「ま、ケースケは真面目で誠実が取り柄だもんね。そんなに急ぐ話でもないし、アタシたちのことを一度しっかりと考えてみてよ」
「そうさせてくれると嬉しいかな」
今の答えで、とりあえずのところはシャーリーも納得はいったみたいだった。
やれやれ、ふう。
「でもケースケのことだから、もしそうなったらきっと真面目にコツコツ、平等にアタシたちを愛してくれるんじゃない?」
「その、俺の気持ちもなんだけどさ。ほら、シャーリーのお父さんもいい顔をしないって思うんだよな」
あんなに娘を溺愛しているシャーリーのお父さんが、娘が二股されていると知ったとしたら。
俺は殺されるよりもひどい目に合わされるのは間違いない。
たしかシャーリーのお父さんは現役時代は『パワーファイター』っていう、超レアな戦士の上位職だったはず。
レベル100の戦士すら子ども扱いできるほどの強靭かつ圧倒的な肉体を武器に、リーダー兼前衛として数多の未解決高難度クエストをクリアし、Sランクパーティの中心として活躍していたとかなんとか。
10年以上前に現役を引退したとはいえ、後衛不遇職でろくにスキルも獲得しないバッファーの俺じゃ、逆立したって相手になりませんので……。
「あ、それなら大丈夫よ」
だけどシャーリーは俺の心配なんてまったく気にする様子もなく、あっけらかんと言ったのだった。
「えらくあっさり言い切ったけど、言いきれる根拠でもあるのか?」
だから俺は当然そう尋ねるわけで。
「だってお父さんがそうだから」
「……は? そうって、どういうことだよ?」
「そのまんまの意味よ。んーと、そうね。お父さんに会いに行ったときに秘書の人がいたでしょ?」
「ああ、あのいかにもやり手な黒髪の女の人な」
多忙な冒険者ギルド本部のギルドマスターを支える秘書ともなれば、相当なキレ者なのは間違いない。
「あの人はミシェルさんって言うんだけど、ミシェルさんはお父さんのもう一人の妻だから」
「……え? もう一人の妻?」
――だって!?
「そ、お父さんはさっき言った特殊な三角関係なの。だからアタシにとっても、ミシェルさんはもう一人のお母さんってことになるわね」
「マジかよ……」
「マジマジ大マジ。ミシェルさんとお父さんの間には子供ができなかったから、だからそのあたりのことを知ってる人は、親しい友人以外にはあまりいないみたいね」
「俺も初めて聞いたよ、正直ビックリした」
「でね、ミシェルさんは本当のお母さんと変わらないくらいにアタシを可愛がってくれたの。甘すぎるんじゃないかって子供のアタシが思ったくらいに、すごく優しいんだから」
「クールビューティで子供にも厳しい教育ママって感じのイメージだったんだけど、やっぱり人は見かけによらないもんだな」
俺は貴重な人生の教訓を得ることに成功した。
「アタシのお母さんもそうなんだけど、オンオフがはっきりしてるタイプなのよね。仕事はどこまでもきっちり正確に、でもプライベートでは優しくて甘々。だから勉強をするときも、ギルドにあった古代の魔道具を一緒に一日中触ったりとか、本に載ってない色んなことを学ばせてもらったわ」
「それが古代魔法の一部解明なんて偉業に繋がったわけか。なるほど、シャーリーの説明を聞くだけで素敵な人だってのがよく分かるよ」
俺はミシェルさんの人となりにいたく感心し、俺もこんな素晴らしい大人になりたいものだ心の底から思ったんだけど――、
「あ、ちなみにパーティで3人が一緒だったときは、お父さんをめぐってそれはもう醜い女の争いを繰り広げたらしいわよ。最終的にそれが原因でパーティが崩壊しかかったんだって」
「えっと……」
シャーリーのあまりにあけすけなご家庭の暴露話の前に、俺はなんと返答したらよいものかと答えに窮すしかなかった。
このどう見ても踏み込み過ぎなよそ様のご家庭の話題に、俺はなんて答えれば正解なのかな?
