レインボードラゴンを倒して古代遺跡から出た俺たちは、ただちに撤収を始めた。

 冒険者ギルドに戻ると、レインボードラゴンを討伐したことと勇者パーティを助けたことを報告する。

 元凄腕の冒険者で冷静沈着・百戦錬磨の老ギルドマスターは、報告を聞くや否や血相を変えて領主の元にスッとんで行った。

 それから1週間ほどたった後。
 俺たちパーティ『アルケイン』は南部諸国連合の中心である中央都に招待されていた。

 南部諸国連合の最高意思決定機関である評議会からSランクパーティに認定されて、『ドラゴンスレイヤー』の称号とともに莫大な討伐報奨を授与されることになったのだ。

 なにせ勇者アルドリッジ本人の証言と強い推薦があったから、話はとんとん拍子だった。

 ま、俺が過去を水に流して命を助けてやったんだから、これくらいしてもらって当然だけどな。

 ちなみにドラゴンの竜鱗と角は超稀少な素材としてものすごい高値が付くので、南部諸国連合としては俺たちに大金を払っても痛くもかゆくもなかったりする。

 そもそも市場に出ることがほぼないから、大金を払っても手に入らないのがドラゴンの素材だからな。

 ちなみに俺は割れた竜鱗の破片を1枚こっそり持って帰っていた。

 たまたま偶然なぜだか分からないけど、俺の懐に入ってしまっていたんだよなぁ。
 不思議だなぁ。

 まぁ記念品だよ、記念品。

 話を戻そう。
 その後、1週間にわたる盛大な式典やらパーティやらなんやらにいくつも参加した俺たちはへとへとになって、やっとこさ拠点である屋敷(サクラが用意してくれた家ね)へと戻ってきたのだ。

「ああ、マジで疲れた……」

「はい、疲れました……わたし生まれて初めてドレスを着たんですけど、動きにくいし締め付けはきついし、足元はハイヒールでグラグラするし、美味しい物が目の前にたくさんあるのに食べる暇もなく色んな人とお話しないといけないしで、ほんとに大変でした……あれならレインボードラゴンと戦う方がまだ楽だったかも……」

