「クラスメイトの滝沢快人くんです」


『彼氏?』と、聞かれる前に答えた。
勘違いされても困るだけだし。


「どうも」


そう言って隣にいるカイくんがぺこり、と軽く会釈をする。

すると、室さんも「こんにちは」と挨拶を返した。


「元気そうで……よかったよ」


視線を私に戻すと、あのころと変わらない優しい笑顔を向ける。

その笑顔はよく渉くんに対して向けられていた笑顔で懐かしさを感じた。


「おかげさまで……」

「心配してたんだ」

「……」


本当に心配なんてしてくれていたの?
仮に心配してくれていたとしても……それは同情からなんでしょ?

それとも、罪悪感からなの?

居心地が悪くなって視線を落とした時に気がついた。

二年前は付けられていなかった太陽の光を浴びてきらりと輝いた薬指の指輪に。

ああ……そうか。
みんなはもう前に進んでいるんだ。

前に進めずに止まったままなのは私だけなんだ。


「……室さんもお幸せそうで何よりです」


嫌味っぽく聞こえてしまったかもしれない。
室さんは何も悪くないのに。