「ちょ、ちょっと! あの子たちだけでレインボードラゴンに挑もうって言うの? 無茶よ、私も戦うわ」
「アンジュ、お前だって麻痺毒で本調子じゃないだろ」
「でも――」
「あのな、パーティ『アルケイン』を――未来の大勇者アイセルをあんまり見くびるんじゃねーぞ?」
「っ!? ケイスケ、私は!? 私のこと無視しないでよね!」
チッ。
真面目な話をしていたのに、サクラがまたウザ絡みをしてきやがった。
「おまえ、さっき自分で空気読めるタイプって言ってただろ。今は黙っとくところだぞ常識的に考えて」
「なんでよ、私もパーティ『アルケイン』のメンバーだもん! 言う権利があるし!」
「ああもうはいはい、サクラのことも見くびらないでくれ」
「おざなりだし!」
「お、難しい言葉を知ってるな、えらいぞ」
「あっ! 今バカにしたでしょ!? 私をバカにしたでしょ! アイセルさん、ケイスケが私をバカにしたの!」
「あぁもうウゼェ……」
「ちょっとケースケ、今は漫才やってる場合じゃないでしょう」
「いや俺はいたって真面目に話そうとしてるんだが……」
「だいたいその子たち、どっちもまだレベル30とか40じゃない。それでSSクラスのドラゴンと戦うだなんて――」
はぁ、やれやれ。
分かってないな。
ほんとアンジュは分かってない。
俺のことなんてなんにも分かってないんだ。
「俺はさ、バッファーとして勇者パーティでアンジュや勇者の活躍を散々見せつけられてきたんだよ。それはもう嫌って言うほどにな」
「え……?」
「そんな俺が、アイセルとサクラなら勝てるってお墨付きを与えてるんだ。この意味、分かるよな?」
「……」
「パーティ『アルケイン』は最強で最高だ、お前ら勇者パーティよりもはるかにな。それを今から証明してやる」
「……その子たちのことを信頼してるのね」
「当然だろ、パーティの仲間なんだから。パーティの仲間として信頼もしてるし、人として信用もしてる。当然だろ」
「……あの時はごめんなさいケースケ。あなたの信頼を裏切ってしまって」
そう言ってアンジュが頭を下げた。
「それこそ今さらだ」
ほんと今さら過ぎる。
「あのあの、ケースケ様」
少し微妙な空気になったのを払しょくするかのように、アイセルが再びぴょこんと手をあげた。
「どうした?」
「相手はSSクラスのドラゴンです。これという作戦はあるんでしょうか?」
おっと、その質問はもっともだな。
「もちろんある」
「だったら早く聞かせなさいよね!」
「だから今言おうと思ってたんだよ……なぁサクラ、もうそろそろバーサーカーの力を一人でコントロールできると思うんだ。自分の力だけでどうにか怒りの精霊【フラストレ】の力を抑えられないかな?」
「うーん、そうね……わたしももうレベル30だし、ケイスケができるって言うんならできると思うわ」
「おいこら、まだレベル28だろ。微妙にサバを読むんじゃねぇ」
「たったレベル2じゃないの。誤差でしょ。イチイチ細かいのよね……さすが後衛不遇職のバッファーだわ、モテないわよ」
「バッファーなのは関係ねーよ」
「はいはいそうね、ケースケ個人の問題よね」
「ちっ、この……。まぁいい。作戦ってのはこうだ。俺がやつのブレスを抑え込んでみせるから、2人はいつも通りに接近戦で討伐してくれ」
「了解です」
「いつも通りね、わかったわ!」
「レインボードラゴンはブレス特化の変則タイプでやっかいだけど、身体スペックはドラゴン族の中じゃ下から数えた方が早いんだ。だからブレスさえ封じれば、今の2人なら十分に勝てる」
「ドラゴンのブレスを抑え込んでみせるだなんて、さすがですケースケ様!」
「言っとくけど、失敗したら私たち死んじゃうんだから、ちゃんとやってよね! 注意一瞬、後悔一生なんだから。責任重大よ!」
2人は、俺がどうやってブレスを抑えるのかを詳しく尋ねてくることもなく、俺がブレスを無効化できる前提で作戦に同意をしてくれた。
俺の言うことなら何でも肯定してくれるアイセルだけでなく、サクラもなんだかんだで俺のことを信じてくれてるんだな。
だったらその気持ちに、俺はこれ以上なく答えないといけないわけで――!
「アイセル、後ろの俺たちの身の安全は考えなくていい。ブレスも俺がどうにかする。だから勇者アルドリッジすら倒せなかったレインボードラゴンを、今からお前が倒してこい。アイセルならできる」
「……はい!」
「だからわたしも!」
「はいはい、サクラも頼んだぞ」
「だからおざなり!」
「サクラにも期待してるよ。アイセルと一緒に伝説を作ってこい」
「あ、うん……がんばる」
「話は以上だ」
俺たちが会話を終え布陣を整えると同時に、通路奥からドラゴンがのそりとその巨体を現した。
ドラゴン種にしてはやや小型ではあるものの、大型魔獣のトリケラホーンよりもさらに一回り大きいその姿は、ドラゴンの名に恥じない威風堂々とした姿だった。
加えて様々なブレスを使い分けるその能力は、まさに最強種の名にふさわしい。
つまりパーティ『アルケイン』の伝説の幕開けにも相応しいってことだろ――!
