「じゃあさっきの連携と同じように私から行くから。アイセルさんは援護よろしく!」
「お任せあれ」
阿吽の呼吸でコミュニケーションを取ると、まずはサクラが正面から突っ込んだ。
続いてアイセルがサクラの動きに連携して攻撃参加をする。
するとすぐにレインボードラゴンの鱗の色が雪のような白に変わった。
「来るか――!」
レインボードラゴンは7種のブレスを使う直前に、鱗の色が対応した色に変化するのだ。
白なら飛んでくるのはヤツ大得意のデバフ・ブレスだ――!
「GUOOOOOOOOOッッッ!!」
咆哮と共に、俺の予測通りにデバフ・ブレスがまき散らされた。
デバフ・ブレスによって、S級スキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』の効果が一瞬でかき消される。
「さすがSSランクだな。レベル120のバッファーが使う『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』をブレス一発で無効化かよ」
状態異常耐性の付与が切れたサクラが一瞬、ビクンと身体を震わせた。
俺のバフが無くなって怒りの精霊【フラストレ】がその力を大いに増したからだ。
それでも、
「ぐぐぐぐぐぐぐぬぬぬぬぬぬぬ…………フンガーッ! 負けるもんかぁ!!」
気合の大音声と共に、荒れ狂おうとする怒りの精霊をサクラは見事に抑えつけてみせた。
「よし! サクラぶっつけ本番でよくやったぞ!」
「ケイスケが期待してくれたんだもん、超がんばるし!」
しかし喜ぶのも束の間、レインボードラゴンの鱗が鮮血のような真紅にカラーチェンジした。
デバフ・ブレスでこちらの炎への抵抗値を下げた上で、今度はフレイム・ブレスを放つつもりなのだ。
「これがお前の必勝の攻撃パターンか。だけど全部計算通りだぜ? S級スキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』発動!」
俺は再びバフスキルを発動した。
強烈な炎耐性を付与したバフスキルがパーティを覆い、レインボードラゴンのフレイム・ブレスをなんなく無効化する。
レインボードラゴンはそれに驚いたような様子を見せながらも、しかし再びデバフ・ブレスで俺のバフを無効化してきた。
さらに炎は効かないと判断したのだろう。
レインボードラゴンは今度は身体を毒々しい紫色に変化させると、麻痺毒で行動不能にさせるポイズン・ブレスを放ってきた。
単体でも強烈なブレスを7種も使い分けるこの多彩な攻撃は、勇者アルドリッジすら防御しきれなかった絶対無敵の安定強行動。
こうも次から次へと属性を変えた強烈なブレスを使われたら、普通は手も足もでないからな。
けどな――!
「もちろんそいつも通さねぇよ。S級スキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』発動!」
俺は強烈な状態異常耐性を付与したバフスキルでもって、レインボードラゴンのポイズン・ブレスを無効化する。
レインボードラゴンが今度こそ、動揺したように目を大きく見開いた。
「俺はバッファーだ。使えない後衛不遇職で、開幕バフったら後はパーティーのお荷物だ」
だけど――!
「仲間を強化するというただ一点においては! バッファーのバフスキルに勝るヤツはいないんだよ! たとえそれが天下無敵の最強種ドラゴンであってもな!」
7種のブレス?
全ての付与や耐性を無効化するデバフ?
それがどうした!
「バフスキルしか能のないバッファーが! ただ1つ、それだけをひたすらに磨き続けてきたバッファーが! デバフ・ブレス『も』使えるってだけの相手に、バフとデバフの撃ち合いで負けるわけがねーだろうが!」
さぁ来い。
お前のブレスは俺が全て無効化してやる――!
