リヴィング・メイルたちの王である傭兵王グレタをひとまず倒し、無事にクエストを終えたことをギルドに報告したその直後から。
俺は中央都にある冒険者ギルド本部に推薦状を書いてもらって、南部諸国連合で一番大きな『大図書館』の閲覧許可を得ると、傭兵王グレタについての調査を開始した。
傭兵王グレタに関する本や資料を集め、片っ端から読み解いていくのだ。
ペラッ。
ペラッ。
閲覧コーナーで黙々とページをめくっていく。
俺の隣には同じように本をめくるアイセルの姿があった。
本当はシャーリーも一緒の予定だったんだけど、推薦状をもらうにあたって冒険者ギルド本部を訪れた時に、シャーリーはお父さんに捕まってしまったのだ。
今頃は家族だんらんを過ごしている……はず。
シャーリーのお父さんが俺を殺しそうな殺意あふれる眼で睨みながらアレコレ言ってきたので、もしかするとプチ修羅場になってるかもしれなかった。
ちなみにサクラは、
「せっかくだし2人で図書館デートでもしてきたら? 私はその間ちょっと実家に帰ってるから」
と言い残してさっさと実家に帰ってしまった。
気を利かせてくれたのかなとも思ったけど、単に大図書館で椅子に座って静かに調べものをするのが嫌だったのかもしれない。
事の真相はサクラのみぞ知る。
まぁそれはそれとして。
俺とアイセルは朝から晩まで2人で大図書館にこもり、数日にわたって傭兵王グレタに関する資料を読み解いていたのだった。
だがしかし。
「うーん、この本にも特に目新しい情報はないかぁ。アイセル、なにかめぼしい情報はあったか?」
手元の資料の傭兵王グレタに関する記述を読み終えた俺は、顔を上げるとアイセルに尋ねてみた。
「いえ、こっちの本にも特にこれといったものは見つかりませんでした。傭兵王グレタがすごく仲間思いの王さまだったんだなっていうのは、よく分かったんですけど」
「こっちもだ。手がかりらしい手がかりはなかったよ、うーぬぬっ……」
俺が両手を上にあげて大きく伸びをすると、腰と背中と首と肩と肩甲骨が――つまり身体中の色んな所が、バキッボキッと大きな音を鳴らした。
うーむ、ずっと座って本や資料を読み漁ってたから、かなり凝ってるみたいだな。
石造りのゴーレムにでもなった気分だ。
「ケースケ様、だいぶお疲れみたいですね。良かったら『ツボ押し』をしましょうか?」
親指を立てて指圧するポーズをとったアイセルが、気を使ってそんな提案してくれる。
「あー、あれは効きすぎるからここだとまずいかな。うるさくすると司書の人に怒られそうだ。でもいい加減だいぶ身体中が凝り固まっちゃってるから、宿に帰ったら頼んでもいいかな?」
「了解です、ガッツリ癒してさしあげますので」
「ありがとなアイセル」
「いえいえどういたしまして」
「それにしても、それらしい手がかりすら見つからないとはな……はぁ」
俺は小さくため息をつくと、天井を見上げながら呟いた。
「傭兵王グレタの遺言はたしか『仲間、絆、頼む』でしたよね? 改めて、どういう意味なんでしょうね?」
「うーん……仲間との絆を頼むってふんわりと言われても、パッとはなぁ……それでも調べたら何かしら分かると思ったんだけど、ちょっと考えが甘かったかな」
「そうかもですね……あ、ケースケ様。そっちの資料も見せてもらってもいいですか?」
「いいぞ。だけどこっちのはかなり昔の古い言葉で書かれてるから、多分読めないと思うぞ? 俺は『暴虐の火炎龍フレイムドラゴン』の討伐の時に古代語を猛勉強したから、それなりに読めるけどさ」
「そうなんですけど、挿絵だけでも見てみようかなーと思いまして。絵を見ているとちょっと楽しくなってくるので、えへへ」
「ここずっと文字を読んでばかりだったし、そういう形の息抜きも必要だよな――ん?」
「それに見ないよりは見たほうがいいと思いません? ――って、ケースケ様どうしたんですか? ケースケ様?」
「そうか、絵か――」
