「むむむっ! ケースケ様とサクラがなんだか妙に仲良さげです!」

「ははっ、別にサクラとはそんなんじゃないから安心しろアイセル。サクラはあれだな、どっちかって言うとちょっとませた妹みたいな感じだから」

「ませた妹違うし! わたしはもう十分立派なレディだもん! 訂正してよね!」

「うんうんそうだな。ごめんな、サクラはどこに出しても恥ずかしくない立派なレディだよな。今のは俺が悪かったよ」

「ちょっとケイスケ! 生暖かい目をしながら『しゃーないな、ここは年長の俺が折れてやるか……』みたいに言わないでくれる? 失礼しちゃうわね、もう!」

「いやいやそんなこと全然してないから。な、俺が悪かったから機嫌直せよ?」

「そのやたらと優しい言い方が、もろに子ども扱いしてるってーの! ふーんだ!」

「ううっ、やっぱり2人は仲良しです……」

「はいはい、ケースケの取り合いはその辺にしておきましょう。今はクエストの話なんだからね」

 完全に話が脱線しちゃっているのを見かねたシャーリーが苦笑しながら、パンパンと軽く手を叩いて話の流れを軌道修正した。

「はーい!」
「はい」

 シャーリー先生のお言葉を聞いて、サクラとアイセルが素直に頷く。

 ほんと今のパーティ『アルケイン』は本当にいい関係だよな。

「ケースケもあまり話を脱線しないようにね」

「え、俺のせいなのかよ?」

「少なくとも話の中心はケースケだったわけでしょ? 言ってみれば、普段の行いの結果が今出たのね」

「へいへいすんませんでした。じゃあクエストの話を続けるな」

 まぁそれでパーティがまとまるんなら、俺のせいでも別にいいっちゃいいんだけどさ?
 せっかく話も落ち着いたわけで、真面目な話をするにしよう。

「でもケースケ様、今回のクエストは山岳地帯の奥にある標高2500メートルの山の上ですよね? となるとわたしたち冒険者でも登るのは少し大変そうです」

「私は平気よ!」

「バーサーカーの力を使いこなせるようになったサクラはそりゃ平気だろうよ。でもこういうところに行くとなると、アイセルの言うとおり俺が足を引っ張りまくるんだよなぁ」

 2000メートルを超える山登りのようなハードな移動が必要な時に、ありえないほど足を引っ張ってしまうのが、基礎スキルとも言われる『体力強化』『疲労軽減』すら持たない最不遇職バッファーだった。

 バッファーは移動力に関しても全職業中で断トツでぶっちぎりの最低ランクだ。

「ま、そこはみんなで補っていきましょ。なにせアタシたちはパーティなんだから。助け合ってなんぼだもの」

「ですね! それに今回も、クエストの事前情報集めはケイスケ様が一手に引き受けてくれていたんですから。ケースケ様抜きではパーティ『アルケイン』は成り立ちませんよ」

「だよね、私もそう思う! 情報集めとか何したらいいかよくわかんないもん。ケイスケには感謝してるんだから!」

「シャーリー、アイセル、サクラ……みんな本当にありがとう……」

 俺は心の中が優しい温もりで満たされていくのを感じていた。


 その後、山のふもとにある村までは馬車で行って、そこで山登りのルートを最終確認する――とかそういうことを話し合い、作戦会議は終了となった。

 あとはしっかりと準備を整えて、シャーリーのお父さんが出した最後のクエストに旅立つだけだ。