出番だ」
「私? でも通常物理攻撃はゴーストには効かないんでしょ?」
「通常物理攻撃はな。でもサクラはバーサーカーだ。バーサーカーの力の源は怒りの精霊『フラストレ』だろ?」
「……あ! 精霊とゴーストは近い存在だから、バーサーカーの私ならゴーストに攻撃できるってこと?」
「怒りの精霊『フラストレ』の力を少しだけ暴走させれば、精霊攻撃としてダメージを与えられるようになるはずだ」
「なにそれなにそれ! じゃあ私も戦えるってことじゃん! ケイスケの嘘つき! 私は戦えないって言ったくせに!」
「怒りの精霊『フラストレ』の力を故意に暴走させないといけないからな、今のサクラにやらせるには危ないと思ったんだよ」
「ぶぅ、それはまぁ納得だけど……でも教えてくれてもいいし……」
「だってサクラは教えたら絶対に試そうとするだろ?」
「それはまぁそうかもだけど」
どうやら図星だったみたいだな。
まったく、あらかじめ教えてなくて大正解だよ。
「でも今はそうも言ってられないからな。それに切り札は最後まで取っておくもんだろ?」
「切り札……私が?」
「そうだ、今この瞬間はサクラが切り札だ。それでどうだ? やれそうか?」
「そんなのやってみないと分かんない。やったことないんだもん」
「だよな」
俺は決断しなければならなかった。
逃げるか、それともサクラに勝利の望みを託すか。
アイセルの疲労が限界に達する前に、メンバーの命を預かるパーティのリーダーとして俺は重大な決断を下さないといけない――、
「はぁぁぁぁぁぁっっ!!」
「って、おいサクラ何やってんだ!?」
なぜか急にサクラが気合いを入れ始めていた。
しかも瞳の色が猛烈なほどに赤く染まっている。
怒りの精霊『フラストレ』の影響力がサクラの中で激しく高まっている証拠だった。
「お前まさか怒りの精霊『フラストレ』を暴走させようとしてるんじゃ――」
「やってみないと分かんないなら、やっぱりやってみないと分かんないでしょ! ああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
サクラが吠え猛るとともに、その瞳が完全に真紅に染まる――!
「ちょ、待てってサクラ! 今ここで暴走させてコントロールを失ったら、俺間違いなく巻き込まれて死ぬからな!?」
「死なさないわよ、あんま私を舐めないでよね! 私だってパーティ『アルケイン』の正式メンバーなんだから! うおりゃぁぁぁぁぁっっ!!」
「おおっ!?」
なんとサクラは暴走しきる寸前も寸前、ギリギリのギリギリでかろうじて怒りの精霊『フラストレ』の力をコントロールすることに成功していた。
「どんなもんよ!」
もちろん長くはもたないだろう。
でも今はそれで十分だ――!
サクラはバトルアックスを思いっきり振り被ると、キング・オー・ランタンに向かって全力でぶん投げた。
ちょうどアイセルがバックステップして間合いをとった絶妙のタイミングだ。
バーサーカーのフルパワーで投擲されたバトルアックスは、大気の壁をぶち破ってソニックブームをまき散らしながら超高速で飛翔すると、カボチャ頭を軽々と貫通して中にいた赤い色違いのジャック・オー・ランタンに突き刺さった――!
「よし、攻撃が届いた!」
しかもどう見てもクリティカルヒット、直撃だ!
