その表情は苦しみと悲痛で歪んでいた。
俺はそんな華奢な母さんの体をそっと包み込んだ。
それでも、まだ暴れようとする母さんを必死でなだめる。
「母さんは記憶を失っているんだ。だけど、無理に思い出そうとしなくていい」
「記憶を、失ってる?」
言うつもりなんて、なかった。
これは墓場まで持っていくつもりだったのに。
案の定、母さんは驚きのあまり、動きを止めた。
「そう。疲労から階段から落ちてそのまま3年間記憶を失ったまま」
「そんな……っ、じゃあ、本当にあなたが私の息子なの?」
「そうだよ、俺が滝沢快人」
まるで小さい子をあやすように母さんの背中をトントンと優しく叩く。
「ごめん……っ、ごめんね……私のせいで、またたくさん傷つけちゃって……本当にごめんなさい……!」
「母さんのせいじゃない。それに、俺は生まれてから一度も母さんのせいで傷ついたことなんて、ねぇよ」