そんなクラスの人気者がさっきたまたまだとしてもこんな私に話しかけてくれたのが不思議で仕方なく、ますます謎が深まった。
たまたまかなぁ……?
そうしかないよね。私なんかに話しかけるような人でもないし。
「正解。珍しいわね」
先生はふわりと微笑みながら彼を褒める。
問題を解いた本人は『やっぱ、俺って天才?』なんておどけながら白いチョークを置いて、私の隣の席に腰を下ろすと頬杖をついて真っ直ぐ黒板を見ていた。
ふと盗み見た彼の瞳はさっきとは違う、深い悲しみに満ちた瞳をしていて思わず大きく目を見開いた。
えっ……?
そんな顔したりもするんだ……。
失礼な言い方だけど、何を言われてもずっとヘラヘラと笑っているお調子者のイメージだったから正直ビックリした。
しかも、みんなが見ていないところで見せるその瞳は何か抱えているものがあるような気がした。
まあ、私は関係ないからいいけれど。
滝沢くんの容姿は非の打ち所がないほど整っており、それに加えてそこそこ身長も高いことから女子からとても人気があるのだと親友の中森江奈が興奮気味に言っていたことをふと思い出した。