誰か教えて?
「そうさせてくれると嬉しいかな」
今の答えで、とりあえずのところはシャーリーも納得はいったみたいだった。
やれやれ、ふう。
「でもケースケのことだから、もしそうなったらきっと真面目にコツコツ、平等にアタシたちを愛してくれるんじゃない?」
「その、俺の気持ちもなんだけどさ。ほら、シャーリーのお父さんもいい顔をしないって思うんだよな」
あんなに娘を溺愛しているシャーリーのお父さんが、娘が二股されていると知ったとしたら。
俺は殺されるよりもひどい目に合わされるのは間違いない。
たしかシャーリーのお父さんは現役時代は『パワーファイター』っていう、超レアな戦士の上位職だったはず。
レベル100の戦士すら子ども扱いできるほどの強靭かつ圧倒的な肉体を武器に、リーダー兼前衛として数多の未解決高難度クエストをクリアし、Sランクパーティの中心として活躍していたとかなんとか。
10年以上前に現役を引退したとはいえ、後衛不遇職でろくにスキルも獲得しないバッファーの俺じゃ、逆立したって相手になりませんので……。
「あ、それなら大丈夫よ」
だけどシャーリーは俺の心配なんてまったく気にする様子もなく、あっけらかんと言ったのだった。
「えらくあっさり言い切ったけど、言いきれる根拠でもあるのか?」
だから俺は当然そう尋ねるわけで。
「だってお父さんがそうだから」
「……は? そうって、どういうことだよ?」
「そのまんまの意味よ。んーと、そうね。お父さんに会いに行ったときに秘書の人がいたでしょ?」
「ああ、あのいかにもやり手な黒髪の女の人な」
多忙な冒険者ギルド本部のギルドマスターを支える秘書ともなれば、相当なキレ者なのは間違いない。
「あの人はミシェルさんって言うんだけど、ミシェルさんはお父さんのもう一人の妻だから」
「……え? もう一人の妻?」
――だって!?
「そ、お父さんはさっき言った特殊な三角関係なの。だからアタシにとっても、ミシェルさんはもう一人のお母さんってことになるわね」
「マジかよ……」
「マジマジ大マジ。ミシェルさんとお父さんの間には子供ができなかったから、だからそのあたりのことを知ってる人は、親しい友人以外にはあまりいないみたいね」
「俺も初めて聞いたよ、正直ビックリした」
「でね、ミシェルさんは本当のお母さんと変わらないくらいにアタシを可愛がってくれたの。甘すぎるんじゃないかって子供のアタシが思ったくらいに、すごく優しいんだから」
「クールビューティで子供にも厳しい教育ママって感じのイメージだったんだけど、やっぱり人は見かけによらないもんだな」
俺は貴重な人生の教訓を得ることに成功した。
「アタシのお母さんもそうなんだけど、オンオフがはっきりしてるタイプなのよね。仕事はどこまでもきっちり正確に、でもプライベートでは優しくて甘々。だから勉強をするときも、ギルドにあった古代の魔道具を一緒に一日中触ったりとか、本に載ってない色んなことを学ばせてもらったわ」
「それが古代魔法の一部解明なんて偉業に繋がったわけか。なるほど、シャーリーの説明を聞くだけで素敵な人だってのがよく分かるよ」
俺はミシェルさんの人となりにいたく感心し、俺もこんな素晴らしい大人になりたいものだ心の底から思ったんだけど――、
「あ、ちなみにパーティで3人が一緒だったときは、お父さんをめぐってそれはもう醜い女の争いを繰り広げたらしいわよ。最終的にそれが原因でパーティが崩壊しかかったんだって」
「えっと……」
シャーリーのあまりにあけすけなご家庭の暴露話の前に、俺はなんと返答したらよいものかと答えに窮すしかなかった。
このどう見ても踏み込み過ぎなよそ様のご家庭の話題に、俺はなんて答えれば正解なのかな?
誰か教えて?