『陽音ちゃん……!渉のことはもう忘れてちょうだい……!お願いだから……』

『陽音ちゃんにもいつかきっと分かる日が来る。だから、もうアイツのことは思い出にしてほしい』


頭の中に今まで言われた言葉たちが段々と蘇ってくる。

嫌だよ……本当は忘れたくなんてない。
だけど、忘れなきゃいけない。

もう……っ、どうしたらいいの?
いっそ、このままこの海に身を投げ出したら楽になれるのかな?

そしたら、渉くんのところに行ける?
また、渉くんと会える?笑い合える?
名前を呼んでもらえる?

無意識のうちに腰を起こして、何の迷いもなく、真っ直ぐ海の方へと歩き出す。

サクサクと音を立てて歩いていた砂浜からいつの間にか水際まで来ており、靴に水が入ってくるのも気にせずにそのまま奥へ奥へと歩みを進めていく。

私が歩くたびにじゃぶじゃぶ、と音を立てる。水が少し冷たいけれど、それでも私は歩き続けた。

少しでも、渉くんに近づけているかな?


「もうすぐ、会えるよ……渉くん」


やっと、会えるんだよ。