「ケースケ様、もう一度やってみます!」

 またたく間に完全復活してしまったキング・オー・ランタンに、アイセルが再び突っこんでいく。

『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』

 アイセルを迎え撃つようにキング・オー・ランタンが奇声をあげると、さっきまでよりもさらに強力な大爆風が巻き起こった。

「そんなもの! 威力が少々増した程度では、ケースケ様の剣たるわたしは倒せませんよ! ハァッ!!」

 しかしアイセルは大爆風をも強引に斬り裂くと、さっきと同じようにキング・オー・ランタンに肉薄した。

 いや、さっきとは決定的に違う点があった。
 既に魔法剣は鞘に納刀されていて、アイセルの身体から猛烈なオーラが立ち昇っていく!

「全力集中!」

 圧縮した剣気を鞘に貯めて一気に解き放つアイセルの必殺技が、満を持して放たれた。

「剣気解放――! 『《紫電一閃(しでんいっせん)》』――!」

 剣気をまとった青白い刃が闇夜に鋭く煌めいたかと思うと、抜刀からの横薙ぎ一閃でキング・オー・ランタンは上下真っ二つになっていた。

「すごっ……!」
 サクラの口から驚嘆の声が漏れ出でる。

「ああ、すごいな」

 剣術は冒険者に必要な最低限をかじった程度の、ほぼ素人と言ってもいい俺が見てもすぐ分かるほどに、精度と威力が格段に向上した文字通り必殺の一撃だった。

 しかし――。

『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!! ホアーッ!! ホアーッ!!』

 奇声とともにまたもやジャック・オー・ランタンが湧き出てくると、キング・オー・ランタンはそれらを吸収して元通りに復活してしまったのだ。

「くっ――!」

 必殺の《紫電一閃(しでんいっせん)》でも仕留めきれなかったからか、珍しくアイセルが悔しそうな声を漏らした。

 しかも少し息が上がってる?
 肩で息をしているじゃないか。

 アイセルはすぐに冷静な顔に戻って戦闘を継続しているものの、くそっ、このまま一方的に疲労を貯めさせられるのはまずいな。

「ちょっとケイスケどうするのよ!? 何回やっても無限に復活されちゃうよ!? 大ピンチだよ!?」

「分かってる。でも悪いんだけど、頭を整理するから静かにしててくれないかな?」

「う、うん、黙ってる」

 サクラが空気を読んで静かになった。
 ウザ絡みには定評のあるサクラもその実、大事なところではちゃんと空気が読める子なのだ。

 俺は大きく深呼吸をして焦る気持ちを追いやると、頭をフル回転させ始めた。

 ジャック・オー・ランタンが他にどれだけいるかは知らないが、さすがに無限ってことはないはずだ。
 だからジャック・オー・ランタンの補充が尽きれば、キング・オー・ランタンの回復はそこで打ち止めになるに違いない。

 でももし、まだまだたくさんのジャック・オー・ランタンがいるとしたら?
 実質無限に回復されるに等しくなってしまう。

 逆にアイセルは戦いが延々と長引けば長引くほど、どんどんと疲れが溜まっていくわけで。
 倒しても倒しても復活されて打つ手がない状況は、いかにメンタルが安定しているアイセルと言えども精神的に苦しいだろう。
 
 長期戦はまずかった。

「ケイスケ、これもう逃げないとやばくない?」

 我慢できなかったのか、静かにして欲しいと言ったにもかかわらずサクラが話しかけてくる。

「そうだな、もしもの時は逃げることも考えておいてくれ。その時は元気なサクラの出番だからな。でもまずは打開策を見つけようと思うんだ」

 倒しても倒してもすぐに復活してしまう。
 いくらゴーストとはいえ、そんなことがあり得るのか?

 なにかカラクリがあるはずだ。

 そもそもジャック・オー・ランタンは無害なゴーストなんだ。
 なのに合体して新種のキング・オー・ランタンとなって人を襲う。

 なぜ合体した?
 なぜ襲う?

 ジャック・オー・ランタンは高度な知性は持っていない。
 ということはだ、

「ジャック・オー・ランタンとは別に、知性を持った存在がいる?」

 例えば合体を命令した特殊な個体、司令塔のようなジャック・オー・ランタンがいるんじゃないのか?

 戦況を見守りながら俺が頭をフル回転させていると、ふとキング・オー・ランタンの巨大カボチャのくりぬかれた中に、小さな色の違う場所がポツンとあるのが目についた。