「今日の放課後から文化祭に向けて最終準備に取り掛かるからな。それぞれ役割は決めたからクラスのために務めること。くれぐれもサボるなよー」


HRで担任が役割の書かれた紙を配りながらみんなに言った。

最後の文化祭だし、サボる人なんてあんまりいないでしょと心の中で呟く。

私たちのクラスはメイド喫茶なんだって。

ちなみに私は衣装担当なので、江奈とほかのクラスメイトたちと市販のメイド服に少しデザインを加えて、オリジナルのメイド服を作ることになっている。

カイくんはというと必要なものを近くの雑貨屋で買ってきたり、喫茶店っぽくするための教室の飾り付けを担当している。

みんなカイくんに頼りがちなのか、先ほどからカイくんはあちこち回って指示している。

大変そうだなぁ……。

私が話しかけたらもっと迷惑だろうからひっそり見守っていよう。


「楠川さーん、男子の衣装ってどうする感じ?」


作業に取り掛かろうと衣装の布をクラスメイトの男の子が話しかけてきた。

名前は思い出せないけれど。

そう考えると、私って本当に勿体ないくらい人との関わりを避けてきたのだなと感じる。


「作ろうかなって思ってるよ」


普通に答えてしまったけれど大丈夫かな?
馴れ馴れしいとか思われてないかな?

そんな不安が湧いてきたけれど、先程の言葉を取り消すことなんてもうできない。


「そっか。なら、俺が男子の採寸しようか?」


男の子はふんわりと優しく笑った。