「無理なこと言うんじゃねぇよ」


なんでそんなに人を避けようとするんだよ。

お前はそんなやつじゃないだろ?
誰にも平等に優しくて、よく笑う女だっただろ。
何がお前をそんなふうにしちまったんだよ……。


まだそれを楠川の口から聞けるような関係じゃないことくらい分かっているからグッと堪えて我慢をする。


だけど、もっともっと親しくなっていつか楠川の口からちゃんと聞けるといいな。


「無理じゃないし。私のことは嫌いになって」

「嫌いになんてなれるわけないだろ」


こんなにも好きなのに、いまさら『はい、諦めます』で諦められる恋なんかじゃねぇんだよ。

人生で唯一、本気で好きになった人。

そばにいるだけでこんなにもドキドキして、話しかけるのにもなんて声を掛けようか迷って戸惑って。

こんな感情は初めてでどうしたらいいのかも分からなかった。


だから、俺は決めたんだよ。
俺の気持ちを正直に伝えていこうって。

いつどうなるかなんて予想できない明日を後悔しないように生きるためには伝えたいことは伝えないといけない。

“明日でいいや”

そんなことを思っていても、その“明日”が来ないかもしれないのなら今を大切に生きたい。