「なんと言われようとサクラのパワーレベリングはしない」
「ううっ、じゃあなんで私をパーティに入れてくれたの……?」
ははっ、そんなションボリした顔をしてさ。
まったくもう、サクラはまだ俺たちの意図がわかってないみたいだな。
イジメたいわけじゃないのでさっさと種明かしをしてあげるか。
「サクラのパワーレベリングはしない。でもその代わりに、サクラがどこに出ても恥ずかしくない一人前の冒険者になれるよう、1からきっちりと教育する」
「え、それって──」
「パーティ『アルケイン』はついてくるのも大変だからな、覚悟しとけよ? なにせアイセルは将来、歴史に名を残す大勇者になるんだ。あまりゆっくりとはしてられないんだよ」
「あの、もしかしてなんだけど、つまり私を臨時じゃなくて正式なパーティメンバーにしてくれるってこと……?」
「俺は中途半端は嫌いなんだよな。だからパーティに入れるからにはサクラを正式なメンバーとして迎え入れたいって思ってる」
「私が正式なパーティのメンバーに……? しかもこの辺りで今一番勢いに乗ってる有名パーティ『アルケイン』の?」
「もしサクラがそれは嫌だって言うんなら、この話はなかったことで――」
「嫌なわけないし! すっごく嬉しいし!」
「じゃあ決まりだな」
「サクラ、改めてよろしくお願いしますね」
「うん! アイセルさん、こちらこそよろしく!」
「よし、話も一段落したところで早速、誓いの言葉をやるぞ」
俺が認識票を差し出すとアイセルがその上に、さらにサクラがその上に認識票に重ねてくる。
そして俺たちは声を合わせて宣誓した。
「「「冒険の神ミトラに誓約する! この者と共に、未知なる世界を切り拓かんことを!」」」
宣誓と共に、重ね合った3つの認識票が光り輝く。
光はすぐに収まり、認識票に3人の名前が記載されていたのを確認してパーティ契約は無事に完了した。
「このまま受付に行ってパーティの再登録をしよう。3人になったからAランクのパーティになるはずだ」
「Aランクパーティ……! ついに一番上のクラスになるんですね」
一応その上にSランクパーティがあるんだけど、あくまで例外的なものなんで、アイセルの言うとおり実質Aランクパーティが最上位となる。
「大勇者アイセルへの第一歩だな。その後はサクラのレベル上げに良さげなクエストを見繕って――」
「待ってケイスケ、今日は引っ越しをしましょう!」
俺の言葉を遮るようにサクラが言った。
「引っ越し?」
「パーティを組んだ時のために、パパに拠点となる家を用意してもらってるの。私はもうそこに住んでるんだけど、そこに3人で一緒に住みましょうよ」
「パッと家を用意できるとかさすが金持ちだな……羨ましい……」
「ケイスケたちも有名になったんだから、いつまでも冒険者ギルドの安宿に泊まってるわけにはいかないでしょ?」
「いや俺は割とあの部屋は気に入ってるんだ」
「え? そうなの?」
「なんせ3年以上も同じ部屋に住み続けてるからな。もはや実質あそこは俺のマイホーム、愛着もわくってなもんだ」
「わたしも特に不便は――」
隣の部屋のアイセルも俺に賛同しかけて、
「お風呂が付いてるわよ?」
「えっ!? お風呂があるんですか!?」
アイセルがお風呂という単語に激しく反応した。
「2人が泊まっていた宿はシャワーだけだったわよね? 引っ越せば毎日熱々のお風呂に入れるわよ? 私の専属メイドがハウスキーパーとして常駐してるから、お風呂の準備もしなくていいし」
「ま、毎日熱々のお風呂に入れるなんて……!」
アイセルが俺を見た。
それは期待100%――どころか200%の並々ならぬ強い期待が込められた、決意の眼差しだった。
女の子的にはやっぱり、毎日熱々のお風呂に入れるっていうのは魔性の魅力なんだろうな。
かく言う俺も風呂は割と好きだったりするし。
熱いお湯につかってると、身体の芯から疲れが取れる気がするんだよな。
「家の所有権はケイスケにあげるわ。もともとパワーレベリングしてもらうお礼のつもりだったし」
「え!? それって家をくれるってこと? ひゃっほう!」
その言葉に今度は俺が激しく反応してしまった。
「あ、ケースケ様も『ひゃっほう!』とか言うんですね。普段は大人な感じなのにちょっと意外です」
「こ、こほん……」
10才も年の離れたアイセルに冷静に指摘されて、俺は小さく咳払いをして居住まいを正した。
これは恥ずかしい……。
「でもでも珍しいケースケ様を見ることができて眼福です、えへへ……」
「そ、そうか……それは良かったな」
なんかもう俺がやることなら、箸を落としても喜んでくれそうなアイセルだった。
――でもさ、家をくれるんだよ?
