考え事をしながらピアノを弾いていると、一番と二番の間奏で黒鍵を弾き外した。

「あ……、間違えた……」

 ピアノソロになる間奏部分は、ミスするとかなり目立つ。音の響く体育館では、特に。だから、ミスタッチのないように集中しなければいけない。

 途中から弾き直そうとすると、

「星名」

 と、要先生の声が私の手を止めた。

「一回休憩しようか。この前はうまく弾けてたのに、さっきからそこで何度も躓いてる。あんまり集中できてないよね。今日の星名の音は、なんだか全体的にふわふわしてる」

 要先生の指摘に、私は鍵盤に手をのせたままうつむいた。

 間違えたところは、もともと少し苦手な部分だ。最初にヘンなクセがついたまま弾き慣れてしまったせいで、気を抜くと間違える。

 それに、要先生が言うように、今日の私がいまいち集中できていないのも事実だ。

 集中できない理由はちゃんとわかっている。

 昨日、事故で亡くなった向井先生の告別式に行ってきたからだ。