『陽音はおバカさんだから、俺は陽音の将来が心配になるよ』
『もうっ……!うるさいなぁ!渉くんがいるから大丈夫だよ!』
『あのなぁ、俺だってずっとお前のそばにいてやれるわけじゃないんだぞ?』
『えー、渉くんは私の前からいなくなっちゃうの?』
『嘘だよ、嘘。だからそんな顔すんな』
『ほんとにいてくれる?』
『いるよ。ずっと陽音のそばにいるから』
そういって彼は頬に笑みを浮かべながらそっと私の頭を腫れ物を触るかのように優しく撫でる。
幸せな気持ちが溢れて胸がいっぱいになった私はにっこりと微笑みを返す。
だけど、幸せを感じられたのはその一瞬だけでいきなり優しく微笑んでくれていた彼の端正な顔に黒い煙がもくもく、と立って、段々と彼はその黒い煙に飲まれ、次第に見えなくなって薄れていく。
────……行かないで!
そう必死に声を出して叫び、手を伸ばすのに大好きな彼に触れることは叶わず、何度も叫ぶ私の声も彼には聞こえていないようで彼の陽だまりのような柔らかい笑顔が黒い煙と一緒になって遠のいていく。
そして、一瞬にして彼は私の隣から消えてしまい、煙の中に消えていなくなってしまった。