「アイセルは特に人気者だったもんなぁ……」

 ドラゴンを倒したとは思えないほど優しくて美人のアイセルには、未婚の若い男性が次々と話しかけてきたのだ。

 加えて最初の頃に荷物持ちをして苦労した話が高貴なオジサマ・オバサマ方にバカ受けして、引っ張りだこになっていた。

 ふふっ、やはり当初の俺の見立ては間違っていなかったな。

 今後はクエストの傍ら定期的にアイセルの講演会を開いて、お金を儲けつつ名前を広めていこう。

 とまぁそんな感じで、一週間毎日のように偉い人と会って完全に気疲れしていた俺とアイセルに、

「まったくケイスケはいい年してだらしないわね! ろくに社交界の経験もないだなんて、まったくこれだからバッファーは」

 サクラは特に疲れた様子も見せずに、いつものごとくウザ絡みをしてきた。
 ほんと元気だなお前は。

「サクラはさすがお嬢さまだな、えらい人とオホホウフフ言うのは慣れたもんか」

「まーね。物心ついたころにはパパと一緒にパーティや式典に参加してたから」

「ほんとにお嬢様なんだなぁ」
「心から尊敬します」

「あ、ありがとう……」

 俺とアイセルに尊敬のまなざしで見つめられたサクラは、少し頬を赤らめながらまんざらでもなさそうにそう言った。

 ――その後。
 ご飯を食べて風呂に入って。

 夜、俺はもう気力と体力の限界って感じで少し早めにベッドに横になった。

 灯りを消すと、いつものようにお風呂上がりの石けんの匂いを漂わせたアイセルがやってきて、ベッドの中でくっついてくる。

 アイセルの温もりと一緒に心地よく眠りにつこうとして――、

「ケースケ様……あの、わたし気になることが……」

 真っ暗な室内でアイセルが小さな声で呟いた。

「実は俺も今、感じてた」

 そして俺もアイセルとおそらく同じことに気づいていた。

「これってつまり、アレですよね?」
「そうだな、アレがナニだな」

「勃起してるってことですよね?」

 そう。
 俺の股間はほんの少しだけ硬くなって上を向き、くっついてきたアイセルの足が偶然それに当たっていたのだ。

 もちろん硬いといっても、まだまだ使用に耐えるほどではない。
 全然余裕でふにゃ寄りだった。

 それでも無反応だった時と比べて俺の股間は間違いなく、明らかに、アイセルに抱き着かれて反応していていて――。

「つまりケースケ様のインポが少し治ったってことですよね? わわっ、すごくないですか!? ケースケ様のインポがちょっとだけ治ったんですよ!? 完全インポじゃなくなったんですよ!? 微インポですよ!?」

 アイセルはよほど嬉しかったのか、興奮してまくしたててくるんだけど、

「アイセル、その、若い女の子からインポインポ言われるとやっぱり心に来るというか……」

 その言葉と前後して、無念。
 俺の股間はしおしおとしおれていった。

「あ……えっと、すみませんでした……」

 太ももに当たっていた反応が消えたのを感じたのだろう、アイセルがしょんぼりと謝ってくる。

「いいよ別に、一歩前進したのは間違いないからな。それもこれもアイセルのおかげだし」

「わたしのですか?」

「アイセルがあの時ビンタをしてくれて、アンジュのことが完全ではないにしても、なんとなく吹っ切れた気がしたんだ。少しだけ治ったのもそのおかげだと思う」

「そう言っていただけると、心を鬼にしてケースケ様をブッたかいがありましたね」

「まぁかなり痛かったんだけどな」

「それはその、すみませんでした……」

 俺の言葉にまたもやショボーンとするアイセル。
 表情がころころ変わって可愛いやつだな。

「ははっ、冗談だよ。俺はアイセルに本当に感謝してるんだ。またこんな充実した冒険者生活を送れるなんて思ってもみなかったから」

「えへへ、ケースケ様にそんな風に言ってもらえて、わたし幸せです」

「あの時3年ぶりに外に出た俺に声をかけてくれてありがとう。俺に冒険の楽しさを思い出させてくれてありがとう。俺を好きになってくれてありがとう。アイセルがいたから、俺はまたこの場所にいられるんだ」

 そこまで言って俺はアイセルの顔にそっと触れると、顔を寄せてその唇にキスをした。

「ん――――」

 一瞬アイセルの身体が硬くなってくぐもった声が聞こえたけど、もちろん抵抗はなくて。

 しばらくベッドの中で2人抱き合いながら、でもやっぱり疲れ果てていた俺たちは、いつの間にか眠りに落ちていたのだった。

 更なる冒険を夢見ながら――。


-第一部 完-

S級【バッファー】(←不遇職)の俺、結婚を誓い合った【幼馴染】を【勇者】に寝取られた上パーティ追放されてヒキコモリに→金が尽きたので駆け出しの美少女エルフ魔法戦士(←優遇職)を育成して養ってもらいます

 お読みいただきありがとうございました~(*'▽')パアッ

 未来の大勇者を目指すアイセルとケースケとサクラの物語はいったんここで終わりとなります。
 きっとこの後もパーティ『アルケイン』は充実した冒険を続けていくことでしょう。

 いつか更なる冒険の旅も書いてみたいですね。
 シャーリーにも出番をあげたいですし。

 ――と最初は書いてあったんですが!

 ここまでとても反応が良く、たくさんの人が読んでくれているので、第2部を書こうと思います!
 温かい応援ありがとうございます!

 ちょろっとだけ登場出していたシャーリーを新しい仲間に迎える予定です。
 『極光の殲滅姫(きょっこうのせんめつき)』なるとてつもなく物騒な二つ名で呼ばれる彼女の活躍をどうぞお楽しみに!

 気に入っていただけましたら、お気に入りと☆☆☆で評価していただけると嬉しいです。