「アイセル、手始めに何体かジャック・オー・ランタンを攻撃してみてくれ」
「了解です。スキル『剣気帯刃・オーラブレード』!」
アイセルの声と共に、魔法剣がどこか幻想的な青白い光で覆われた。
「うわっ、綺麗……いいなぁ」
俺の隣で見守っていたサクラが思わずって感じで呟く。
普段はことあるごとに俺にウザ絡みしてくるけど、なんだかんだでサクラも年頃の女の子なんだよな。
綺麗なものが好きだし憧れもするんだろう。
しかし『剣気帯刃・オーラブレード』はただ綺麗なだけのしょっぱいスキルではない。
実態を持たない敵にもダメージを与えられる、ハイクラスのスキルなのだ。
それを証明するかのように、
「てりゃぁ!」
アイセルが『剣気帯刃・オーラブレード』で強化した魔法剣をふるうたびに1体、また1体とジャック・オー・ランタンが倒され消えていく。
「なんだぁ、ジャック・オー・ランタンって全然大したことないじゃん?」
それを見たサクラが拍子抜けしたように言った。
「ジャック・オー・ランタンはわざわざ討伐に行くのもアホらしいくらいに、本来は無害なゴーストなんだよ」
「ふーん。じゃ、このまま何事もなく終わればいいのにね」
「そうだな、そうなるといいな」
俺はそう答えながらも、内心ではこのまま終わるはずがないという確信のような思いを抱いていた。
なにせこれは南部諸国連合の最高意思決定機関である評議会から依頼された、Sランクの指名討伐クエストなのだ。
勇者パーティ時代に受けたSランククエストは、どれもこれもが難しいクエストばかりだった。
だから今回のクエストもこのまま簡単に終わるはずがない。
そして悪い予感はやはり現実のものとなった。
異変が起こったのはアイセルが10体目のジャック・オー・ランタンを倒した時だった。
「動きが変わった? 1か所に集まりだしたような……」
アイセルの見立て通りそれまでふよふよ漂ってはいいようにやられていたジャック・オー・ランタンたちが、一つの場所に次々と集まって密集し始めたのだ。
そしてそれはどんどんと数を増していく。
「なにか」が起ころうとしていた。
「アイセル、いったん下がれ! 明らかに様子がおかしい!」
「了解です!」
アイセルは不可解な動きを見せるジャック・オー・ランタンたちからすぐに離れると、一時撤退して後ろにいる俺たちの元へと戻ってきた。
その間にもジャック・オー・ランタンたちは次々と集まっては、どんどんとその密度を増していく。
さらに、
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!! ホアーッ!! ホアーッ!! ホアホアホアホアホアーッ!!』
ジャック・オー・ランタンたちは、声を重ねるようにして一斉に叫び始めたのだ。
「ちょっとケイスケ! ジャック・オー・ランタンたちがなんか合唱し始めたんだけど!?」
「分かってる! まずは様子見しつつ待機だ、何が起こっているかを確認したい。アイセルはいつでも動けるようにだけしといてくれ」
「了解です!」
「分かった!」
俺たちが緊張感に包まれながら、ジャック・オー・ランタンたちの得体のしれない大合唱を見守っていると、次第にその姿が一つの形を取り始めた。
「まさかこんなことが……」
「ケースケ様、これって――」
「ケイスケ、あいつらなんか1つのでっかいカボチャになったんだけど!? キングカボチャだよ!?」
何十体何百体と集まったジャック・オー・ランタンたちは融合合体して、いつしか超ビッグサイズのカボチャお化けに変化していたのだ!
ゆうに直径5メートルはある、それは超巨大なカボチャお化けだった。
「これはまさかの展開だな。こんなの聞いたことないぞ。新種か? 報告すれば多分、魔獣辞典に発見者として名前が載るぞ?」
「ほんとケイスケって、いっつもそういうセコいことばっかり考えてるよね!」
「全然セコくねーよ、魔獣辞典に名前が載るとかすごいことだろ」
「はいはいそうね」
「その話は後でいいじゃないですか。つまりこの巨大カボチャがアレコレ問題を起こしていた、っていうわけですよね?」
ワーワーといつものやり取りをしていた俺とサクラに、これまたいつものようにアイセルがさらっと割って入って話を進めてくれる。
なんかもうパーティ運営もアイセルに任せていいんじゃないかな? かな?
「ほぼ断定できるだろうな」
「あ、でもでも巨大カボチャってなんだか間抜けな言いかたかも」
「そうだな……ならキング・オー・ランタンとかどうだ?」
ジャックからキングへ。
トランプ的な発想だけど、なかなか上手く言ったんじゃないだろうか?
「あら、ケイスケにしては上手いこと言ったじゃん、その名前採用!」
「だからいちいち煽らなくていいっつーの」
そんなやり取りをしていた俺たちを見て、巨大カボチャ改めキング・オー・ランタンがニタリと笑った。
「これまた向こうさんはえらくやる気みたいだな」
「さっきまで一方的にやられた借りを、倍にして返してやるぜって感じ?」
「ジャック・オー・ランタンにはそんな高度な知性はないはずなんだけど、キング・オー・ランタンになったことで知性も向上したのかな?」
「危険度が大幅アップということですね。少し出方を見ながら戦ってみます」
「今回は相手のスペックも能力も完全に不明だ。分かってると思うけど無茶と無理は厳禁な。早めの撤退も頭に入れておいてくれ」
「了解です」
アイセルが魔法剣を構えながら前に出た。
ジャック・オー・ランタンの進化形態、キング・オー・ランタンとの戦いが幕をあげた――!
