未だにあの日のことは鮮明に覚えている。
思い出すだけで胸が焦げてしまいそうなほど苦しくなって、まるで心が火傷を負っているような気持ちになる。
一生、消えることのない私の傷と罪。
「なぁ」
「……」
「なぁってば」
「えっ……?」
なんだか、右側からやたら声が聞こえてくるなぁ……と思ってそちらに視線をやると、クラスの中では中心人物で、いつも彼の周りには人がいるような人気者の彼、滝沢快人くんが私に話しかけてきていたようだった。
「そんなに手ばっか見つめてどうすんの?」
「あ、いや……」
いきなり話しかけてくるから戸惑ってうまく頭が回らない。
だって、今までまともに話したことなんてないのに。
それに私は今、現実を見ていなかったから彼に話しかけられたことによって、一気に戻りたくもない現実にまた引き返されたような気持ちになった。
「手じゃなくて教科書を見てねぇとまた怒られんぞー」
彼は呆れたようにそれだけ言うと再び前を向いて授業を聞き始めた。
何だったんだろう……今のは。
私のために注意してくれたの?
え、なんで?
いつもクラスの中心にいて太陽のように眩しい笑顔を浮かべている彼が何故クラスの中で目立ってもない地味な私にわざわざ話しかけてきたの?