セミが毎日のようにうるさい鳴き声を上げるのは命の短い自分の存在を世間の人々にアピールしたいからなのかもしれない。なんてことを考えてしまう私はかなりの変わりものなんだろうな、と思いながらセミの鳴き声にそっと耳を澄ます。
ボーッとしていれば1日なんて、案外あっという間に終わる。
からっぽで中身のない毎日を私は飽きもせずにぼんやりと過ごしている。
あ、いや……でも飽きもせずに、というのは間違いかもしれない。
だって、今はこんな自分に、自分の生活に、すでに飽き飽きしてしまっているんだ。
何も大切なものがなくて、もう二年も経つというのにずっとずっと大好きな彼のことが忘れられない。
毎日、息をするのが苦しくて、いつの間にか心の底から笑うことなんてできなくなっていた。
あの日、私は全てを失ったんだ。
大切なものも全て。
だから、もう何もいらない。もう何も失くしたくないから。
私はもう傷つきたくもないし、二度と大切な人を失う悲しみを味わいたくない。
いずれ失うくらいなら、からっぽの日常を繰り返す方がよっぽどマシだよ。
彼のぬくもりが残っている自分の左手をジッと見つめる。