俺たちは順調にウッドゴーレムを行動不能にしていった。
だがしかし。
ちょうど10体目をアイセルが撃破したタイミングで、
『アイセル、ちょっとピンチだ! すぐにヘルプに来てくれ!』
「了解ですケースケ様!」
『俺の声』に反応したアイセルが前線を急速離脱すると、ものすごい速さで安全地帯にいる俺のところまで戻ってきた。
先だっての傭兵王グレタとの戦いで、俺があわや命の危機に陥ったこともあって、その反応は驚くほどに早かった。
だけどそのせいで前衛はサクラだけになってしまい――、
「ちょ、ちょっとケイスケ! 私一人じゃこれだけの数は捌ききれないんだけど!? って、このぉっ! 舐めんなうぉりゃぁぁぁ!!」
サクラはウッドゴーレムたちに囲まれて大ピンチになってしまった。
さらに、
『シャーリー、代わりに前衛を頼む』
「え、アタシが? まぁいいけど」
『俺の声』で的外れな指示を受けたシャーリーが、ややびっくりしたように返事をすると、アイセルと入れ替わるように前に出て接近戦を始めてしまったのだ。
まったく意図しない前衛アイセルと後衛シャーリーのスイッチ。
これは――!
「違う、今の声は俺じゃない! ドリアードの声真似だ!」
「ええっ!? でも確かにケースケ様の声でしたよ? わたしがケースケ様の声を聞き間違えるはずありませんもん」
既に戻ってきていたアイセルがびっくり仰天して俺の顔を見た。
「ってことはアタシへの指示もニセモノのケースケの声だったってこと? でもアタシもケースケの声に聞こえたんだけど?」
シャーリーもサクラをなんとか援護しながら驚いたように言ってくる。
「感度の高いアイセルの認識力や、何年も一緒にパーティを組んだシャーリーの感覚すら誤魔化されるのか。さすがドリアード、森の主とも言われる上位の精霊だな」
「声真似って聞いて大したことないと思ってんだけど、これは地味にやっかいかもね――って、おっとと危ない危ない」
慣れない最前列での戦闘に、シャーリーは明らかに苦戦していた。
「はい、まったく聞き分けられません」
それにアイセルも深く同意する。
『私は一人でも大丈夫よ! だからその間に打開策を考えて!』
「違うし! 今の私じゃないから! っていうかアイセルさん早くヘルプ・ミー!」
『大丈夫だって言ってるじゃん! アイセルさんはケイスケを守ってあげて!』
「うがー! 私の声真似して反対のこと言うとかマジムカつくんだけど!?」
『あんたが私の声真似してるんでしょ!』
「ニセモノの分際でなにをー!」
『ニセモノの分際でなにをー!』
だめだ、俺もサクラの声を全く聞きわけられない。
完全にサクラが一人芝居をしているとしか思えない。
「すごいですね、単にしゃべり方だけじゃなくて、わたしたちの人間関係まで把握していますよ」
「ウッドゴーレムとの戦闘が始まってもしばらくドリアードが出てこなかったのは、こうやって細かい人間関係まで把握するためだったわけだな?」
「わたしたちの声を単にコピーするだけじゃなくて、しゃべり方や指揮系統までそっくりそのままコピーするなんて……」
「指揮系統を乱せば、昔と違って役割分担が完全に確立している最近のパーティの集団戦闘能力は、大きく落ちるからな。そこをついてきたわけだ」
昔の冒険者パーティは、何でもできる優れた『個』が意気投合して、個人的な繋がりをベースに自然発生的に生まれていた。
だから少々指揮系統を乱されようが、みんなが何でもできるので穴埋めするのは比較的簡単だった。
だがしかし。
ちょうど10体目をアイセルが撃破したタイミングで、
『アイセル、ちょっとピンチだ! すぐにヘルプに来てくれ!』
「了解ですケースケ様!」
『俺の声』に反応したアイセルが前線を急速離脱すると、ものすごい速さで安全地帯にいる俺のところまで戻ってきた。
先だっての傭兵王グレタとの戦いで、俺があわや命の危機に陥ったこともあって、その反応は驚くほどに早かった。
だけどそのせいで前衛はサクラだけになってしまい――、
「ちょ、ちょっとケイスケ! 私一人じゃこれだけの数は捌ききれないんだけど!? って、このぉっ! 舐めんなうぉりゃぁぁぁ!!」
サクラはウッドゴーレムたちに囲まれて大ピンチになってしまった。
さらに、
『シャーリー、代わりに前衛を頼む』
「え、アタシが? まぁいいけど」
『俺の声』で的外れな指示を受けたシャーリーが、ややびっくりしたように返事をすると、アイセルと入れ替わるように前に出て接近戦を始めてしまったのだ。
まったく意図しない前衛アイセルと後衛シャーリーのスイッチ。
これは――!
「違う、今の声は俺じゃない! ドリアードの声真似だ!」
「ええっ!? でも確かにケースケ様の声でしたよ? わたしがケースケ様の声を聞き間違えるはずありませんもん」
既に戻ってきていたアイセルがびっくり仰天して俺の顔を見た。
「ってことはアタシへの指示もニセモノのケースケの声だったってこと? でもアタシもケースケの声に聞こえたんだけど?」
シャーリーもサクラをなんとか援護しながら驚いたように言ってくる。
「感度の高いアイセルの認識力や、何年も一緒にパーティを組んだシャーリーの感覚すら誤魔化されるのか。さすがドリアード、森の主とも言われる上位の精霊だな」
「声真似って聞いて大したことないと思ってんだけど、これは地味にやっかいかもね――って、おっとと危ない危ない」
慣れない最前列での戦闘に、シャーリーは明らかに苦戦していた。
「はい、まったく聞き分けられません」
それにアイセルも深く同意する。
『私は一人でも大丈夫よ! だからその間に打開策を考えて!』
「違うし! 今の私じゃないから! っていうかアイセルさん早くヘルプ・ミー!」
『大丈夫だって言ってるじゃん! アイセルさんはケイスケを守ってあげて!』
「うがー! 私の声真似して反対のこと言うとかマジムカつくんだけど!?」
『あんたが私の声真似してるんでしょ!』
「ニセモノの分際でなにをー!」
『ニセモノの分際でなにをー!』
だめだ、俺もサクラの声を全く聞きわけられない。
完全にサクラが一人芝居をしているとしか思えない。
「すごいですね、単にしゃべり方だけじゃなくて、わたしたちの人間関係まで把握していますよ」
「ウッドゴーレムとの戦闘が始まってもしばらくドリアードが出てこなかったのは、こうやって細かい人間関係まで把握するためだったわけだな?」
「わたしたちの声を単にコピーするだけじゃなくて、しゃべり方や指揮系統までそっくりそのままコピーするなんて……」
「指揮系統を乱せば、昔と違って役割分担が完全に確立している最近のパーティの集団戦闘能力は、大きく落ちるからな。そこをついてきたわけだ」
昔の冒険者パーティは、何でもできる優れた『個』が意気投合して、個人的な繋がりをベースに自然発生的に生まれていた。
だから少々指揮系統を乱されようが、みんなが何でもできるので穴埋めするのは比較的簡単だった。