「ケイスケ、前も言ったかもだけど。私はね、一度きりの人生はしっかり使わないともったいないと思ってるのよ」
「え、おぅ」
「だってそうでしょ? せっかく恵まれた環境に生まれたんだから、他の誰よりも一生懸命にサクラメント=ヴァリエールって人生を全うするのが、私の権利であり義務だと思うの――ってどうしたのよケイスケ、変な顔して?」
「いやサクラってまだ12,3才の子供なのに考え方はすごく大人で、人生に関してすごく真摯で情熱的だよな、と改めて感心してたんだ」
「ふふん、好きなだけ崇め奉りなさい!」
「普段の言動はパリピだけどな」
「パリピ?」
「パーティに参加するような高貴な人物って意味の俗語だよ」
「ふーん、そんな言葉があるんだ」
もちろん嘘である。
パリピとは「パーリーピーボー」の略で、ギャーギャー騒ぎたがるウェーイ系の人を指す最近流行りの言葉なんだけど、サクラは知らなかったみたいだな。
ちなみに。
後日、パリピという言葉の本当の意味を知ったサクラから、
「この前私のこと馬鹿にしたでしょ! パリピって! 知らないと思って馬鹿にしたでしょ!」
と怒られることになるんだけど、この時の俺はまだそんなことは知る由もないのだった。
それはさておき。
「それとアイセルの両親にも挨拶しておきたいしな」
「あらケースケ、ご両親にお付き合いを報告するのかしら?」
「いや、あの、べつに、そういうつもりで言ったわけじゃないんだけど……」
どんな相手とパーティを組んでいるのか、アイセルのご両親も知りたいだろうなって思っただけで、そんな深い意味はないと言うか……。
「なんで急に、浮気がバレて問い詰められて焦ってる亭主みたいになってんのよ?」
サクラがジト目で俺を見つめてきた。
「急にご両親に報告とか言われるとな、男はどうしてもドキッとしちゃうもんなんだよ」
「ふーん」
なにせ俺ときたら、つい先日もシャーリーのお父さんにニセ彼氏として会いに行って、ただそれだけで――怒らせるような言動は「お父さん」と呼んでしまったことくらいなのに――結果的に親の仇のように思われちゃっている真っ最中なのだ。
なのでご両親に報告すると言われて、若干ちょっと尻込みしちゃうのは仕方なくはありませんか……?
「でも結果的にそういうことにもなっちゃうのかな……?」
「まぁまぁ今はそれはいいじゃないですか。それであの、ケースケ様、せっかくなので家族や村のみんなにお土産を買って帰りたいんですけど、大丈夫でしょうか?」
「もちろんいいぞ。今回はクエストの途中に村に寄ることになるから、馬車は冒険者ギルドのを使える。つまりタダだ!」
「タダタダって、ケイスケってほんとお金にうるさいよね。最近はクエストも順調で、かなり稼げてるでしょ?」
サクラが横からなんか言ってきたけど、俺は大人なのでさらりとスルーした。
だいたいお金はあるに越したことないだろう?
アイセルと出会う前、残り資金が宿代1週間分しかなかった時の、野宿も覚悟した惨めで底辺な気持ちを、俺は一生忘れないから。
「なにせSランクパーティ『アルケイン』のエースの数年ぶりの凱旋帰郷なんだ。好きなだけ空いてるスペースに積み込んでいいからな。よし、お土産を積むことも考えて、ちょっと大きめの馬車を借りておくよ。だから安心して買いこんでくれ」
「何から何まで、本当にありがとうございます」
アイセルがお礼を言って、また深々とお辞儀をした。
Sランクパーティの絶対エースでありながら、礼儀正しさを決して忘れないアイセルは、ほんとうに良くできた子だなぁ……。
「え、おぅ」
「だってそうでしょ? せっかく恵まれた環境に生まれたんだから、他の誰よりも一生懸命にサクラメント=ヴァリエールって人生を全うするのが、私の権利であり義務だと思うの――ってどうしたのよケイスケ、変な顔して?」
「いやサクラってまだ12,3才の子供なのに考え方はすごく大人で、人生に関してすごく真摯で情熱的だよな、と改めて感心してたんだ」
「ふふん、好きなだけ崇め奉りなさい!」
「普段の言動はパリピだけどな」
「パリピ?」
「パーティに参加するような高貴な人物って意味の俗語だよ」
「ふーん、そんな言葉があるんだ」
もちろん嘘である。
パリピとは「パーリーピーボー」の略で、ギャーギャー騒ぎたがるウェーイ系の人を指す最近流行りの言葉なんだけど、サクラは知らなかったみたいだな。
ちなみに。
後日、パリピという言葉の本当の意味を知ったサクラから、
「この前私のこと馬鹿にしたでしょ! パリピって! 知らないと思って馬鹿にしたでしょ!」
と怒られることになるんだけど、この時の俺はまだそんなことは知る由もないのだった。
それはさておき。
「それとアイセルの両親にも挨拶しておきたいしな」
「あらケースケ、ご両親にお付き合いを報告するのかしら?」
「いや、あの、べつに、そういうつもりで言ったわけじゃないんだけど……」
どんな相手とパーティを組んでいるのか、アイセルのご両親も知りたいだろうなって思っただけで、そんな深い意味はないと言うか……。
「なんで急に、浮気がバレて問い詰められて焦ってる亭主みたいになってんのよ?」
サクラがジト目で俺を見つめてきた。
「急にご両親に報告とか言われるとな、男はどうしてもドキッとしちゃうもんなんだよ」
「ふーん」
なにせ俺ときたら、つい先日もシャーリーのお父さんにニセ彼氏として会いに行って、ただそれだけで――怒らせるような言動は「お父さん」と呼んでしまったことくらいなのに――結果的に親の仇のように思われちゃっている真っ最中なのだ。
なのでご両親に報告すると言われて、若干ちょっと尻込みしちゃうのは仕方なくはありませんか……?
「でも結果的にそういうことにもなっちゃうのかな……?」
「まぁまぁ今はそれはいいじゃないですか。それであの、ケースケ様、せっかくなので家族や村のみんなにお土産を買って帰りたいんですけど、大丈夫でしょうか?」
「もちろんいいぞ。今回はクエストの途中に村に寄ることになるから、馬車は冒険者ギルドのを使える。つまりタダだ!」
「タダタダって、ケイスケってほんとお金にうるさいよね。最近はクエストも順調で、かなり稼げてるでしょ?」
サクラが横からなんか言ってきたけど、俺は大人なのでさらりとスルーした。
だいたいお金はあるに越したことないだろう?
アイセルと出会う前、残り資金が宿代1週間分しかなかった時の、野宿も覚悟した惨めで底辺な気持ちを、俺は一生忘れないから。
「なにせSランクパーティ『アルケイン』のエースの数年ぶりの凱旋帰郷なんだ。好きなだけ空いてるスペースに積み込んでいいからな。よし、お土産を積むことも考えて、ちょっと大きめの馬車を借りておくよ。だから安心して買いこんでくれ」
「何から何まで、本当にありがとうございます」
アイセルがお礼を言って、また深々とお辞儀をした。
Sランクパーティの絶対エースでありながら、礼儀正しさを決して忘れないアイセルは、ほんとうに良くできた子だなぁ……。