しかもお風呂までついた、いい感じの家をくれるって言うんだ。
これから先の宿代もゼロになるし、そんなの思わず「ひゃっほう!」ってなっちゃうよね?
「やれやれ、2人はほんと仲いいわねぇ……」
「俺とアイセルの2人っきりのパーティを組んでから、なんだかんだでもう半年以上たつしな」
「もうそんなになるんですね」
出会った頃のことを思い出して、俺はなんとも懐かしい気分になっていた。
きっとアイセルも同じ気持ちでいることだろう。
ほんと、いろんなことがあったよな。
でもここからさらにステップアップを目指すなら、そろそろしっかりとした拠点に腰を据えるのもありか。
「そうだな。せっかくの好意だし引っ越ししよう」
「異存なしです」
「じゃあ案内するから着いてきて――」
こうして。
俺は「勇者とアンジュ結合事件」以来3年半にわたって住み続けていた宿を引き払い。
サクラが用意した新しい家に引っ越して、アイセル&サクラと3人で住むことになったのだった。
「ううっ、じゃあなんで私をパーティに入れてくれたの……?」
ははっ、そんなションボリした顔をしてさ。
まったくもう、サクラはまだ俺たちの意図がわかってないみたいだな。
イジメたいわけじゃないのでさっさと種明かしをしてあげるか。
「サクラのパワーレベリングはしない。でもその代わりに、サクラがどこに出ても恥ずかしくない一人前の冒険者になれるよう、1からきっちりと教育する」
「え、それって──」
「パーティ『アルケイン』はついてくるのも大変だからな、覚悟しとけよ? なにせアイセルは将来、歴史に名を残す大勇者になるんだ。あまりゆっくりとはしてられないんだよ」
「あの、もしかしてなんだけど、つまり私を臨時じゃなくて正式なパーティメンバーにしてくれるってこと……?」
「俺は中途半端は嫌いなんだよな。だからパーティに入れるからにはサクラを正式なメンバーとして迎え入れたいって思ってる」
「私が正式なパーティのメンバーに……? しかもこの辺りで今一番勢いに乗ってる有名パーティ『アルケイン』の?」
「もしサクラがそれは嫌だって言うんなら、この話はなかったことで――」
「嫌なわけないし! すっごく嬉しいし!」
「じゃあ決まりだな」
「サクラ、改めてよろしくお願いしますね」
「うん! アイセルさん、こちらこそよろしく!」
「よし、話も一段落したところで早速、誓いの言葉をやるぞ」
俺が認識票を差し出すとアイセルがその上に、さらにサクラがその上に認識票に重ねてくる。
そして俺たちは声を合わせて宣誓した。
「「「冒険の神ミトラに誓約する! この者と共に、未知なる世界を切り拓かんことを!」」」
宣誓と共に、重ね合った3つの認識票が光り輝く。
光はすぐに収まり、認識票に3人の名前が記載されていたのを確認してパーティ契約は無事に完了した。
「このまま受付に行ってパーティの再登録をしよう。3人になったからAランクのパーティになるはずだ」
「Aランクパーティ……! ついに一番上のクラスになるんですね」
一応その上にSランクパーティがあるんだけど、あくまで例外的なものなんで、アイセルの言うとおり実質Aランクパーティが最上位となる。
「大勇者アイセルへの第一歩だな。その後はサクラのレベル上げに良さげなクエストを見繕って――」