俺は軽く握った拳を口元に当てながら、小さくつぶやいた。
俺は中央都にある冒険者ギルド本部に推薦状を書いてもらって、南部諸国連合で一番大きな『大図書館』の閲覧許可を得ると、傭兵王グレタについての調査を開始した。
傭兵王グレタに関する本や資料を集め、片っ端から読み解いていくのだ。
ペラッ。
ペラッ。
閲覧コーナーで黙々とページをめくっていく。
俺の隣には同じように本をめくるアイセルの姿があった。
本当はシャーリーも一緒の予定だったんだけど、推薦状をもらうにあたって冒険者ギルド本部を訪れた時に、シャーリーはお父さんに捕まってしまったのだ。
今頃は家族だんらんを過ごしている……はず。
シャーリーのお父さんが俺を殺しそうな殺意あふれる眼で睨みながらアレコレ言ってきたので、もしかするとプチ修羅場になってるかもしれなかった。
ちなみにサクラは、
「せっかくだし2人で図書館デートでもしてきたら? 私はその間ちょっと実家に帰ってるから」
と言い残してさっさと実家に帰ってしまった。
気を利かせてくれたのかなとも思ったけど、単に大図書館で椅子に座って静かに調べものをするのが嫌だったのかもしれない。
事の真相はサクラのみぞ知る。
まぁそれはそれとして。
俺とアイセルは朝から晩まで2人で大図書館にこもり、数日にわたって傭兵王グレタに関する資料を読み解いていたのだった。
だがしかし。
「うーん、この本にも特に目新しい情報はないかぁ。アイセル、なにかめぼしい情報はあったか?」
手元の資料の傭兵王グレタに関する記述を読み終えた俺は、顔を上げるとアイセルに尋ねてみた。
「いえ、こっちの本にも特にこれといったものは見つかりませんでした。傭兵王グレタがすごく仲間思いの王さまだったんだなっていうのは、よく分かったんですけど」
「こっちもだ。手がかりらしい手がかりはなかったよ、うーぬぬっ……」
俺が両手を上にあげて大きく伸びをすると、腰と背中と首と肩と肩甲骨が――つまり身体中の色んな所が、バキッボキッと大きな音を鳴らした。
うーむ、ずっと座って本や資料を読み漁ってたから、かなり凝ってるみたいだな。
石造りのゴーレムにでもなった気分だ。
「ケースケ様、だいぶお疲れみたいですね。良かったら『ツボ押し』をしましょうか?」
親指を立てて指圧するポーズをとったアイセルが、気を使ってそんな提案してくれる。
「あー、あれは効きすぎるからここだとまずいかな。うるさくすると司書の人に怒られそうだ。でもいい加減だいぶ身体中が凝り固まっちゃってるから、宿に帰ったら頼んでもいいかな?」
「了解です、ガッツリ癒してさしあげますので」
「ありがとなアイセル」
「いえいえどういたしまして」
「それにしても、それらしい手がかりすら見つからないとはな……はぁ」
俺は小さくため息をつくと、天井を見上げながら呟いた。
「傭兵王グレタの遺言はたしか『仲間、絆、頼む』でしたよね? 改めて、どういう意味なんでしょうね?」
「うーん……仲間との絆を頼むってふんわりと言われても、パッとはなぁ……それでも調べたら何かしら分かると思ったんだけど、ちょっと考えが甘かったかな」
「そうかもですね……あ、ケースケ様。そっちの資料も見せてもらってもいいですか?」
「いいぞ。だけどこっちのはかなり昔の古い言葉で書かれてるから、多分読めないと思うぞ? 俺は『暴虐の火炎龍フレイムドラゴン』の討伐の時に古代語を猛勉強したから、それなりに読めるけどさ」
「そうなんですけど、挿絵だけでも見てみようかなーと思いまして。絵を見ているとちょっと楽しくなってくるので、えへへ」
「ここずっと文字を読んでばかりだったし、そういう形の息抜きも必要だよな――ん?」
「それに見ないよりは見たほうがいいと思いません? ――って、ケースケ様どうしたんですか? ケースケ様?」
「そうか、絵か――」
俺は軽く握った拳を口元に当てながら、小さくつぶやいた。