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーーーーーーーーーーーーーーーーッ………………』
糸が切れたようにピタッと動きを止めたキング・オー・ランタンの断末魔の悲鳴が闇夜に響きわたった。
同時に巨大なカボチャ姿が夜の闇に溶けるように急激に存在感を失っていく。
バトルアックスが刺さってから、跡形もなく消え去るのにわずか10秒ほど。
あっけないほど簡単に世界は静寂を取り戻し、俺たちはキング・オー・ランタンとの戦いに勝利したのだった。
年とともに視力がやや低下し始めた俺の目では、闇夜の中で激しく戦う様子を細部まではとても確認できないので、代わりにサクラに見てもらう。
「えっと、どれどれ……? あ、ほんとだ。うーんと、あれはジャック・オー・ランタンかな? 色違いの赤っぽい色をしたジャック・オー・ランタンが中に1匹いるみたい」
「ジャック・オー・ランタンが中にいるのか?」
「うん、間違いないし!」
「合体した他のジャック・オー・ランタンは形を残してないのに、あの1体だけ元の個体の形を残してる……?」
しかも色が違うときた。
その瞬間、俺の脳裏にピキーンと直感が走った。
「あいつがキング・オー・ランタンの大元だ! あいつがコアになって、知性を持たない他のジャック・オー・ランタンたちをいいように操ってるんだ。だからあいつを倒せばキング・オー・ランタンを倒せるはずだ――!」
「ふんふん、あいつが黒幕ってわけね! あれ、でもでもさっきアイセルさんに真っ二つにされた時に一緒にやられなかったのかな?」
「避けたんだろうな。自分さえ無事ならいくらでも他のジャック・オー・ランタンを呼んで回復できるから、逃げ足だけは相当速いのかもしれない」
「じゃあ不意打ちで一発で仕留めたいところだね」
「ってなわけでサクラ、お前の出番だ」
「私? でも通常物理攻撃はゴーストには効かないんでしょ?」
「通常物理攻撃はな。でもサクラはバーサーカーだ。バーサーカーの力の源は怒りの精霊『フラストレ』だろ?」
「……あ! 精霊とゴーストは近い存在だから、バーサーカーの私ならゴーストに攻撃できるってこと?」
「怒りの精霊『フラストレ』の力を少しだけ暴走させれば、精霊攻撃としてダメージを与えられるようになるはずだ」
「なにそれなにそれ! じゃあ私も戦えるってことじゃん! ケイスケの嘘つき! 私は戦えないって言ったくせに!」
「怒りの精霊『フラストレ』の力を故意に暴走させないといけないからな、今のサクラにやらせるには危ないと思ったんだよ」
「ぶぅ、それはまぁ納得だけど……でも教えてくれてもいいし……」
「だってサクラは教えたら絶対に試そうとするだろ?」
「それはまぁそうかもだけど」
どうやら図星だったみたいだな。
まったく、あらかじめ教えてなくて大正解だよ。
「でも今はそうも言ってられないからな。それに切り札は最後まで取っておくもんだろ?」
「切り札……私が?」
「そうだ、今この瞬間はサクラが切り札だ。それでどうだ? やれそうか?」
「そんなのやってみないと分かんない。やったことないんだもん」
「だよな」
俺は決断しなければならなかった。
逃げるか、それともサクラに勝利の望みを託すか。
アイセルの疲労が限界に達する前に、メンバーの命を預かるパーティのリーダーとして俺は重大な決断を下さないといけない――、
「はぁぁぁぁぁぁっっ!!」
「って、おいサクラ何やってんだ!?」
なぜか急にサクラが気合いを入れ始めていた。
しかも瞳の色が猛烈なほどに赤く染まっている。
怒りの精霊『フラストレ』の影響力がサクラの中で激しく高まっている証拠だった。
「お前まさか怒りの精霊『フラストレ』を暴走させようとしてるんじゃ――」
「やってみないと分かんないなら、やっぱりやってみないと分かんないでしょ! ああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
サクラが吠え猛るとともに、その瞳が完全に真紅に染まる――!
「ちょ、待てってサクラ! 今ここで暴走させてコントロールを失ったら、俺間違いなく巻き込まれて死ぬからな!?」
「死なさないわよ、あんま私を舐めないでよね! 私だってパーティ『アルケイン』の正式メンバーなんだから! うおりゃぁぁぁぁぁっっ!!」
「おおっ!?」
なんとサクラは暴走しきる寸前も寸前、ギリギリのギリギリでかろうじて怒りの精霊『フラストレ』の力をコントロールすることに成功していた。
「どんなもんよ!」
もちろん長くはもたないだろう。
でも今はそれで十分だ――!
サクラはバトルアックスを思いっきり振り被ると、キング・オー・ランタンに向かって全力でぶん投げた。
ちょうどアイセルがバックステップして間合いをとった絶妙のタイミングだ。
バーサーカーのフルパワーで投擲されたバトルアックスは、大気の壁をぶち破ってソニックブームをまき散らしながら超高速で飛翔すると、カボチャ頭を軽々と貫通して中にいた赤い色違いのジャック・オー・ランタンに突き刺さった――!
「よし、攻撃が届いた!」
しかもどう見てもクリティカルヒット、直撃だ!
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーーーーーーーーーーーーーーーーッ………………』
糸が切れたようにピタッと動きを止めたキング・オー・ランタンの断末魔の悲鳴が闇夜に響きわたった。
同時に巨大なカボチャ姿が夜の闇に溶けるように急激に存在感を失っていく。
バトルアックスが刺さってから、跡形もなく消え去るのにわずか10秒ほど。
あっけないほど簡単に世界は静寂を取り戻し、俺たちはキング・オー・ランタンとの戦いに勝利したのだった。