傷つけたくないなら他人になるのが一番の方法なのに、せめて“友達”だけでもいいからそれでいたいという欲張りな気持ちには勝てなかったのだ。
俺はどこまでも自分勝手な生き物だ。
「……カイ、くん?」
彼女のアーモンドのように茶色く澄んだ瞳が動揺で揺れている。
そんな顔をさせたいわけじゃないのに。
ごめん、ごめんな。ハル。
心の中で何度も謝りながら小さく息を吸って、ゆっくりと口を開いた。
「俺、もうお前のこと好きじゃなくなったから」
言葉にした瞬間、ハルの頬を伝う一筋の涙が病院の蛍光灯に反射してキラリと光る。
その涙を、悲しげに歪んでいくハルの表情を、見ているだけで心臓が鷲掴みされているかのように苦しくなって胸が痛む。
「……そっか」
ぽつりと寂しそうに呟いたハルの声はすぐに消えてしまった。
「これからは好きとも言わない。あんなに告白しても無理だったんだから諦めた」
思ってもいないことを口にして胸の中が情けなさでいっぱいになる。