ダメだ。さっきから頭の中を支配しているのはカイくんのことばかり。
カイくんはもう友達以上の感情を持っていないかもしれないけれど、私は違う。カイくんのことを今更、友達としてなんて見れないよ。
こんなの、完全に恋する乙女みたいじゃん。
「採寸終わったよ。これ、サイズ書いた紙ね」
「本当にありがとう!」
しばらくしてからさっき話しかけてくれた男の子が採寸が終わったみたいでサイズの書かれた紙を持って戻ってきた。
「楠川さんのためだから、全然いいよ。あんま、頑張りすぎんなよ?」
そう言って微笑むと、何故か私の頭をそっと撫でてから友達のところに行ってしまった。
突然すきで何が起きたのかよく分からなくて、頭がショートしてしまい、しばらく放心状態に陥った。
え!?なんで私はいま頭を撫でられたの……!?
全然わからないんだけど。
頭撫でる必要とかあった?
「陽音~~、モテモテだね」
江奈がニヤニヤと頬を緩ませながらつんつんと横から肘でつついてくる。
「そんなんじゃないから!」
というより、今の私は自分でも驚くほどカイくんしか見えていない。カイくんしか眼中にないんだ。
好きで、好きで仕方がないくらい彼を想っている。
最初は正直、迷惑だったし嫌いだった。