俺のバフスキルと、レインボードラゴンの7種のブレスの壮絶な撃ち合いがはじまった。
レインボードラゴンの鱗の色が白、赤、青、緑、紫、金、黒と様々に変化し、7種のブレスが次々と放たれる。
しかし俺はその全てに対応し、無力化して抑えこんでいく。
もちろんこんな風にバフスキルを連発するのは始めての経験だった。
想像を超えた疲労がどんどんと重くのしかかってくる。
頭の中が焼けそうなくらいに熱と痛みでジンジンしてるし、立っているだけなのに息が上がり始めている。
一瞬フラッと意識が飛ぶ瞬間まで出はじめた。
身体が重い、膝に手をつきたい。
休みたい、座りたい、目を閉じたい。
このまま疲労に身を委ねて眠ってしまいたい――。
だけど俺はそんな誘惑を全部噛み殺して、なんでもない風に立ち続ける。
俺が疲れていると分かったらアイセルとサクラが心配する。
注意力が散漫になってしまう。
超格上のSSクラスのドラゴン相手にそれはまずすぎる。
前衛が全力で戦えるようにサポートするのが後衛職なんだ。
「後ろは心配するなと約束したからな、なにがなんでも約束は守ってみせるさ。約束は守る、それが俺たちパーティ『アルケイン』の唯一無二のルールだからな――!」
ついでにもう一つ、レインボードラゴンの振りまわす尻尾が周囲に拳大の瓦礫を飛ばしてくるのが結構怖かった。
最強クラスの防具『星の聖衣』があるから当たり所が悪くない限りは問題ないんだろうけど、怖いものは怖い。
当たり所が悪ければ死ぬ可能性もある。
なにせバッファーは防御力も紙だからな。
つまり状況的にこのままバフとブレスを撃ち合い続ければ、間違いなく俺のほうが先に力尽きる。
レインボードラゴンの狙いもそこにあるのかもしれなかった。
「でもおあいにく様だ。どこまで行っても俺は影なんだよ。そう、影でいいんだ」
バッファーは後衛不遇職だ。
バフスキル以外にただの1つもスキルを獲得しないし、能力値も全く上がらない。
疲れ知らずの仲間の旅についていくだけでも苦労する。
全職業で最低と言われるほどにどうしようもなく使えない、それがバッファーという職業だった。
ギルドを見渡しても俺以外のバッファーはいないし、派手に勝負を決めたり目立った活躍をしたりってのは、逆立ちしたってできはしない。
「だから自分の力だけで勝とうだなんて、今さら俺が思うことなんてないんだよ」
今さらそれが辛いとか悔しいとか、そんなことを思いはしないんだ。
ひたすら影に徹して美味しいところは全部任せる。
俺の信頼する最高の仲間にな。
それが後衛不遇職であるバッファーの、俺の生きざまなんだ――!
「さぁアイセル、お膳立てはしておいたぞ。いいところは全部お前の仕事だ、そろそろ決めてこい」
「お任せあれ」
阿吽の呼吸でコミュニケーションを取ると、まずはサクラが正面から突っ込んだ。
続いてアイセルがサクラの動きに連携して攻撃参加をする。
するとすぐにレインボードラゴンの鱗の色が雪のような白に変わった。
「来るか――!」
レインボードラゴンは7種のブレスを使う直前に、鱗の色が対応した色に変化するのだ。
白なら飛んでくるのはヤツ大得意のデバフ・ブレスだ――!
「GUOOOOOOOOOッッッ!!」
咆哮と共に、俺の予測通りにデバフ・ブレスがまき散らされた。
デバフ・ブレスによって、S級スキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』の効果が一瞬でかき消される。
「さすがSSランクだな。レベル120のバッファーが使う『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』をブレス一発で無効化かよ」
状態異常耐性の付与が切れたサクラが一瞬、ビクンと身体を震わせた。
俺のバフが無くなって怒りの精霊【フラストレ】がその力を大いに増したからだ。
それでも、
「ぐぐぐぐぐぐぐぬぬぬぬぬぬぬ…………フンガーッ! 負けるもんかぁ!!」
気合の大音声と共に、荒れ狂おうとする怒りの精霊をサクラは見事に抑えつけてみせた。
「よし! サクラぶっつけ本番でよくやったぞ!」
「ケイスケが期待してくれたんだもん、超がんばるし!」
しかし喜ぶのも束の間、レインボードラゴンの鱗が鮮血のような真紅にカラーチェンジした。
デバフ・ブレスでこちらの炎への抵抗値を下げた上で、今度はフレイム・ブレスを放つつもりなのだ。
「これがお前の必勝の攻撃パターンか。だけど全部計算通りだぜ? S級スキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』発動!」
俺は再びバフスキルを発動した。
強烈な炎耐性を付与したバフスキルがパーティを覆い、レインボードラゴンのフレイム・ブレスをなんなく無効化する。
レインボードラゴンはそれに驚いたような様子を見せながらも、しかし再びデバフ・ブレスで俺のバフを無効化してきた。
さらに炎は効かないと判断したのだろう。
レインボードラゴンは今度は身体を毒々しい紫色に変化させると、麻痺毒で行動不能にさせるポイズン・ブレスを放ってきた。
単体でも強烈なブレスを7種も使い分けるこの多彩な攻撃は、勇者アルドリッジすら防御しきれなかった絶対無敵の安定強行動。
こうも次から次へと属性を変えた強烈なブレスを使われたら、普通は手も足もでないからな。
けどな――!
