冒険の神ミトラへの宣誓と共に、2つの認識票が一瞬ブワッと強く光って輝いた。
 もちろん問題があったわけでもなんでもなく、その光はすぐに収まる。

 そして俺の認識票にはアイセルの名前が。
 アイセルの認識票には俺の名前が。

 それぞれパーティのメンバーとして記載されていた。

「よし、これで晴れて正式パーティの結成だ。明日にでも冒険者ギルドに登録して、クエストを受けよう」

「わたし、正式パーティの一員になったんですね……」

 見ると、アイセルは認識票をじっと見つめながら涙ぐんでいた。

「おいおい、泣くほどのもんじゃないだろ」

「だって、お荷物だって言われて誰とも正式パーティを組んでもらえなかったのに……」

「誰だって欠点はあるもんさ。アイセルにも、もちろん俺にもな」

「ケースケ様にはそんなのなさそうですけど――」

「パーティを組めば嫌でも見えてくるよ。でもさっきも言ったけど、足りないところは補い合えばいいんだ。そのためのパーティなんだから」

「そうですよね……わたし、これから全力がんばります!」

「期待してるぞ。ちなみにだけど、これからアイセルは俺のバフスキルの効果を受けられる。範囲は俺を中心に500メートルだから、効果対象外になることはまずないはずだ」

「範囲500メートルの影響力ですか!? スゴすぎません!?」

「こう見えて一応S級バッファーなんでな」

「わ、わたしも本当にがんばらないと……!」
 アイセルが頑張るぞ!って感じにグッと両手を握りしめた。

 そのあと、こまごまとした今後のことを話し合ってから、俺とアイセルはいったん別れた。

 そして翌朝。
 俺とアイセルは冒険者ギルドでパーティ登録を行っていた。

「パーティの合計レベルは133、平均レベルは66。メンバーは2名。Bランクとして登録されます」

 俺たちの認識票を確認すると、受付のお姉さんがそう告げた。

 合計レベルとはメンバーのレベル合計値、つまり俺120+アイセル13=133。

 平均レベルはそれをメンバーの人数で割ったもの、つまり133÷2=66(端数切り下げ)というわけだ。

「ランクBか……ランクAにはならないかな?」

「申し訳ありません。冒険者ギルドの規則により、Aランクパーティは3名以上かつ、合計レベル150以上、平均レベル50以上が必要ですので」

「そういやそうだったけか……」

 今までは規定で引っかかったことがなかったから、特に気にしたことも無くてすっかり忘れてた。
 ちなみに当時の勇者パーティは文句なしのSランクだ。

「ではパーティ名はいかがされますか?」

「アイセルはなにか希望はあるか? あったら言ってくれ」

 昨日アイセルにはパーティ名を何にするか、希望があれば考えてきて欲しいと伝えていた。

「特にこれというのは無かったので、ケースケ様が決めてください」

「わかった、じゃあ俺が決めてたのがあるからそれにしよう。パーティ名は『アルケイン』で頼む」

「パーティ『アルケイン』ですね、承りました」

「あの、ケースケ様。『アルケイン』って――」
 俺の出したパーティ名を聞いて、アイセルがちょんちょんと俺のそでを引いてくる。

「ああ、アイセルの出身地方の名前だよな?」

「えっと、なんで――」

「なんでって、昨日話をした時にアイセルが自分でアルケイン出身だって言ってたじゃないか。俺は人のステータスや情報を覗き見るようなスキルは持ってないぞ?」

「いえ、わたしの故郷の名前を知ってることじゃなくてですね。どうしてわたしの故郷の名前をパーティ名にしたんですか、ってことです」

「パーティ『アルケイン』が活躍するようになれば、噂はきっとアイセルの故郷にも届く。アルケインの主力のエルフの魔法戦士の名前と共にさ」

「あ――」

「まだ満足に仕送りも出来てないって言ってただろ? 故郷のみんなも心配してるはずだ」

「ケースケ様……」

「まぁ噂になるには、名前を売って活躍しないといけないんだけどな。でもこれから頑張ろうっていうモチベーションにはなるんじゃないか?」

「なります、すごくなります! 本当に何から何まで気を使っていただきありがとうございました。この大恩(だいおん)はいつか必ずお返ししますので」

「もう俺たちはパーティの仲間だ。恩を返すとか返されるとか、そういうのは無しで行こうぜ? 大切なのはただ一つ、仲間で信じ合うことだって言っただろ?」

「はい、よくよく分かりました」

「よし、じゃあ話もまとまったことで早速クエストを受けるとするか。パーティ『アルケイン』の初クエストだ、景気よく行こうぜ! まずはBランクのクエストを見るぞ」

「いきなりBランクなんですか!? 初めてですし、もっと簡単なところから行きませんか?」

「本当はAランクを受けたかったんだけどな。規則でダメってんだから仕方ない。ギルドのルールは守らないとな」

「いやあのえっと――」

「大丈夫、元勇者パーティの俺を信じろ」

「そう言われると、なんだかできそうな気がしてきました」

「だろ?」

 俺はにっこり笑うと、アイセルを連れて冒険者ギルドの1階入り口を入ってすぐの広間にある、クエスト依頼書が貼ってある情報交換スペースへと向かった。