ひそひそと小声で私を見て話している人や、注意されたことが面白いのかクスクスと笑っている人、まるで興味の無いような瞳で見ている人。

そんなみんなの態度なんて今の私にはちっとも気にならなかった。
さっき見た夢のせいで胸が鋭利な刃物で引き裂かれるかのように苦しくて、痛い。

まだ、こんなに好きなのに……私は渉くんにもう二度と会うことができない。

渉くんが出てくる夢は、最初のうちは幸せな気持ちでいっぱいになるのに最後は必ず渉くんは闇のように黒い煙の中に段々と消えていってしまう。
彼と私の距離は言葉じゃ表せられないほど、遠くて、ちょっとや、そっとじゃあ埋められないから辛いのだ。

残酷な夢から覚めても私は授業なんて聞く気にはなれず、グラウンド側の席の私はそちらに視線を向けて雲一つない青く澄んだ快晴の空に目をやった。

先程から耳に届くのはミーンミーン、とセミが校庭の立派な桜の木にしがみつきながらうるさく鳴いている声。

まるで、

“自分はここにいる。”

“一週間だけの命だけどそれでも必死に生きるよ。”

と、言っているかのようになぜだか私には聞こえる。