どうしてそこまでしてくれるのかが私には分からなかった。

滝沢くんは頬をほころばせながら私の方へ戻ってくると片方のイヤホンが外して、それを自分の耳につけた。


「俺にも聴かせて」

「……う、うんっ」


髪の毛と髪の毛が当たるくらいの至近距離で意識していないのにドキドキしてしまう。

耳元から流れてくるラブソングの歌詞なんて頭に入ってこないくらい心臓がバクバグとうるさいくらい音を立てていた。

───

たとえ、二人に明日が来なくとも
そばで寄り添いあって 笑いあっていよう
僕は君以外の人を好きになることなんて
考えられないよ
いつまでも、何年経っても
君に恋をしているから

───


ふっ、と耳に入ってきた大好きな歌詞の部分。

一途な想いがとても伝わってきて心にじんわりと染みるから好きだ。


「俺、ここの部分好きなんだ」

「えっ……」

「なんかさ、この曲聴いてるとぜってぇ楠川のこと思い出すんだよな」


にっこりと優しく私に微笑みかける彼の笑顔はとても魅力的で思わず吸い込まれてしまいそうなほどだった。

トクントクンと鼓動が心地よい音を奏でる。


……なんでそんな優しい顔をして笑うの?


私なんかにはその太陽の光のような優しくて眩しい笑顔は似合わない。