彼は私がどれだけ突き放して逃げたとしても、その度に追いかけてきて、簡単に追いついてしまう。

おまけに本当は辛いはずのにそれを見せず、代わりに太陽のように眩しい笑顔を浮かべて、優しく私の腕を掴んで、そっと引き寄せるのだ。


「図星ってところだな」

「うるさい……」

「まあ、俺は引くつもりないよ」


なんで……?

どうして君はそんなに優しくしてくれるの?

私のことなんて放っておけばいいじゃん。


「な、んで……?」

「だって、好きだから」

「理由になってないし」

「勝手に一人で傷ついてんじゃねぇよ」


そう言いながら、どんどん私の方に近づいてくる彼。

わたしは反射的に後ろに一歩ずつ下がっていくけれど、それも限界が来て、ガシャンとフェンスに追い詰められる。


「お前には俺がいる」

「……別に求めてない」


私は誰も求めない。

それが、私が生きていく道なんだ。
それが、私の定めだから。


「なぁ、なんでハルって『助けて』って言わねぇの?」

「……っ、別に助けて欲しくないから」


助けなんていらない。

手を差し伸べられても振り払う、そうやって最低な人間として生きていく。

たとえ、それで嫌われてもいい。
もう、誰にどう思われたっていいんだ。