俺の気持ちを知っている二人は俺が楠川の腕を掴んでいるところを見ると、さっきまでは心配していたくせにすぐにニヤニヤと頬を緩めた。
コイツら……完全に面白がってんだろ。
こっちは必死だっていうのに。
「大丈夫。俺、楠川のこと送っていくから先コンビニ行っといて」
このまま一人で帰すなんて危険な選択肢は俺の中にはなかった。
だって、一人でなんて帰したら何するかわかんねぇし。またナンパされて断らずについて行こうとするかもしんねぇし。そんなの俺が嫌だし。
まあ、言ってしまえばただの自己満足なのである。
「おっけー、まあ仲良くな?」
おどけたように笑いながらコンビニに向かって歩いていく二人。
アイツら……あとで覚えてろよ。
そんな中、侑歩は俺の方に近づいてきて耳元で『気をつけてな、楽しみにしてる』とクスリと笑いながら言った。
うるせぇな。どいつもこいつも。
お前らが恋した時は俺がからかってやるから覚えとくことだな。
少し狭い道路でふたりきり。
楠川は目で『離せ』と訴えかけているけれど俺はそんな訴えを無視して言葉を発する。
「家はどこだ?」
「もう私には関わらないでよ……!」