「ああそうだ、ついでに俺からも質問してもいいかな?」
『ん? なーに? いいわよ?』
「さっき2000ゴールドで斧を買わされ――買っただろ? なんで金をとるんだ? 精霊も人間のお金を使ってるのか?」
『まさか。精霊の世界で人間のお金なんて全くの無価値、プライスレスよ。あれは実費をとってるだけ』
「実費? なんのだよ?」
プライスレスは「お金を付けられない価値がある」と言う意味の褒め言葉だが、俺は空気を読んで指摘しなかった。
多分なんとなくその場のノリで言ってるんだろうし。
『もちろん斧の購入費と、斧をメッキ加工する手間賃だけど?』
ウンディーネが「当たり前でしょ?」みたいな顔をして言った。
「メッキ加工……だと……?」
『金の斧と銀の斧を作るのは自分じゃできないから、この森で懇意にしてる知り合いのエルフの金属加工職人に作ってもらってるの。その費用が2000ゴールドなの』
「あれって不思議な精霊パワーとかで作ってるんじゃなくて、普通の金属加工なのか……しかも本物の金じゃなくて金メッキ……」
なんだか急に斧が重く感じてきた気がする……なんだ安物かよ、期待して損した……。
『遠目には一緒でしょ?』
「あの、これ要らないんで、返却するからその辺に置いといていいかな?」
俺は素直にお気持ちを表明した。
『その斧は古の盟約を更新した証拠になるはずだけど、置いていっていいの?』
「く……っ!」
「ケイスケ、重いんだったら私持つよ、力仕事なら任せて」
するとサクラがそう言って代わりに斧を持ってくれた。
サクラって普段の言動は12歳って年齢相応に子供っぽいのに、何気ないところで意外と気を使ってくれるんだよな。
『だいたいあんた、水の精霊である私が金属のメッキ加工なんてできるわけないじゃん』
「そりゃ言われてみればそうなんだろうけど、なんだかなぁ」
将来や夢について熱く語っていたら、急に目の前のままならない現実を突きつけられた若者の気分というか……。
『それでね、あの斧を使ってたまたま迷い込んできた旅人とかに時々、盟約とは無関係で伝説の追体験をさせてあげてたのよ』
「目的はウンディーネの知名度アップのために?」
『え? それ以外に何かある?』
すげぇ、言い切りやがったよ。
「人徳とか懐の広さとか、色々あるだろ?」
『悪いけど人徳や懐の広さじゃSランクは維持できないのよね』
「世知辛いなぁ……」
と、話がやや脱線しはじめたところで、
「でもでも、伝説を再現したイベントを追体験できるなんて、なんだか体験型のアトラクションみたいで楽しそうですよね」
アイセルがにっこり笑いながら上手く軌道修正をしてくれた。
そしてその言葉を聞いた俺の脳裏にふと浮かんだことがあった。
「そっか、体験型アトラクションか。それいけるかもな」
「ケースケ様?」
「なぁウンディーネ。ウンディーネは精霊としての位階をキープするために、人間の知名度や信仰心が必要なんだよな?」
『うん、そうだよーん』
「このエルフの子はアイセルって言うんだけどさ、実はものすごい有名人なんだ。Sランクパーティのエースでさ。だからアイセルが宣伝すれば人がたくさん来ると思うぞ?」
『ええっ、ほんとにぃ? 悪いけどとてもそうは見えないんだけど』
「アイセルは普段はとても控えめだからな。でも例えばほら、これがその証拠の一つ『元気印のアイセルまんじゅう』だ」
俺は小腹が空いた時のために持ってきていた例のまんじゅうを、ウンディーネに見せてあげた。
すると、
『わわっ、この子の顔が焼き印されてるんだけど!? マジで有名人なんだこの子! やるじゃん!』
ウンディーネは驚いた顔で、アイセルの顔を右から見たり左から見たり、上から下から見たりした。
「えへへ……」
じろじろ見てくるウンディーネに、アイセルが照れたようにはにかんだ。
ちなみにとても可愛いです。
