「カイくん……ごめん。盗み聞きしてた……」


病室を出てすぐにハルが申し訳なさそうに眉を下げながら謝罪の言葉を口にした。


「いいよ、むしろ気遣ってくれてサンキューな」


二人きりにしてくれて、助かったよ。

そもそも今日、ここに連れてきてくれたのもハルだし。思えば、俺はハルに助けられてばっかりだな。


「仲直り、できてよかった」

「おう」


あれは奇跡だったんじゃないかと思うほど信じられない出来事だった。

神様が味方をしてくれるというハルの言葉は本当だった。

もし、ハルが俺をここに連れてきてくれていなかったから俺たちはまだ他人のままで、俺の心の傷も癒えずにいただろう。

そう考えると、神様なんて信じていなかった俺にハルが奇跡をもたらしてくれたのだと思う。


「明日から、文化祭の準備が始まるね」


楽しみにしているのか少し弾んだ声でハルがそう言った。

そうか、もうそんな季節か。
10月中旬に差し掛かろうとしている。

ハルの言葉で季節が過ぎ行く早さを思い知らされる。

文化祭は10月下旬、ハロウィンの日に開催される予定だ。

俺のクラスはメイド喫茶とか言ってたな……ハルのメイド姿とか絶対やばいな。