「さぁ、未来の大勇者への大きな第一歩を始めようじゃないか――!」
「アンジュ、お前だって麻痺毒で本調子じゃないだろ」
「でも――」
「あのな、パーティ『アルケイン』を――未来の大勇者アイセルをあんまり見くびるんじゃねーぞ?」
「っ!? ケイスケ、私は!? 私のこと無視しないでよね!」
チッ。
真面目な話をしていたのに、サクラがまたウザ絡みをしてきやがった。
「おまえ、さっき自分で空気読めるタイプって言ってただろ。今は黙っとくところだぞ常識的に考えて」
「なんでよ、私もパーティ『アルケイン』のメンバーだもん! 言う権利があるし!」
「ああもうはいはい、サクラのことも見くびらないでくれ」
「おざなりだし!」
「お、難しい言葉を知ってるな、えらいぞ」
「あっ! 今バカにしたでしょ!? 私をバカにしたでしょ! アイセルさん、ケイスケが私をバカにしたの!」
「あぁもうウゼェ……」
「ちょっとケースケ、今は漫才やってる場合じゃないでしょう」
「いや俺はいたって真面目に話そうとしてるんだが……」
「だいたいその子たち、どっちもまだレベル30とか40じゃない。それでSSクラスのドラゴンと戦うだなんて――」
はぁ、やれやれ。
分かってないな。
ほんとアンジュは分かってない。
俺のことなんてなんにも分かってないんだ。
「俺はさ、バッファーとして勇者パーティでアンジュや勇者の活躍を散々見せつけられてきたんだよ。それはもう嫌って言うほどにな」
「え……?」
「そんな俺が、アイセルとサクラなら勝てるってお墨付きを与えてるんだ。この意味、分かるよな?」
「……」
「パーティ『アルケイン』は最強で最高だ、お前ら勇者パーティよりもはるかにな。それを今から証明してやる」
「……その子たちのことを信頼してるのね」
「当然だろ、パーティの仲間なんだから。パーティの仲間として信頼もしてるし、人として信用もしてる。当然だろ」
「……あの時はごめんなさいケースケ。あなたの信頼を裏切ってしまって」
そう言ってアンジュが頭を下げた。
「それこそ今さらだ」
ほんと今さら過ぎる。
「あのあの、ケースケ様」
少し微妙な空気になったのを払しょくするかのように、アイセルが再びぴょこんと手をあげた。
「どうした?」
「相手はSSクラスのドラゴンです。これという作戦はあるんでしょうか?」
おっと、その質問はもっともだな。
「もちろんある」
「だったら早く聞かせなさいよね!」
「だから今言おうと思ってたんだよ……なぁサクラ、もうそろそろバーサーカーの力を一人でコントロールできると思うんだ。自分の力だけでどうにか怒りの精霊【フラストレ】の力を抑えられないかな?」
「うーん、そうね……わたしももうレベル30だし、ケイスケができるって言うんならできると思うわ」
「おいこら、まだレベル28だろ。微妙にサバを読むんじゃねぇ」
「たったレベル2じゃないの。誤差でしょ。イチイチ細かいのよね……さすが後衛不遇職のバッファーだわ、モテないわよ」
「バッファーなのは関係ねーよ」
「はいはいそうね、ケースケ個人の問題よね」
「ちっ、この……。まぁいい。作戦ってのはこうだ。俺がやつのブレスを抑え込んでみせるから、2人はいつも通りに接近戦で討伐してくれ」
「了解です」
「いつも通りね、わかったわ!」
「レインボードラゴンはブレス特化の変則タイプでやっかいだけど、身体スペックはドラゴン族の中じゃ下から数えた方が早いんだ。だからブレスさえ封じれば、今の2人なら十分に勝てる」
「ドラゴンのブレスを抑え込んでみせるだなんて、さすがですケースケ様!」
「言っとくけど、失敗したら私たち死んじゃうんだから、ちゃんとやってよね! 注意一瞬、後悔一生なんだから。責任重大よ!」
2人は、俺がどうやってブレスを抑えるのかを詳しく尋ねてくることもなく、俺がブレスを無効化できる前提で作戦に同意をしてくれた。
俺の言うことなら何でも肯定してくれるアイセルだけでなく、サクラもなんだかんだで俺のことを信じてくれてるんだな。
だったらその気持ちに、俺はこれ以上なく答えないといけないわけで――!
「アイセル、後ろの俺たちの身の安全は考えなくていい。ブレスも俺がどうにかする。だから勇者アルドリッジすら倒せなかったレインボードラゴンを、今からお前が倒してこい。アイセルならできる」
「……はい!」
「だからわたしも!」
「はいはい、サクラも頼んだぞ」
「だからおざなり!」
「サクラにも期待してるよ。アイセルと一緒に伝説を作ってこい」
「あ、うん……がんばる」
「話は以上だ」
俺たちが会話を終え布陣を整えると同時に、通路奥からドラゴンがのそりとその巨体を現した。
ドラゴン種にしてはやや小型ではあるものの、大型魔獣のトリケラホーンよりもさらに一回り大きいその姿は、ドラゴンの名に恥じない威風堂々とした姿だった。
加えて様々なブレスを使い分けるその能力は、まさに最強種の名にふさわしい。
つまりパーティ『アルケイン』の伝説の幕開けにも相応しいってことだろ――!
「さぁ、未来の大勇者への大きな第一歩を始めようじゃないか――!」