それはそれとして。
『ん? なーに? いいわよ?』
「さっき2000ゴールドで斧を買わされ――買っただろ? なんで金をとるんだ? 精霊も人間のお金を使ってるのか?」
『まさか。精霊の世界で人間のお金なんて全くの無価値、プライスレスよ。あれは実費をとってるだけ』
「実費? なんのだよ?」
プライスレスは「お金を付けられない価値がある」と言う意味の褒め言葉だが、俺は空気を読んで指摘しなかった。
多分なんとなくその場のノリで言ってるんだろうし。
『もちろん斧の購入費と、斧をメッキ加工する手間賃だけど?』
ウンディーネが「当たり前でしょ?」みたいな顔をして言った。
「メッキ加工……だと……?」
『金の斧と銀の斧を作るのは自分じゃできないから、この森で懇意にしてる知り合いのエルフの金属加工職人に作ってもらってるの。その費用が2000ゴールドなの』
「あれって不思議な精霊パワーとかで作ってるんじゃなくて、普通の金属加工なのか……しかも本物の金じゃなくて金メッキ……」
なんだか急に斧が重く感じてきた気がする……なんだ安物かよ、期待して損した……。
『遠目には一緒でしょ?』
「あの、これ要らないんで、返却するからその辺に置いといていいかな?」
俺は素直にお気持ちを表明した。
『その斧は古の盟約を更新した証拠になるはずだけど、置いていっていいの?』
「く……っ!」
「ケイスケ、重いんだったら私持つよ、力仕事なら任せて」
するとサクラがそう言って代わりに斧を持ってくれた。
サクラって普段の言動は12歳って年齢相応に子供っぽいのに、何気ないところで意外と気を使ってくれるんだよな。
『だいたいあんた、水の精霊である私が金属のメッキ加工なんてできるわけないじゃん』
「そりゃ言われてみればそうなんだろうけど、なんだかなぁ」
将来や夢について熱く語っていたら、急に目の前のままならない現実を突きつけられた若者の気分というか……。
『それでね、あの斧を使ってたまたま迷い込んできた旅人とかに時々、盟約とは無関係で伝説の追体験をさせてあげてたのよ』
「目的はウンディーネの知名度アップのために?」
『え? それ以外に何かある?』
すげぇ、言い切りやがったよ。
「人徳とか懐の広さとか、色々あるだろ?」
『悪いけど人徳や懐の広さじゃSランクは維持できないのよね』
「世知辛いなぁ……」
と、話がやや脱線しはじめたところで、
「でもでも、伝説を再現したイベントを追体験できるなんて、なんだか体験型のアトラクションみたいで楽しそうですよね」
アイセルがにっこり笑いながら上手く軌道修正をしてくれた。
そしてその言葉を聞いた俺の脳裏にふと浮かんだことがあった。
「そっか、体験型アトラクションか。それいけるかもな」
「ケースケ様?」
「なぁウンディーネ。ウンディーネは精霊としての位階をキープするために、人間の知名度や信仰心が必要なんだよな?」
『うん、そうだよーん』
「このエルフの子はアイセルって言うんだけどさ、実はものすごい有名人なんだ。Sランクパーティのエースでさ。だからアイセルが宣伝すれば人がたくさん来ると思うぞ?」
『ええっ、ほんとにぃ? 悪いけどとてもそうは見えないんだけど』
「アイセルは普段はとても控えめだからな。でも例えばほら、これがその証拠の一つ『元気印のアイセルまんじゅう』だ」
俺は小腹が空いた時のために持ってきていた例のまんじゅうを、ウンディーネに見せてあげた。
すると、
『わわっ、この子の顔が焼き印されてるんだけど!? マジで有名人なんだこの子! やるじゃん!』
ウンディーネは驚いた顔で、アイセルの顔を右から見たり左から見たり、上から下から見たりした。
「えへへ……」
じろじろ見てくるウンディーネに、アイセルが照れたようにはにかんだ。
ちなみにとても可愛いです。
それはそれとして。