「了解です。スキル『剣気帯刃・オーラブレード』!」
アイセルの声と共に、魔法剣がどこか幻想的な青白い光で覆われた。
「うわっ、綺麗……いいなぁ」
俺の隣で見守っていたサクラが思わずって感じで呟く。
普段はことあるごとに俺にウザ絡みしてくるけど、なんだかんだでサクラも年頃の女の子なんだよな。
綺麗なものが好きだし憧れもするんだろう。
しかし『剣気帯刃・オーラブレード』はただ綺麗なだけのしょっぱいスキルではない。
実態を持たない敵にもダメージを与えられる、ハイクラスのスキルなのだ。
それを証明するかのように、
「てりゃぁ!」
アイセルが『剣気帯刃・オーラブレード』で強化した魔法剣をふるうたびに1体、また1体とジャック・オー・ランタンが倒され消えていく。
「なんだぁ、ジャック・オー・ランタンって全然大したことないじゃん?」
それを見たサクラが拍子抜けしたように言った。
「ジャック・オー・ランタンはわざわざ討伐に行くのもアホらしいくらいに、本来は無害なゴーストなんだよ」
「ふーん。じゃ、このまま何事もなく終わればいいのにね」
「そうだな、そうなるといいな」
俺はそう答えながらも、内心ではこのまま終わるはずがないという確信のような思いを抱いていた。
なにせこれは南部諸国連合の最高意思決定機関である評議会から依頼された、Sランクの指名討伐クエストなのだ。
勇者パーティ時代に受けたSランククエストは、どれもこれもが難しいクエストばかりだった。
だから今回のクエストもこのまま簡単に終わるはずがない。
そして悪い予感はやはり現実のものとなった。
異変が起こったのはアイセルが10体目のジャック・オー・ランタンを倒した時だった。
「動きが変わった? 1か所に集まりだしたような……」
アイセルの見立て通りそれまでふよふよ漂ってはいいようにやられていたジャック・オー・ランタンたちが、一つの場所に次々と集まって密集し始めたのだ。
そしてそれはどんどんと数を増していく。
「なにか」が起ころうとしていた。
「アイセル、いったん下がれ! 明らかに様子がおかしい!」
「了解です!」
アイセルは不可解な動きを見せるジャック・オー・ランタンたちからすぐに離れると、一時撤退して後ろにいる俺たちの元へと戻ってきた。
その間にもジャック・オー・ランタンたちは次々と集まっては、どんどんとその密度を増していく。
さらに、
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!! ホアーッ!! ホアーッ!! ホアホアホアホアホアーッ!!』
ジャック・オー・ランタンたちは、声を重ねるようにして一斉に叫び始めたのだ。
「ちょっとケイスケ! ジャック・オー・ランタンたちがなんか合唱し始めたんだけど!?」
「分かってる! まずは様子見しつつ待機だ、何が起こっているかを確認したい。アイセルはいつでも動けるようにだけしといてくれ」
「了解です!」
「分かった!」
俺たちが緊張感に包まれながら、ジャック・オー・ランタンたちの得体のしれない大合唱を見守っていると、次第にその姿が一つの形を取り始めた。
「まさかこんなことが……」
「ケースケ様、これって――」
「ケイスケ、あいつらなんか1つのでっかいカボチャになったんだけど!? キングカボチャだよ!?」
何十体何百体と集まったジャック・オー・ランタンたちは融合合体して、いつしか超ビッグサイズのカボチャお化けに変化していたのだ!
ゆうに直径5メートルはある、それは超巨大なカボチャお化けだった。
「これはまさかの展開だな。こんなの聞いたことないぞ。新種か? 報告すれば多分、魔獣辞典に発見者として名前が載るぞ?」
「ほんとケイスケって、いっつもそういうセコいことばっかり考えてるよね!」
「全然セコくねーよ、魔獣辞典に名前が載るとかすごいことだろ」
「はいはいそうね」
「その話は後でいいじゃないですか。つまりこの巨大カボチャがアレコレ問題を起こしていた、っていうわけですよね?」
ワーワーといつものやり取りをしていた俺とサクラに、これまたいつものようにアイセルがさらっと割って入って話を進めてくれる。
なんかもうパーティ運営もアイセルに任せていいんじゃないかな? かな?
「ほぼ断定できるだろうな」
「あ、でもでも巨大カボチャってなんだか間抜けな言いかたかも」
「そうだな……ならキング・オー・ランタンとかどうだ?」
ジャックからキングへ。
トランプ的な発想だけど、なかなか上手く言ったんじゃないだろうか?
「あら、ケイスケにしては上手いこと言ったじゃん、その名前採用!」
「だからいちいち煽らなくていいっつーの」
そんなやり取りをしていた俺たちを見て、巨大カボチャ改めキング・オー・ランタンがニタリと笑った。
「これまた向こうさんはえらくやる気みたいだな」
「さっきまで一方的にやられた借りを、倍にして返してやるぜって感じ?」
「ジャック・オー・ランタンにはそんな高度な知性はないはずなんだけど、キング・オー・ランタンになったことで知性も向上したのかな?」
「危険度が大幅アップということですね。少し出方を見ながら戦ってみます」
「今回は相手のスペックも能力も完全に不明だ。分かってると思うけど無茶と無理は厳禁な。早めの撤退も頭に入れておいてくれ」
「了解です」
アイセルが魔法剣を構えながら前に出た。
ジャック・オー・ランタンの進化形態、キング・オー・ランタンとの戦いが幕をあげた――!