「付き合うって……、今の俺とどうやって?」
要先生に聞かれて、少し想像してみる。
学校の外に出て、映画を見に行ったり、先生の好きなピアニストのコンサートを聞きに行く。先生の細くて綺麗な長い指に指を絡めて手を繋いで、隣を歩く。
そういうことができたらいいなっていう憧れはあったけど、べつにふつうの恋人同士の付き合いができなくてもかまわない。私はただ、このままずっと要先生のそばにいられたらいい。
たとえ、どんなかたちでも。
「私は……、要先生と音楽室で話したり、ピアノを聴いてもらえたりできればいいです」
「それって、今までと何か違う?」
ふっと目を細める要先生に、こくりと頷く。
「違いますよ。全然違う。私は、先生がいてくれるならなんだっていいんです。だから、付き合ってください……」
要先生が目の前にちゃんといるってこと。それを今すぐ、私に実感させてほしい。
泣きそうな声で訴えると、要先生が困ったように頭をかいた。
「うーん、でも……」
「付き合ってください……!」
「じゃあ、期限をつけようか」
頑として譲らない私に、要先生がついに折れる。