「よかった。星名さんが思ったより元気そうで……」
「私はずっと元気だよ」
「それならいいけど。向井先生の事故のあとに会ったときは、今にも倒れそうな顔してたから」
沖田くんの言葉に、ドキリとする。口元が引き攣るのがわかって下を向くと、沖田くんが正門のほうに足を向けた。
「星名さんは自転車だよね。俺、駅のほうだから」
気まずい空気が流れ始める前に沖田くんと別れられそうで、ほっとする。
「また明日ね」
「また明日。本番のピアノ伴奏、頑張ってね」
「沖田くんも、卒業生代表頑張って」
「それは、あんまり言わないでほしい……」
和やかに笑い合って、私と沖田くんはお互いに手を振った。