「もちろんそいつも通さねぇよ。S級スキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』発動!」
俺は強烈な状態異常耐性を付与したバフスキルでもって、レインボードラゴンのポイズン・ブレスを無効化する。
レインボードラゴンが今度こそ、動揺したように目を大きく見開いた。
「俺はバッファーだ。使えない後衛不遇職で、開幕バフったら後はパーティーのお荷物だ」
だけど――!
「仲間を強化するというただ一点においては! バッファーのバフスキルに勝るヤツはいないんだよ! たとえそれが天下無敵の最強種ドラゴンであってもな!」
7種のブレス?
全ての付与や耐性を無効化するデバフ?
それがどうした!
「バフスキルしか能のないバッファーが! ただ1つ、それだけをひたすらに磨き続けてきたバッファーが! デバフ・ブレス『も』使えるってだけの相手に、バフとデバフの撃ち合いで負けるわけがねーだろうが!」
さぁ来い。
お前のブレスは俺が全て無効化してやる――!
俺のバフスキルと、レインボードラゴンの7種のブレスの壮絶な撃ち合いがはじまった。
レインボードラゴンの鱗の色が白、赤、青、緑、紫、金、黒と様々に変化し、7種のブレスが次々と放たれる。
しかし俺はその全てに対応し、無力化して抑えこんでいく。
もちろんこんな風にバフスキルを連発するのは始めての経験だった。
想像を超えた疲労がどんどんと重くのしかかってくる。
頭の中が焼けそうなくらいに熱と痛みでジンジンしてるし、立っているだけなのに息が上がり始めている。
一瞬フラッと意識が飛ぶ瞬間まで出はじめた。
身体が重い、膝に手をつきたい。
休みたい、座りたい、目を閉じたい。
このまま疲労に身を委ねて眠ってしまいたい――。
だけど俺はそんな誘惑を全部噛み殺して、なんでもない風に立ち続ける。
俺が疲れていると分かったらアイセルとサクラが心配する。
注意力が散漫になってしまう。
超格上のSSクラスのドラゴン相手にそれはまずすぎる。
前衛が全力で戦えるようにサポートするのが後衛職なんだ。
「後ろは心配するなと約束したからな、なにがなんでも約束は守ってみせるさ。約束は守る、それが俺たちパーティ『アルケイン』の唯一無二のルールだからな――!」
ついでにもう一つ、レインボードラゴンの振りまわす尻尾が周囲に拳大の瓦礫を飛ばしてくるのが結構怖かった。
最強クラスの防具『星の聖衣』があるから当たり所が悪くない限りは問題ないんだろうけど、怖いものは怖い。
当たり所が悪ければ死ぬ可能性もある。
なにせバッファーは防御力も紙だからな。
つまり状況的にこのままバフとブレスを撃ち合い続ければ、間違いなく俺のほうが先に力尽きる。
レインボードラゴンの狙いもそこにあるのかもしれなかった。
「でもおあいにく様だ。どこまで行っても俺は影なんだよ。そう、影でいいんだ」
バッファーは後衛不遇職だ。
バフスキル以外にただの1つもスキルを獲得しないし、能力値も全く上がらない。
疲れ知らずの仲間の旅についていくだけでも苦労する。
全職業で最低と言われるほどにどうしようもなく使えない、それがバッファーという職業だった。
ギルドを見渡しても俺以外のバッファーはいないし、派手に勝負を決めたり目立った活躍をしたりってのは、逆立ちしたってできはしない。
「だから自分の力だけで勝とうだなんて、今さら俺が思うことなんてないんだよ」
今さらそれが辛いとか悔しいとか、そんなことを思いはしないんだ。
ひたすら影に徹して美味しいところは全部任せる。
俺の信頼する最高の仲間にな。
それが後衛不遇職であるバッファーの、俺の生きざまなんだ――!
「さぁアイセル、お膳立てはしておいたぞ。いいところは全部お前の仕事だ、そろそろ決めてこい」