「え、っと……。それはどういう意味で……」

 私の「好き」が単純に信頼や尊敬の気持ちからくる「好き」ではないことくらい、先生は大人だからわかっていたと思う。

 私がピアノ伴奏の練習のために毎日音楽室に通ってくるのも、先生の授業がない日は長い時間音楽室に入り浸るのも。卒業まで、できるだけたくさん先生といたいから。

 わかっていて、今さら、困ったように視線を泳がせる先生が少しムカつく。

「もちろん、性的な意味でです」
「性、的……」

 自棄気味に答える私を、要先生がぽかんと見つめる。それからしばらくすると、肩眉を下げてふっと笑った。

「星名でも、そんな冗談言うんだ?」

 要先生が、片手でお腹を押さえながらくつくつ笑う。

「冗談なんかじゃありません。私は先生のこと、男の人として……。恋愛感情で好きです」

 私はマジメに告白してるのに。こんな状況でも、私を子ども扱いする要先生が憎らしい。

 涙目でじとっと睨むと、要先生がようやく笑うのをやめた。

「ありがとう、星名。でも、俺は――」
「付き合ってください。私と」

 要先生の言葉を待たずにたたみかけると、先生が瞳を翳らせた。

「でも、俺は……」
「付き合ってください」

 まっすぐに目を見つめて言うと、要先生が微妙に私から視線をそらして息を吐く。