翌日。
「いいんですか? 本当にやりますよ?」
アイセルが俺に魔法剣を向けながら、こわごわと念を押すように言った。
「いいぞ、やってくれ」
対して俺は特に緊張感もなく軽ーく答える。
「やりますよ? やるんですからね?」
「おう、やってくれ」
「本当にやりますからね? ケースケ様がやれって言ったんですからね?」
「大丈夫だって、ほらほら」
「どうなってもわたしは知りませんよ? 後でわたしのせいだって言わないで下さいよ? ケースケ様の自業自得なんですからね?」
「分かってる分かってる」
「あ、でも怪我をしたらすぐに止血してお医者さんのところに連れて行ってあげますので、そこはご安心を」
「まぁもしもの時は頼むよ。ないと思うけどな」
「……わかりました、ケースケ様がそこまで言うなら指示に従います。だってわたしはケースケ様の剣なんですから――」
目を閉じて噛みしめるようにつぶやくアイセル。
「いやあの、そんな重い決意みたいなのまで持ち出さなくても……」
「いいえ、ケースケ様に剣を向けるということがどれだけ辛いことか……。わたしは今、悲しみに暮れる心を必死に乗り越えようとしているんです」
「あ、うん、大事だよね気持ちの折り合いは」
「……では行きます! はぁぁぁっっ!!」
決断したアイセルは目を開くと、今までのためらいはどこに行ったのか、気合いとともに俺に向かって魔法剣を鋭く繰り出してくる。
「のわっ!?」
いまや歴戦のフロントアタッカーと言ってもいいアイセルの見せた裂帛の気迫に、思わずビクッとして情けない声をあげちゃうヘタレな俺。
まぁ後衛職ってのはおおむねこんなもんだ。
しかしアイセルの攻撃が俺に届いた瞬間――、
キ――ン!
澄んだ音ともに『星の聖衣』が魔法剣を跳ね返した。
「わわっ、さっきまで普通の布だったのに本当に金属みたいに硬くなりましたよ!?」
繊維化した金属で編まれた『星の聖衣』が瞬間硬化して金属鎧となったのを見て、アイセルが驚いた声をあげる。
「なっ、言っただろ、大丈夫だって」
「すごいです、目の前で見ても信じられません……」
アイセルが硬化した部位をちょんちょんとつつくが、もうそこは既に布の状態に戻りつつあって。
「こいつのおかげで、これからは俺の安全も大幅に向上するってこと」
「ふへぇ……」
アイセルが心底感心したようにつぶやいた。
「この情報はすぐにでも共有しておきたかったんだよ」
「確かにこれを見せられれば、少し安心できる気がしました」
不遇後衛職で後ろで見ているだけな俺の防御力が格段に向上すれば――常に俺を守らなければならないという負担が減れば――アイセルはもっと自由に戦うことができる。
もっと強くなれる。
「だろ? じゃあ運用試験はこれにて終了。昨日の今日だし、この後はオフってことで」
「あの、ケースケ様はこの後は用事でもあったりですか?」
「いいや特にはないよ。なんだ? アイセルはどっか遊び行きたいところでもあるのか?」
「ここからちょっと行った街道沿いに、たくさん花が咲いていて今が見ごろらしいんです。良かったら一緒にピクニック行きませんか?」
「おっ、いいな、今日は天気もいいし散歩するにはちょうどいいもんな」
「じゃあすぐに食べ物とか準備してきますね!」
そう言ってアイセルは自分の部屋へと戻っていった。
その後、準備を整えたアイセルと一緒に花を見に行って。
俺たちはしばし冒険者であることを忘れて、まったり平和にオフを過ごしたのだった。
「いいんですか? 本当にやりますよ?」
アイセルが俺に魔法剣を向けながら、こわごわと念を押すように言った。
「いいぞ、やってくれ」
対して俺は特に緊張感もなく軽ーく答える。
「やりますよ? やるんですからね?」
「おう、やってくれ」
「本当にやりますからね? ケースケ様がやれって言ったんですからね?」
「大丈夫だって、ほらほら」
「どうなってもわたしは知りませんよ? 後でわたしのせいだって言わないで下さいよ? ケースケ様の自業自得なんですからね?」
「分かってる分かってる」
「あ、でも怪我をしたらすぐに止血してお医者さんのところに連れて行ってあげますので、そこはご安心を」
「まぁもしもの時は頼むよ。ないと思うけどな」
「……わかりました、ケースケ様がそこまで言うなら指示に従います。だってわたしはケースケ様の剣なんですから――」
目を閉じて噛みしめるようにつぶやくアイセル。
「いやあの、そんな重い決意みたいなのまで持ち出さなくても……」
「いいえ、ケースケ様に剣を向けるということがどれだけ辛いことか……。わたしは今、悲しみに暮れる心を必死に乗り越えようとしているんです」
「あ、うん、大事だよね気持ちの折り合いは」
「……では行きます! はぁぁぁっっ!!」
決断したアイセルは目を開くと、今までのためらいはどこに行ったのか、気合いとともに俺に向かって魔法剣を鋭く繰り出してくる。
「のわっ!?」
いまや歴戦のフロントアタッカーと言ってもいいアイセルの見せた裂帛の気迫に、思わずビクッとして情けない声をあげちゃうヘタレな俺。
まぁ後衛職ってのはおおむねこんなもんだ。
しかしアイセルの攻撃が俺に届いた瞬間――、
キ――ン!
澄んだ音ともに『星の聖衣』が魔法剣を跳ね返した。
「わわっ、さっきまで普通の布だったのに本当に金属みたいに硬くなりましたよ!?」
繊維化した金属で編まれた『星の聖衣』が瞬間硬化して金属鎧となったのを見て、アイセルが驚いた声をあげる。
「なっ、言っただろ、大丈夫だって」
「すごいです、目の前で見ても信じられません……」
アイセルが硬化した部位をちょんちょんとつつくが、もうそこは既に布の状態に戻りつつあって。
「こいつのおかげで、これからは俺の安全も大幅に向上するってこと」
「ふへぇ……」
アイセルが心底感心したようにつぶやいた。
「この情報はすぐにでも共有しておきたかったんだよ」
「確かにこれを見せられれば、少し安心できる気がしました」
不遇後衛職で後ろで見ているだけな俺の防御力が格段に向上すれば――常に俺を守らなければならないという負担が減れば――アイセルはもっと自由に戦うことができる。
もっと強くなれる。
「だろ? じゃあ運用試験はこれにて終了。昨日の今日だし、この後はオフってことで」
「あの、ケースケ様はこの後は用事でもあったりですか?」
「いいや特にはないよ。なんだ? アイセルはどっか遊び行きたいところでもあるのか?」
「ここからちょっと行った街道沿いに、たくさん花が咲いていて今が見ごろらしいんです。良かったら一緒にピクニック行きませんか?」
「おっ、いいな、今日は天気もいいし散歩するにはちょうどいいもんな」
「じゃあすぐに食べ物とか準備してきますね!」
そう言ってアイセルは自分の部屋へと戻っていった。
その後、準備を整えたアイセルと一緒に花を見に行って。
俺たちはしばし冒険者であることを忘れて、まったり平和にオフを過ごしたのだった。