彼女は私の言葉を聞いて、信じられないとでも言うような表情を浮かべている。
それは私だって同じだよ。
何もかもがあまりにも突然すぎて頭が追いついていない。
「私が恋に踏み込めなかったのが悪いんだよ」
ああだこうだ言って、カイくんの気持ちに応えてあげられなかった私がいけなかったのだ。
悪いのはカイくんじゃない。私だ。
「そんなの、何かの間違いじゃない?」
江奈が真剣な表情でぽつりと呟いた。
「江奈……」
「だっておかしいじゃん!あんなに陽音のこと好きだったんだよ!?」
江奈の言いたいことはなんとなく分かる。
何度振っても、遠ざけようとしても、彼は次の日もいつもと変わらない笑顔で話しかけてきて、私の罪も心の傷も海のように広い心で受け入れてくれて、自分でも自惚れてしまうほど愛されていたのだ。
私だって、あんな言葉は嘘だって思いたいよ。
でも、事実なのだから変えられない。
やっと、カイくんのことを好きになれたのに。
それがもう遅かったなんて。
人と人の想いが交わる瞬間なんて一瞬で、そんな運命のような時間を逃してしまえばもう一度交わることは難しくなってしまう。
私はその運命を自ら手放したのだ。
「なのに……っなのに……っ、おかしいじゃん……」
彼女はぽろぽろと大粒の涙を流しながら肩を震わせている。