「行っておいで。絶対に待ってるから」
要先生の冷たい手でふわりと頭を撫でられて、私は渋々椅子から立った。
「先生は何か食べたいるものありますか? よければついでに買ってきます」
スマホを持って音楽室を出るとき、ドアの前で要先生を振り返る。
「いらないよ。ていうか、生徒に奢られるとかないから」
口元に手をあてて笑う要先生に、私は不満げに口を尖らせた。
「私は生徒じゃなくて先生のカノジョです。卒業するまでは」
「あー、うん。そうだね」
要先生が、私の主張を軽く聞き流す。
「ほら、行くなら早く行っておいで」
手を振って追い払おうとする要先生に、むむっとむくれてみせてから、私は音楽室のドアを閉めた。