「待ってケイスケ、今日は引っ越しをしましょう!」
俺の言葉を遮るようにサクラが言った。
「引っ越し?」
「パーティを組んだ時のために、パパに拠点となる家を用意してもらってるの。私はもうそこに住んでるんだけど、そこに3人で一緒に住みましょうよ」
「パッと家を用意できるとかさすが金持ちだな……羨ましい……」
「ケイスケたちも有名になったんだから、いつまでも冒険者ギルドの安宿に泊まってるわけにはいかないでしょ?」
「いや俺は割とあの部屋は気に入ってるんだ」
「え? そうなの?」
「なんせ3年以上も同じ部屋に住み続けてるからな。もはや実質あそこは俺のマイホーム、愛着もわくってなもんだ」
「わたしも特に不便は――」
隣の部屋のアイセルも俺に賛同しかけて、
「お風呂が付いてるわよ?」
「えっ!? お風呂があるんですか!?」
アイセルがお風呂という単語に激しく反応した。
「2人が泊まっていた宿はシャワーだけだったわよね? 引っ越せば毎日熱々のお風呂に入れるわよ? 私の専属メイドがハウスキーパーとして常駐してるから、お風呂の準備もしなくていいし」
「ま、毎日熱々のお風呂に入れるなんて……!」
アイセルが俺を見た。
それは期待100%――どころか200%の並々ならぬ強い期待が込められた、決意の眼差しだった。
女の子的にはやっぱり、毎日熱々のお風呂に入れるっていうのは魔性の魅力なんだろうな。
かく言う俺も風呂は割と好きだったりするし。
熱いお湯につかってると、身体の芯から疲れが取れる気がするんだよな。
「家の所有権はケイスケにあげるわ。もともとパワーレベリングしてもらうお礼のつもりだったし」
「え!? それって家をくれるってこと? ひゃっほう!」
その言葉に今度は俺が激しく反応してしまった。
「あ、ケースケ様も『ひゃっほう!』とか言うんですね。普段は大人な感じなのにちょっと意外です」
「こ、こほん……」
10才も年の離れたアイセルに冷静に指摘されて、俺は小さく咳払いをして居住まいを正した。
これは恥ずかしい……。
「でもでも珍しいケースケ様を見ることができて眼福です、えへへ……」
「そ、そうか……それは良かったな」
なんかもう俺がやることなら、箸を落としても喜んでくれそうなアイセルだった。
――でもさ、家をくれるんだよ?
しかもお風呂までついた、いい感じの家をくれるって言うんだ。
これから先の宿代もゼロになるし、そんなの思わず「ひゃっほう!」ってなっちゃうよね?
「やれやれ、2人はほんと仲いいわねぇ……」
「俺とアイセルの2人っきりのパーティを組んでから、なんだかんだでもう半年以上たつしな」
「もうそんなになるんですね」
出会った頃のことを思い出して、俺はなんとも懐かしい気分になっていた。
きっとアイセルも同じ気持ちでいることだろう。
ほんと、いろんなことがあったよな。
でもここからさらにステップアップを目指すなら、そろそろしっかりとした拠点に腰を据えるのもありか。
「そうだな。せっかくの好意だし引っ越ししよう」
「異存なしです」
「じゃあ案内するから着いてきて――」
こうして。
俺は「勇者とアンジュ結合事件」以来3年半にわたって住み続けていた宿を引き払い。
サクラが用意した新しい家に引っ越して、アイセル&サクラと3人で住むことになったのだった。